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第十五話 禊

 一夜は、自分の生みの親とも言うべき、黒衣の悪霊をセイウンを使い、清めさせていたのだ。

 ついでに、転生されたと思われる美琴の魂が、本物かどうかも確認する為に、わざわざミヤコをその場に呼び寄せて、力を使わせたのだ。

 自らの邪気を隠す事など簡単に出来たが、そうせず垂れ流し続けたのは、黒衣の悪霊が一夜を狙い、分散された魂が、一箇所に集まって来るのを待っていたのだ。


「土地を買ったと言っていた依頼主の男性…あの方は、私の前に二度と現れる事はありませんでした。あれも一夜殿が? 」

「蟲を使って人間を操る位は造作も無い事です」


 ミコは産まれる前から信じられない程の霊力を持っていた。

 それがミヤコに力を与え、結果、悪霊を滅ぼすことが出来た。

 一夜は、ミコの傍に居たいが為に、自分の過去の汚点を消し去りたかった。

 しかし、結局消し去ってくれたのは、ミコの霊力だった。

 やはり、ミコの傍にいれば、一夜が本当に美しい存在に近づいて行くような気がしている。

 そんな一夜が、ミコのために出来る事はーー、


「この神社の伝承や、二代目の巫女、他にも何か知っている事があれば教えてもらえますか? 」





  

 ミコは夜空を眺める。

 いつも隣に居るはずの一夜は、今日は何故かおらず、二葉はミコの部屋の外に居る。

 一夜が、自分の居ない時に部屋に入るなと言っていたからだ。

 眠れないのは、一夜が隣に居ないからなのか、それとも…。

 ミコの感覚は、美琴と会って以来、研ぎ澄まされていた。

 遠くから、ミコに向けられた敵意をハッキリと感じ取っていた。

 

 ミコは、普段着る事の無い、白い着物に袖を通し、神社の一角に造られた、小さな打たせ滝に向かう。

 髪を軽く結い、夜の冷たい水の中に入ると、頭から滝に打たれながら禊を行う。

 

(私はこのまま一夜を拒否し続けるのだろうか…)


 そのままミコは、自分の潜在意識の中に入っていく。


 美琴は言った。

 一夜とミコなら、拒絶の結界をなんとか出来るかもしれないと。

 ミコよりも、霊力と術の扱いにも長けていたはずの美琴は、なぜそう言ったのだろう?

 

 そもそも拒絶の結界は何の為にあるのだろうか?

 巫女を守るため。

 何から?

 敵から?

 それもあるのだろう。

 

 美琴は、どうして清らかな心を持ち続けられたのだろうか?

 結界が、周りの嫌な感情に影響を受けないように、心を守っていた?

 嫌な感情を持たないように、外界との接触を避けるように…?

 美琴が、拒絶の結界を初めて生み出した時、人間への恨みや憎しみが生まれようとしていた。


 しかし、結界を発した後も、美琴は清らかな心で、人間たちの為に祈り続けていた。

 では何故、結界は敵意の無い、一夜まで拒絶するのか?

 一夜の邪気や、憎しみ、それを拒絶しているのだろうか?


 美琴と一夜は、愛し合っていた。

 愛があれば、嫉妬が生まれ、愛すれば愛するほど、裏切られた時に憎しみを生み出す。

 そうなる前に結界は拒絶しているのだろうか?


 最初は、一夜の敵意に反応して拒絶していたのだろう。

 しかし、敵意がなくなった後は、巫女の心に陰を落とさぬように、一夜からの愛を拒絶していたのだろうか?

 美琴は、自らの意志で一夜を拒絶し続けていた?

 巫女の清らかさを保つために?


 美琴は、全ての人々の為に祈り続ける為に、一夜を拒絶し続けていた?

 ずっと、迷っていたのかもしれない。

 どちらかを選ばなければいけなかったのだろうか?

 両方を選ぶことは、巫女には出来ないのだろうか?


