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第七話 清らかな魂

いつも見に来ていただいてありがとうございます。

どうぞ、第七話も楽しんでいってください^^

 一夜は、突然の来訪者の気配を感じ、ミコの部屋の窓から外に出る。

 ミコの部屋には二葉を残しているので、何かあれば火を使い合図を送ってくる手筈になっていた。

 ミコの美しい寝顔は一夜だけの物だったのだが、背に腹は変えられなかったのだ。


(また結界について調べないと…)


 一夜はとても嬉しかった。

 イライラをミコに八つ当たりしてしまう前に、来訪者にぶつけられるからだ。


(手加減なんて出来ませんよ…)


 月明かりの下、一夜の口元は怪しく歪む。

 

 そいつは子供の姿をしていた。

 見た目は五月人形のように、おかっぱで髪を切り揃えた男子だ。

 子供の姿を見ると、どうしてもあの時の辛い記憶が蘇ってしまう。

 と、同時に、必ずミコを守ろうと決意をする。


「ほう、お前はあの時の虫けらか」

「あの時…とは? 」

「巫女の霊力を高める為に、三代目の巫女になるまで待ったのじゃが…。たかが虫けらに巫女の亡骸を奪われてしもうたのぉ。思い出すだけでも虫唾か走るわ! 」


 子供は自らの手をナイフに変え、一夜に襲い掛かる。

 一夜は、右手を子供に向け、すぐに呪いの言葉を吐く。


『貪れ! 蟲ども! 』


 一夜の手から出てきた蟲は、子供を囲い込む。

 しかしーー、


 ザーーっ!!


 子供は虫を刃物で一閃し、消し去る。

 そのまま、一夜の胸に目掛けてナイフを突き立てようとする。

 一夜は、左手でそのナイフを弾くと、右手に闇の力を蓄え、子供の腹に向かって拳を放つ。


「そう簡単に当たると思うてか!! 」


 子供は器用に一夜に掴まれた手を軸に、空を蹴り、体を宙に浮かせる。

 そのまま、今度は足を槍のように長く変え、一夜の太腿目がけて突き刺そうとする。


「ちっ! 」


 一夜は、舌打ちをしながら子供の手を離し、寸前で槍を避け、間合いを取る。

 子供の姿をしているが、戦い方は一夜の隙をつく、嫌な戦い方をしている。

 自分も美しい見た目とは裏腹に、中身は禍々しい気が渦巻いている。

 戦いにおいては、見た目で判断することはとても危険な事なのだ。


 しかし、隙をついて来るという事は、逆に隙を作れば必ずそこを狙って来るという事だろう。

 一夜は地面に降り立ち、闇の術を唱える。 


『我が身の内に眠りし闇よ、我が身を隠せ』


 一夜の言葉と共に現れた闇の霧は、一夜の姿を隠し始める。


「させるか! 」


 子供は、一夜の姿が見えなくなる前に、一夜の頭上から、襲い掛かる。

 術を唱える時、一瞬できる隙を狙ってきたのだがーー、


 スカっ!


「なんと!? 」


 子供が仕掛けた攻撃は、空を切り、地面に降り立つ。


「どこに行った!? 」


 振り返ろうとした瞬間ーー、


『我が血肉になりし憎しみの蟲ども…


 さあ、餌の時間だ』



 呪いは子供の動きを止め、蟲達は餌を貪るように、うじゃうじゃと増えていく。

 一夜は、蟲達で自分の分身を作り、これ見よがしに子供の前で術を唱え、隙を作っていたのだ。

 案の定、そこを狙ってきた。

 既に身を隠していた一夜は、子供の背後から呪いをかけたのだ。


「こんな蟲如きで! 」


 先程、ナイフで振り払えた筈の虫達はびくともしない。


「くそ、何故だ! 」

「蟲の数を増やして、霊力を増やしただけです。焦る必要はありませんよ。ゆっくりとあなたを喰っていく間に、お話を聞きましょうか? 」

「グァ」


 蟲は子供の霊力を喰う度に、数を増やし、子供を覆って行く。


「これまでか…」


 その言葉を聞き、嫌な気配を感じ取った一夜は、大きく後ろに飛び、子供から離れようとする。がーー、


 ドォン!


