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第六話 絆

 ミコは混乱していた。

 数箇所の祠を覗くと、御神体が無くなっている事が確認出来た。

 まだ、自分が歩き回った所しか確認出来ていないが、他の場所でも、同じような事が起こっていると予想出来た。

 それは、故意に誰かが動かしたとしか思えなかった。


「一体何が起こっているんだ… 」


 ミコが一人そう呟くと、嫌味だが、何でも出来るあの式神がいてくれればと、考えてしまい、すぐに打ち消すように首を振る。

 一夜はここには入ってこれない。

 今は自分で何とかするしか無いのだ。

 いつの間にか、思っていた以上に、一夜を頼りにしていた自分がいた。

 

 ふと気がつけば、すでに結界の力が半分程に下がっていた。

 空を見上げると、結界を掻い潜って入ってきたと思われる、霊が漂っている。

 今の所、それほど強い者が入って来ているようには見えない。

 しかし、強い霊が引き寄せられて来るのも、時間の問題だろう。

 神聖なはずの領域が侵され続けると、ミコが力を得るための妨げにもなるかもしれない。


「ミコ! 」


 色々考えていたミコの後ろから、カズマが声をかける。


「カズマ、何か見つかったの? 」


 カズマは紙人形を見せる。


「さっき、二葉がこれを見つけた」

「これは、三月の!? 」


 頷くカズマ。


「ミコ、このままだとこの山に悪霊が集まりすぎる。やっぱり先に、結界を強くする方法を考えた方がいいのかもしれない」


 カズマの言葉に頷くミコ。


「私も、今それを考えていた。二葉は? 」

「紙人形のあった辺りを捜索している」

「分かった。私は、二葉と一緒に山頂を目指す。そこに、この山の祠の力を全て集めている、お社があるから、もう一度結界を強化する事が出来るかもしれない。カズマは、引き続き三月の捜索と、入って来た悪霊のお清めをお願い出来る? 」

「分かった、任せろ。気をつけろよ、ミコ」

「ああ、カズマも」


 カズマの走り去る後ろ姿を見送る。

 カズマは大丈夫だろう。

 最近はずっと助けられてばかりだ。


(本当に強くなったな…)


 ミコは、感慨深い気持ちになり、目をつぶる。

 印を結び、潜在意識の中で二葉に話しかける。


(二葉…二葉!! )

(ミコ様? )


「来い!! 」


 その瞬間、ミコの目の前に二葉が現れる。


「わっ!! 何? 一体何が…って、ミコ様? 」

「やった事なかったけど、成功だな! 」


 ミコは修行の中で、自分自身と向き合う事が出来るようになっていた。

 その中で、ミコの意識の中には、常にミコ自身の式神の存在を強く感じていた。

 式神を先に自分の中に呼び戻し、そして再び呼び出す。

 簡単だけど、今までは思い付きもしなかった。

 

「今から、この山の頂上のお社に向かう。一緒に付いて来てほしい」

「はい、もちろんです…あ…」

「どうしたの? 」

「もしかしたら、同じ要領で、一夜様や、三月ちゃんも呼び出せるのかな? って」


 確かに、二葉のいう事には一理ある。

 しかし、三月は、先程から話しかけているが全く意識が繋がらない。

 気を失っているのか、あるいは…。

 一夜は、こちらから話しかければ、すぐに答えてくれるに違いない。

 しかし、彼のような禍々しい存在をこの結界の中に入れるというのは、かなり危険だ。

 下手をすると、逆に悪霊の棲み家になりかねないとも思っている。


「そうですか…」


 ミコの話を聞いて、納得する二葉。


「でも…」


 二葉は言いにくそうに、考えながら言う。


「一夜様は、確かに生まれや、育ちこそ悪いかも知れません。しかし、彼の心は…定めの巫女に出会った時から、純粋で、ただひたすらに一途で、真っ直ぐな心を持っているような気がします。一夜様を邪悪だと、拒む結界は何だか変だなって。最初こそ、怖かったですけど、全ては一夜様の揺るぎない心がなせる事なのかと…ああ、えっと、ミコ様の事が大好き過ぎるって事なんですけど」


 そう言い終えると、二葉は顔を赤くして、慌てて手をパタパタ振る。

 

「あ、いや、別にそんな変な意味じゃないんですけど…! あはっ、何言ってるんだろ? それに、だからと言って、一夜様を結界の中に入れて良いって事にはならないですよね」

「あははははははっ! 」

「ミコ様? 」

「ごめんごめん、こんな時に。私の周りって、こんな優秀な人が揃ってるんだって思って。うん、二葉に言われて気が付いた。そうだよね。一夜は邪悪なんかじゃないし、私から離れて行ったりいなんてしない。この山の結界は強化するんじゃない。私は、私のやり方で、この山の清らかさを守ってみせる」


 (カズマも、二葉も、私よりずっと賢くて大人なんだなぁ)


 少し寂しい気持ちと、誇らしい気持ち、そして、自分が少し恥ずかしくなってしまった。

 二葉はずっと一夜に怯えているだけかと思っていたけど、どうやらとてもよく見ていたようだ。

 ミコは、自分が一夜の何を見ていたのだろう。

 ミコ自身が美琴の存在に囚われ過ぎていただけで、 一夜の気持ちもずっと、ミコに向いていたはずだ。

 そんな一夜を主人であるミコが、受け入れられない訳がない。


 「結界なんかなくたって良いんだ。一夜だって、必ず受け入れられる! 」


 ミコは目を瞑ると、一夜に向かって話しかける。


(一夜…)

(ミコ…様)

(お待たせ)

(…いいえ。あなたの転生を待っていた、あの長い時間を考えると、刹那の時ですよ)


「一夜! 来い!! 」

「はい、ミコ様」


 たかが数日ぶりだというのに、久しぶりに会えたような嬉しさが込み上げて来る。


「一夜がいない間、大変だったんだぞ」

「ええ、分かっています。さぞや、私に恋焦がれていた事でしょう」

「なっ!? んなわけ無いだろう!! 」

「冗談ですよ。私は寂しかったですよ。ミコ様に会いたくて仕方ありませんでした」

「ほぇ!? 」


 素直すぎる一夜の言葉に、ミコは照れながら、おかしな声を出してしまった。

 この一夜のド直球ぶりに、ミコは毎回困惑してしまう。

 横を見ると、耳まで赤くした二葉が、両手で顔を覆って、体をクネクネさせている。

 ミコが聞いても恥ずかしいセリフなのだ。

 子供の二葉には刺激が強いに違いない。

 

(このままだと、子供の教育に悪いな)


「一夜! 二葉! 目指すは山頂だ」

「結界は張らないのに、まだお社に行く必要があるんですか? 」

「うん。まずはこの中途半端に張られてしまった結界を解こう。それから集まって来てしまった霊のお清めをする。行こう!」

『はい』


 ミコは、二人の返事に頷き、走り出した。

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