物語の始まりには出会いあり③
フィーネに手を引かれながら俺たちはセレーノの街を歩いていた。
街中で手を繋ぐのは…恥ずかしいからいい加減やめてほしい。
「あんた、このまま遅刻ばかりしてると退学になるかもって話聞いたけど、大丈夫なの?」
「あー、多分?」
「呆れた。また朝まで本読んでたんでしょ?」
「それが聞いてよ!あの世界の記録者のルミナ=ファルドの新作が出てたんだよ。それが凄く良くてさ。あーもう、俺も早く冒険に出たい!!」
興奮気味にルミナ=ファルドが執筆した「空白の街」について熱く語っているといつの間にか目的地に到着していた。
___貸本屋ミラン
セレーノにあるその店は、フィーネの親父さんが営む貸本屋だ。
ちなみにミランは、フィーネの叔母さんの名前だ。
まだ印刷技術が確立してからそこまで時間が経っておらず、その技術を用いた書物を取り扱うのは庶民である俺たちにはまだ難しかった。
だから、世に存在する書物の大半は、写本師が原本から書き写しそれを貸本屋や王立図書館などで取り扱うのが一般的だった。
前にも話したが、俺の父であるエドワード=レイヴィーは小説家である。
自身が書いた作品を父は写本してもらうために、よくフィーネの親父さんのところに出向いていた。
その時は必ず俺もついていく。
父とフィーネの親父さんが談話しているときに、たくさんの本を読ませてもらったものだった。
そういう経験が小さい時からあったからか、俺は読み書きには何の不自由もなく、何よりもまだ見ぬ物語の世界やそこで活躍する登場人物たちに夢中になった。
その結果、こんな残念なエリアス=レイヴィーが構築されたのである。
「今日、父さん隣町に仕事で出かけちゃってるから、あたしが店番。あんたは奥で今日の分の写本をお願い!あ、サボたりした叔父様に言いつけるから」
俺に今日の指示を言い渡すフィーネ。
俺は渋々、店の奥にある写本室へと入る。
写本室には、山のように本が積もり置いてあり、写本済みの山とこれから写本する山に分かれている。
俺は、これから写本する山から1番上に置いてある本を取ろうとするが、ちょっと高く積みすぎているせいで手が届かない。
頑張って背伸びをして手を伸ばしていると、本に指がかかるが絶妙なバランスで聳え立っていたその本の山は、俺に向かって雪崩のように倒れてきた。
___痛てててて
尻餅をついた俺の周りには本が無造作に散らばってた。
俺は、その散らばった本を1つ1つ手に取り元の位置に戻していく。
その時、エリアスは、何か気になる本を見かける。
それは、本の山の下の方にあったものなのだろう。埃を被っており他の本よりも明らかに古い。
俺は、その本を手に取り、息を吹き替えその誇りを飛ばす。
埃が俺の方に舞い上がり、咳き込んでしまう。
普通に手で叩けばよかったことに後悔した。
「なんだ、この本」
再びその本に目を向けると、その本の表紙には”妖精の羽”のデザインがなされていた。
今までたくさんの本を読んできたがこんな本は一度も見たことはない。
俺は、ドキドキしながら、その本のページを捲る。
その瞬間、何者かが俺に話しかけてきた。
「やあ。君が選ばれた人間ってことかな?」
___そこにいたのは、紛れもなく昔話に出てくる”妖精”であった。