『お前なら上手くやれると思うておる。拒絶の結界も、お前と一夜なら何とかなるかも知れぬ』


 美琴は、一夜を受け入れる方法もあると、分かっていたのかもしれない。


 では、私は何故、一夜を拒絶したのだろう?

 私は…?





 「ミコ様! 」


 水から出てきたミコに、タオルを持ってきた一夜が声を掛ける。


「何をやっていたのですが? 風邪を引きますよ! 二葉は何をしていたんですか? 」

 

 しまった。

 また二葉が怒られてしまう。


「黙って窓から出て来ちゃった」


 タオルで体を包みながら、一夜の顔をじっと見る。


「ミコ様? どうかなさいましたか? 」


(私は…? )


「いや、何でもない」


 遠くにあった敵意は、近づいて来ていた。


「一夜」

「はい。分かっています」

「二葉! 」


 二葉は、呼ばれて、慌てて外に出てくる。


「ミ、ミコ様、いつの間に外に…何故、びしょ濡れなのですか? 」


 一夜は、白けた目で二葉を見る。

 しかし、最近の二葉はその冷たい目にも怯まなくなってきた。

 

「私の事は大丈夫。それよりも、敵が近づいて来ている。準備はいい? 」

「はい! 」


 二葉の元気のいい返事に、ミコは頷く。





「おやおや、わざわざお迎えをしてくれるとはのう?」

「いや、礼には及ば無いよ。こちらも、準備はバッチリ出来たからね」


 敵の言葉に、ミコは自信満々にそう答えた。

 現れたのは、フランス人形のような黒のドレスを着込んだ、金髪の少女だった。

 優雅に、空を歩くようにやって来たそいつは、夜なのに、ドレスと同じ漆黒の日傘をさしていた。

 見た目と喋り方のギャップがすごいが、この喋り方には覚えがあった。

 以前、神社に現れた、五月人形。

 そいつと同じ喋り方をしている。

 しかし、そいつとは比べ物になら無いほどの霊力を感じていた。


「我の人形を壊してくれた礼をしにきてやった。おっと、自己紹介がまだただったかのう…我は、吉将の十二天将、大陰。定めの巫女、その遺体、貰い受ける」


 大陰はそう言うと、日傘を投げ捨て、ドレスの裾から、体の三倍はある大鎌を取り出してくる。

 チェーンに繋がれた大鎌は、月の光を受け、怪しく鈍い銀色の光を放つ。

 大陰は、大鎌をミコに向かって投げつける。

 鎌は、拒絶の結界を物ともせず、ミコの胸に向かって飛んでくる。

 

(やはり結界は役に立た無いかっ!! )


 ミコは大きく後ろに飛び、


「二葉!! 」

「はい、ミコ様! 」


 二葉は、ミコの体に吸い込まれるように入って行く。

 ミコは、二葉を取り入れることで、火と水の術を詠唱せずに出せるようになったのだ。

 

 一夜は、ミコに向かって鎌が投げられた瞬間に、大陰に向かって、攻撃を仕掛けて行く。

 背中に甲虫の羽を広げ、手を蠍の尾に変える。

 そのまま大陰を捉えようと、巻き付こうとするが、大陰が手を翳した瞬間、尾の先端を簡単に砕いた。


「我が体は特別製でのぉ…お前の体は柔いのぉ」

「っく! 」


 一夜は砕けた尾を無数の蟲に変え、大陰の体を包み込もうとする。

 しかし、蟲は力無く地面に崩れ落ちた。


(万事休す。ここまでとは…)


 あの一夜が、圧倒的に押されているのを見て、ミコの額からは冷や汗が流れ落ちる。

 しかし、こちらも、全てを一夜の力に頼ろうとしていた訳ではない。


「行くぞ、二葉! 反撃だ! 」


 ミコはそう言うと、炎の鞭を手に、大陰に攻撃を仕掛けて行くのだった。

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