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エピローグ 思い出は美しいままに…

2章のエピローブまできました!

 ザクっ!!  ザクっ!!  ザクっ!!


 一夜は笑っていた。

 笑いながら、自身の長い爪で、大陰の腹を執拗に刺し続けている。

 大陰は、ミコの力でかなり弱っていたとは言え、一夜の強さはそれを凌駕する程のものがあった。

 人間の姿をしている時は、一夜の本来の力を出し切れていなかったのかもしれない。


 しかしーー。


 大陰はすでに絶命していると思われるが、一夜は手を止める様子は無い。

 美琴の仇で、彼女が死んでしまった原因。

 顔は笑っている一夜だが、ミコには何故かとても悲しそうに見えていた。


 大切な人を失った自分を。

 大切な人を守れなかった自分を。

 愛する人と気持ちが通じ合えた日を。

 永遠の別れが訪れた日を。

 

 それらを鮮明に思い出し、怒りと、悲しみと、その全てを大陰にぶつけているのだろうか。

 セイラは青い顔をしながら目を背け、カズマもミコを支える手に力が入っている。

 一夜を止めなければ、そう思いながら、誰も体が動けずにいた。


 このままでは一夜の心が壊れてしまう。

 自分が誰よりも、禍々しいい者だと理解しながら、美しい魂を持とうとしていた一夜が、また醜い感情に支配されてしまう。

 美琴に愛されていた一夜は、きっと今の一夜では無いはずだ。

 今の一夜は、ミコを守る為でも何でもなく、我を忘れ、ただ復讐をしているに過ぎない。


(私が止めなければ)


 霊力が残っていないミコに何が出来るのかは分からない。

 しかし、一夜の心を救ってあげれるのは、美琴の魂を引き継いだ自分しか居ないはずだ。

 

 ミコはギュッと拳を握り締め、一夜に向かって歩き出す。


「ミコ…」

「大丈夫。自分の式神位止めれないと、主人だなんて言えないだろ? 」


 ミコは、心配するカズマに、軽く微笑みかける。


「一夜…」


 一夜にミコの声は届いていないのだろう。

 肉片に変わり果てた大陰を更にグチャグチャに刺し続けている。

 返り血で汚れた一夜の顔は、いつもの美青年の顔に戻っていた。

 流れる返り血は、まるで一夜が泣いている様だった。


「もう、いいんだ。もう、大丈夫だから」


 そう話しかけながら、ミコは自然に一夜の背中に手を置く。


「美琴は一夜と出会えて幸せだった。悲しい別れを迎えてしまったかもしれないけど、最後に一夜と愛し会えた事が、美琴の人生の救いだったんだ。苦しまないで。悲しまないで…。()と一緒に過ごした全ての時間は、まだ、お前の中で生きておるはずじゃ。その時間をお前の手で、無かったことにしてしまうのか? 」


 ミコの中の美琴が、一夜に向かって話しかける。

 一夜は手を止め、肩で荒い息をしている。

 そのままミコは、一夜の背中に額を付ける。


「私の我儘を聞いてくれるか? 一夜。お前の中の私との思い出を美しく、幸せだったままに残しておいて欲しい。お前が思い出すのが、私の死にゆく姿では、悲しすぎる。愛する人には、美しい姿で思い出して欲しい。ダメか? 」


