物語の始まりには出会いあり⑤
___目の前にいる妖精は何を言っているのだろ。
「ねえ君君!ちゃんとあたしの話聞いてるー?もう1度言うけど世界を救うために力を貸してほしいんだってば!」
あまりに唐突なことでまだ飲み込めていない。
そもそも世界を救う云々も含めてだが、目の間に妖精が話しかけてきていること自体、いまだに信じられないのである。
妖精は、ぷくーと頬を膨らませている。。
「世界を救うために力を貸してほしいって。俺は何も特別な力とかそういうの持ってないぞ」
「うんうん!そういうのはいらないから安心して!」
じゃあ、俺に助けを求めるってどういうことだよ?
物語のセオリーでは、こういうのは何かの運命を背負った登場人物とか、不思議な力を実は持っているとかそういうやつが声かけらえるんじゃないのか?
俺は、目まぐるしく思考していると妖精は、言葉を続ける。
「君は、あたしのことが視える。それが大事なのさ!」
「視えるなんて普通のことじゃないか」
「それは違う。妖精を見ることができるのは、妖精と一度でも契約を結んだことがある者のみだよ。まぁ、今や契約を結んだある人間の方が少ないけど」
「俺は、そんなことしたことないけど」
「でも、君は、今、この時。あたしのことを観測している。それだけであたしにとっては十分なんだ。君は、大事な役目を担うことができる」
「なんだよその役目って?」
いったいどんな役目なのだろう。
俺は、少し期待をしながら妖精の言葉を受け止める。
「あたしと契約して、”リュミルの意志を継ぐ者”を探してほしい」
契約を結ぶと言うところまでは、理解できた。
しかし、その後は何だ?
”リュミルの意志を継ぐ者?誰だよ、そいつ。
つまり、俺に”人探し”を手伝ってほしいと言うことか?
俺は、深く呼吸をしてから妖精に答える。
「ごめん。別の人を探してくれ!」
その返答にびっくりしたのか、妖精は慌てている。
「なんでなんで?どーして?」
「あのな、人探しくらい自分どーにかしてくれ。そもそも自分でも探せるだろ?」
「それができないから言ってんじゃん!あたしのことは普通の人には視えないんだよー」
彼女は涙目になりながら、こっちに縋り付いてくる。
「おい、泣かないでくれよ。俺が悪いみたいじゃないか」
「ねーお願いだよ。ずっとずーとあたしのことが視える人を待ってたんだよ」
「だから、離れろって」
2人してバタバタと暴れていると、店の方からこちらに向かってくる誰かの足音が聞こえてきた。




