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銀霧のグレンツェ  作者: 鳥居賀風
伝承『堕ちた妖精』
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堕ちた妖精⑨

堕ちた妖精もそろそろクライマックスへ。

___妖精宮殿(フェアリーパレス)の最深部にて




ここは、先ほどまでエディと話していた場所よりもっと深い場所。

正統後継者のみがその場所に出入りすることが許される禁止領域。

そこに、リュミルとセピルは足を踏み入れようとしていた。



深く長い階段を降り続けると、そこに突然大きな空間が現れる。

その空間のあちこちに根が張り巡らされ、その根っこ収束部分を見るとそこには、小さな"トネリコの樹"が存在していた。

その樹の枝が不思議なことに、所々”枝が切られている”。



「これが、始まりの樹(フェアリークライス)心臓(コア)です。今からこの樹の枝を切り、月の十字架(ルナクローチェ)を創り出します。リュミルは、その新しく創られた月の十字架(ルナクローチェ)手にし、自らの命を火種にし、その松明(トーチ)に点火させるのです。」

「どうやったら、自分の命を火種にできるの?」

「願うのです。自分は、どうしたいのかを。想いの力がこの月の十字架(ルナクローチェ)に光を灯すのです」

「わかった…やってみる!」

「大丈夫です。リュミル、私がついています」


エディは、優しく笑いかけた。

だが僕には、わかった。彼女がまだ僕らに何かを伝えていないことを。


月の十字架(ルナクローチェ)を創り出すには、あの枝を切らなければなりません。それは私の役目です」


そう言うと彼女は、トネリコの樹の枝に触れる。

次の瞬間、彼女は弾き飛ばされていた。

まるで、この樹に意思があるかのように拒絶された。


「エディ!!」


リュミルは、すぐさま彼女に駆け寄る。

「……私は、大丈夫です」

「でも、どうしてエディリーヌ様は飛ばされたの?」

「それは、この樹の防衛本能のようなものです。危険を及ぼそうとするものを拒絶したのだと思います」

「だったら、これならどう!妖精魔法、ソニックウィンド!!」


影魔(ファントム)に襲われた時に、助けてくれた魔法だ。

鋭い音速の風の刃がトネリコの樹の枝に向かって放たれる。


が、その魔法は失敗に終わる。

正確には、魔法は枝には当たらず、通り抜けた。


「どういうこと?確かに当たったはずだわ」

「この樹は、ほとんどの者には触れることさえできないのです。唯一干渉できるのが、始まりの樹(フェアリークライス)に選ばれた正統後継者だけなのです」


エディは、リュミルの手を借りながらゆっくり立ち上がる。


「そして、正統後継者は”生涯の最後”に一度だけだけそのトネリコの枝を世界のために使うことを許されるのです」


___生涯の最後?


その言葉に、リュミルは唖然とした。

「ちょっと待って!…生涯の最後に一度だけって…それじゃ君が死ぬみたいじゃないか」

「ごめんなさい。でも、これが私の役目なのです」

「…」


きっと彼女は、この事態が起こって時点で決意していたのだ。

___使用者による命を代償にした行為。


あの時、彼女はそう言っていた。

これは、月の十字架(ルナクローチェ)に命を代償に灯火を点火させることだと思っていた。

しかし、本当は、月の十字架(ルナクローチェ)を創り出す妖精もまた、同じように代償支払わなければならなかった。

それをエディは知っていたのにも関わらず、僕たちに話さなかった。

”話せなかった”というのが、正しいかもしれない。

彼女は誰よりもこの方法でしか世界は救われないことを理解していたのだから。


彼女は、再びトネリコの枝に触れる。

激しい衝撃の波の余波が僕たちにも届く。

しかし、彼女は食いしばる。

懐から懐剣のような短剣を取り出し、一つの枝を切ることに成功する。


彼女が手にした枝は、月光のように光り輝きながら次第にそれは形を変えていく。

ゆっくりゆっくりとこちらに向かって歩いてくるエディ。

彼女の腕の中には、月の十字架(ルナクローチェ)が抱きしめられている。





___そして、エディの背中から妖精の羽は消失していた。















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