 ミコは一度、美琴と心が繋がっていたので、彼女の言いたい事が分かった。

 美琴は、彼女が亡くなった時の事は忘れて、美しい思い出だけを一夜の心に残して欲しいのだ。

 一夜は振り返り、真っ直ぐにミコの、いや、ミコの中の美琴の目を見つめる。


「ええ、約束いたします。もう二度と、憎しみに飲見込まれたりはいたしません」


 一夜は、優しくミコを抱き寄せる。

 もう、怒りに身を任せ、殺戮を楽しんでいた一夜は、どこにも居なかった。


「気高く美しかった、あなたの魂に恥じない様に…共に隣で歩んでいける様に…私の魂が朽ち果てるまで、もう決して、あなたとの美しい思い出を手放したりはいたしません」


 一夜のミコを抱き寄せる手に力が入る。

 ミコもそれに応えるように、一夜の腰に手を回し、抱きしめる。


「約束だぞ? 」


 ミコの中の美琴は、その言葉を最後に語りかけなくなった。


 一夜の腕の中はとても大きく、暖かかった。

 それと同時に、安心感と、心地良さを感じていた。





「おはよう」

「おはようございます、ミコ様」


 ミコの霊力が戻るのと同時に、結界は、再び一夜を拒絶しはじめた。

 しかし、一夜の機嫌はすこぶる良かった。

 ミコを通じて、美琴とお話し出来たのが嬉しかったのだろうか。

 ニコニコしながら、淡々と日々の雑用をこなしている。

 機嫌は良いに越したことが無いし、一夜にチクチクと嫌味攻撃を受ける必要もないのだ。


 しかし、ミコは、美琴の事を考えると、チクリと胸が痛むのを感じた。

 ミコはミコだ。

 美琴ではない。

 たとえ同じ魂を宿していたとしても、美琴では無いのだ。

 

 羨ましいと思ってしまった。

 それはミコにとっては初めて感じる気持ちだったのだ。

 負けず嫌いで、強がりで、自分は自分、人は人と、ずっとそう考えてきた。

 けれども、自分の中に、自分よりもっと、清廉潔白で、高貴な魂を宿してしまった。

 憧れや、嫉妬にも似たこの感情を自分の中で、どうすれば片をつけらるのか、分からない。

 

(私は、美琴以上の巫女になれるのだろうか…)


「ミーコー。迎えにきたぞー」


 もやもやとしていたミコに、聞こえてきたのは、カズマの間抜けな声だった。

 昨夜は、カズマとセイラにもとても助けられた。


(ちゃんとお礼言わないとな)

 

 ミコは、迎えに来てくれた、カズマとセイラの待つ玄関へと向かう。


「おっす、ミコ! 」

「おはようございます、ミコさん」


 笑顔で迎えてくれる二人に、少し胸の痛みが和らいだような気がしていた。


「ミコ様、忘れ物ですよ」


 振り向くと、一夜がミコの体操服を持って、立っていた。


「ああ、ありがと…」


 ミコが受け取ろうとした時ーー。


 バシっ!


 カズマは、一夜から体操服を奪い取る。


「な、なに!? 何やってんの、カズマ… 」

「あんまりミコにベタベタしてんじゃねえ! 」


 カズマは一夜に向かって言い放つ。


「どういう事ですか?」


 不機嫌そうに、一夜がカズマを睨む。


「ミコはミコだ。昔、お前の事を好きだった女じゃねぇ。()()()()にして、ベタベタすんなっつってんの! 」

「なっ!? 」


 カズマの言葉に、一夜は言葉を失う。

 いつものイライラや怒りではなく、何も言い訳が出来ないようだった。

 一夜が、ミコと美琴を重ねて見ていた事は、ミコも分かっていた。

 しかし、ミコの気持ちは、またモヤモヤが増えてしまっていた。


 「ミコ、行くぞ! 」


 カズマは、ミコの手を力強く引っぱる。


「ちょっと、カズマ!? 」

「ミコさん、待ってください」


 セイラが追いかけてくる。

 

「カズマ、恥ずかしいから離せ!! 」

「なんだよ、あいつとは抱き合ってただろ? あいつの事好きなのか? 」

「なななな何て事言ってんの!! あ、あれは美琴が…」


(美琴が…?? )


 美琴が何なのだろうか?

 確かに、美琴はミコに語りかけていた。

 しかし、ミコの体を動かしていたのは、紛れも無く、ミコ自身だったのだ。


「私も気になります! 」


 息を荒くしながら、セイラも混ざって来る。


「セイラまで…全然、そんなんじゃ無いってば! 」

「本当だな? 」

「本当なんですね! 」


 ミコの答えに、二人は満足そうにしている。


(一体何なんだよ…)


 ミコの束の間の日常は、戻ってきた。

 少しのわだかまりを残して…。

励みになりますので、ブクマ、感想、評価等、よろしくお願いします☆

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