物語の始まりには出会いあり④
それは、まさしく御伽噺に出てくるような幻想的存在だった。
古びた本を捲った途端に、一瞬視界が眩み、その本を落としてしまう。
次の瞬間、僕の目の前には1人の少女が椅子に腰をかけていた。
ただの少女ではない。
彼女の背中には、この本の表紙と同じように”羽”が生えていたのだ。
「やあ。君が選ばれた人間ってことかな?」
俺は驚きにあまり、すぐには返事ができなかった。
そもそも、選ばれた人間ってなんだ?
俺は戸惑っていると、彼女は言葉を続ける。
「驚くのも無理はないよ。この超絶美少女ならぬ超絶”美”妖精を目の前にしてしまったものは、一度は言葉を失うだろうからね。ほら、超絶可愛いレーチェちゃんに惚れてもいいんだよー?」
どこで覚えてきたのかわからないが、俺からしたら小っ恥ずかしい言葉をすらすらと並べる。
妖精とは、こういうものなのか。
俺の妖精へのイメージは少し残念なものになった。
透き通ったような水色の長い髪。
見た目は14歳くらいで、その漆黒の瞳は、全てを見通しているような雰囲気を漂わせる。
そもそも、妖精って俺たち人間と身長や体格は変わらないんだということを実感する。
本に書かれている妖精は、羽を携えた小さき不思議な存在みたいなイメージが一般的だったからだ。
所詮、物語の登場人物なんて”虚構”ということか。
そんなふうに考えていると、彼女はこちらを覗き込んでくる。
「なーに見惚れてるのー?」
ニヤニヤしながらこちらに話しかけてくる。
俺は、慌ててどこか別のところに視線を移す。
「やっぱりこうやって直接お話ができるのはいいもんだねー。あたしは、ずっとこの時を待ってたからさ」
「お前は、いったい何者なんだよ」
俺は、目の前にいる少女の正体を問いただす。
彼女は、落ちたあの本を手に取り話し始める。
「あたしは、記憶の妖精レーチェ。世界を救うために力を貸してほしい」
___世界を救うために力を貸してほしい?
俺の日常が、物語の始まりのように動き出した気がした。




