ライの結婚式前夜
あらすじと同じ内容なのですが、念のために…
こちら『裁判官がもし異世界に転生したら』4000PV突破記念サイドストーリーとして「判転の小部屋」に投稿させてもらったお話と、全く同じものを短編として挙げなおしたものとなります。時系列的には『裁判官がもし異世界に転生したら』27話「裁判は誰が為」の後のお話になりますので、もしご興味が湧きましたら、『裁判官がもし異世界に転生したら』もどうぞよろしくお願いします。
ライの結婚式前夜。
まさとライは新村長宅で、差し向かいになってお酒を飲んでいた。
二人だけだからバチェラーパーティーってわけでもないが、今では村中で慕われているライは、明日の結婚式でもみくちゃになるだろうから、その前にしっぽり飲んでおこうという企画だ。お互い立場は違うが、人の上に立つ仕事だから苦労話は尽きない。ただ、結婚式を翌日に控え、自然と話題は結婚へと移っていった。
「いや、結婚でライに先を越されるとはな。ライは酒を飲める年になったから、結婚も不思議でもなんでもないんだが。」
「まさは、お酒を飲める年どころか、苦汁を舐める年だよね。」
こいつ、ツッコミショタから、毒舌青年になってないか。
「苦汁をアルコールで胃に流し込んで、大人は成長するもんだ。よし、ライ、お前に結婚についてもいくつかアドバイスをしてやろう。」
「なに?行き遅れのまさから、アドバイスって?」
こいつ、舌、引っこ抜いてやろうか。まあ、冷静に考えれば家裁のお世話になるような少年によくある、試し行動って奴だろう。ライの親の前村長は甘えさせる余裕なんてなかっただろうし、ライは俺にどこまで言っても離れないか試しているんだろうな。ただ、だからと言って、言っていいことと悪いことがある。結婚式が終わったら、カンチョー全開放だ。当然、自分の指はバフで守る。
気を取り直して、ライに結婚アドバイスを送る。
「まず離婚事由は五つある。」
「なんでいきなり離婚前提なの!?」
「まあ聞け。離婚事由は、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、回復の見込みのない強度の精神病、その他婚姻を継続しがたい重大な事由の5つだ。」
「まあ、そんなんだったら離婚も仕方ないよね。そういうふうになるなってこと?」
「そうだ、失敗から学ぶ結婚マインドだ。」
「へー、意外とまともそうだね。他には?」
「あとは夫婦は互いに扶助義務がある。」
「病める時も健やかなるときも互いに助け合うことを誓いますかってやつだね。」
「いや、違う。別居しても、婚姻費用を払わないといけないということだ。」
「なんでだよ。なんでさっきから結婚うまくいかない前提なんだよ。」
「しかも問題はこちらでは算定表を使えないから、一から計算しないといけない。」
「いや、別居しなきゃいい話だよね。」
「子供が出来ると、離婚しても養育費を払わないといけない。」
「いや、離婚しなきゃいい話だよね。子供が出来るのが損みたいな話しないでよ。」
「しかも問題はこちらでは算定表を使えないから、養育費も一から計算しないといけない。」
「いや、それはさっき聞いたよ。なに、まさは僕の結婚、嬉しくないわけ?」
「そうだ。」
「正直すぎる!?」
「俺より先に幸せになって嫉妬している。でも、あんなに気弱だったライが一人前になってお祝いしたい気持ちもある。だから、俺の最高峰の知識を授けている。」
「素直なんだか、ひねくれてんだか。そういえば、まさって最初からそうだったね。」
「改めて、結婚おめでとう、ライ。」
「とりあえずありがとう。ところで、まさ。」
「うん、なんだ?」
「アドバイスはもらったけど、まだご祝儀もらってないんだけど。」
「それ以上レイアに似てきたら、まさ君泣いちゃうぞ!?」
翌日、大臣まさからご祝儀をもらったライは、国一番と評される豪勢な結婚式を挙げ、列席者の中にはしきりに懐と隣のレイアの顔色を気にするまさの姿があったそうな。
ちゃんちゃん。