 大きな音を立てて子供は爆発した。

 そして、一夜は見事にその爆発に巻き込まれようとしていた。





「ミコ!」


 誰かが自分を呼ぶ声が聞こえる。


「ミーコ!」


 うっ…


(誰だ!? )


 目を開けると、そこは海の底ーー、ではなく、ミコの潜在意識の中だった。

 そこにいたのは、巫女装束を着た美人だった。


「もしかして…美琴さん? 」


 なぜそう思ったのかは分からない。

 一夜の話を聞いた後だからだろうか。

 それとも、やはり魂が一緒なのだろうか。


「そうだ」


 女性は肯定する。

 確かに、美琴は美しかった。

 モデルの様な長い手足に、整った指先。

 長いまつ毛、きりりとした眉に、たおやかな唇。

 全てを見据える透き通った瞳には、強い意志を宿していた。

 一夜が美しいを連発するのも頷けた。

 もし魂がリンクして無ければ、完全に赤の他人だ。

 

(私と全然似てないなぁ…本当に一夜は私でいいのだろうか…)


 そう考えていると。


「そりゃあ似ていないさ。私は子を成してはおらん。遺伝子はすでに殆ど違っているからなぁ」

「えっ」

「それに、あやつが追い求めているのは、清らかな魂。外見に惑わされる事などない」


(私、口に出してたっけ?? ) 


「出して無い。しかし、魂が一緒なのだ。考えている事など手に取るように分かる」

「そ、そうですか。ところで、なぜ急に美琴さんは現れたのですか? 」

「うむ、一夜が辛い想い出を話す事によって、奴の中から私の記憶が少し抜け出すことが出来たようだ。それが、お前の中の魂と合致したのであろう」

「へぇ〜。そんな事が…」

「しかし、少しだけじゃ。長くは持たん」


 美琴はそう言うと、少し寂しそうな顔をした。


「ミコ、まさかお前まで拒絶の結界を発動してしまうとはなぁ」


(ああ、そうなのか…)


 美琴がミコの気持ちが分かるように、ミコにも美琴の気持ちが手に取るように分かる。

 美琴は、自分が一夜にしてやれなかった事が、ミコとなら出来るのでは無いかと思っていたのだ。

 しかし…美琴はそれでいいのだろうか。 


「あ、あの、美琴さんは、一夜と私が仲良くしててもいいんですか? その、私にはまだ良く分からないのですが、人を好きになるって、ヤキモチとかそんな気持ちが…」

「ああ」


 美琴は、ミコが言おうとしている事を理解したようだ。


「私は愛されていた。そして今も愛され、想われている。それで問題ない」


 美琴は自分の胸に手を当てる。


「私は愛されて、そして一夜の中に一緒に居る。醜く憎しみの塊のようなあやつの心の中に、一箇所だけ温かい所がある。それが、私との思い出。そして、私の魂を宿したお前があやつに愛されている。魂が旅をしてまで愛されている私は、幸せ者だと思わぬか? 」


 美琴はやはり美しかった。見た目ではない。心も、考え方も、その全てが。

 

「ミコよ。一夜の事をよろしく頼むぞ。あやつはお前の前では大人ぶっておる様だが…とても子供っぽいやつでな。私の言葉一つで感情が表に出てきてしまう、とても可愛い奴なんだ」


(確かに、怒の感情はダダ漏れだけど…)


クスクスっ

 

 笑われてしまった。

 私の考えてる事もダダ漏れだった。


「お前なら上手くやれると思うておる。拒絶の結界も、お前と一夜なら何とかなるかも知れぬ。今度はお前といつ話せるか分からんが、私の抜け出した記憶と、お前の中の魂が、霊力の使い方を教えてくれるだろう」


 美琴の姿が少し薄くなって行く。


「一夜のピンチじゃ。助けてやってくれ…」


 そう言い残し、美琴はミコの意識の中方消えていった。

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