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第二話 星詠み

 ミコは二葉を部屋に残し、着替えを済ませた後、居間に向かっていた。

 最近、ミコの周りでは本当に色々な事があり、かなりお気楽な性格だったミコも、警戒心を持つようになっていた。

 カズマに合図を送って、理解してくれた様だったので、きっとセイラを見張ってくれているだろう。

 と、いう考えは甘かった。


「セイラちゃんは〜、何が好きなの〜?? 」

「…」

「今度〜一緒にお食事でもどぉ〜?? 」

「…」


 能天気なカズマの声だけが、居間に響く。

 セイラはカズマの事など意に返さず、ひたすら正面に座っている一夜を睨みつけている。

 一夜はそんなセイラに目もくれず、黙々とお茶の準備をしていた。


「カズマく〜ん、ちょっとこっちに来てくれない?? 」


 ミコはこめかみを痙攣させながら、カズマの襟首を摘み、廊下に引っ張り出す。


「カズマ! 私の合図、理解出来なかったのか? 」


 ミコは、なるべく小声で、カズマの耳元で怒る。


「ちっげ〜よ! なるべく情報を引き出そうとしてだなぁ。まずは仲良くならないと話が始まらないだろ? 」


 確かに、カズマの言うことも一理ある。しかしーー、


「それならいいけど、私は可憐な少女をナンパする親父に見えたけどな」

「…」


 目が合わない。


「お前、『可愛い子だから、あわよくばデートでも…』とか、思ってなかっただろうな? 」

「…」


 カズマの事を『理解ある幼馴染』と思っていたが、勘違いだったようだ。

 ミコの冷たい視線に気がつき、


「冗談だって! 本当に情報を聞き出そうとしただけで…」

「どの辺が冗談なんだ。鼻の下伸ばしていただろう! 」


 小声で言い合いながら、顔を近づける。


「馬鹿野郎! 誰が鼻の下なんか…。第一、俺は、幼女に興味は無い! 俺には好きな子が…」

「何をやっているんですか? 」


 カズマが何か言いかけた時、今の引き戸が開き、一夜が顔を出した。

 

(ヤベっ)


 ミコとカズマは、お互いの鼻先がくっ付くかどうかの所で、言い合いをしていた。

 一夜は額に青筋をたて、禍々しいオーラを放っていた。

 




 あの後、カズマは一夜によって神社からつまみ出されていた。

 そしてミコは、チクチクと一夜にいたぶられたのである。

 一夜のミコに対する執着は凄まじく、人間であれ、式神であれ、ミコに近づくものを許さないのである。

 また、そのイライラは、時にミコ対しても毒吐く形で行われるのである。


(いいよ、いいよ。忠誠心? の裏返しとして受け取っておこう)


 しかし、もうすぐ夕飯の時間だと言うのに、セイラは帰ろうとしない。

 

「お家の人、心配してるんじゃ無いの? 」

「いいえ、放任主義なので大丈夫です」

「でも、お腹空くでしょう? 帰ってご飯食べた方が…」

「カップ麺を持っているので大丈夫です」


 埒が明かない。

 親父はと言うと、


「ミコのお友達かい〜? カズマのアホと違って、かわい子ちゃんじゃないかぁ〜」


 などと言っていた。追い出す気はないのだろう。

 一夜も、セイラを追い出す気は無いのだろう。

 居間でセイラ用の客用布団を出していた。

 つい先日、ミコがゴタゴタに巻き込まれた所なのに、なぜこんなにも警戒心が無いのか…。

 とりあえず、ミコの部屋ではなく、居間に布団を引いてもらって助かった。

 寝る時まで一緒だと、おちおち寝てもいられない。


「おやすみ、セイラ」

「ミコさん、おやすみなさい」


 ミコは部屋に戻り、とりあえず、セイラの事を整理してみる。

 彼女は根が無口なのか、あまり自分からは喋ってこなかった。

 ミコを観察するように見ていたり、一夜を警戒していたりと、もしかしたらこちらの戦力を探っているのかも知れない。

 感情を表現する事もあまり無いし、表情からは何も読みとれなかった。

 しかし、セイラが人間である事は間違いない。

 霊や、式神が持っているような独特の気配は無いし、彼女の人間としての魂をハッキリと感じることができる。

 あまり考えたくは無いのだが、もしかしたら人間が、悪霊を操っていたりしているのだろうか…。


 色々と考えているうちに、ミコはいつの間にか眠りに落ちていた。





「起きているんでしょ? 」

「そろそろ来る頃だと思っていた」


 一夜は居間の引き戸越しに話しかける。

 問い掛けに返してくるのはセイラだ。


「何をしにいらっしゃったんでしょうか? 」

「目的は、お前と一緒では無いのか?」

「ご冗談を…。あなたはミコ様に災厄を持ってくる気配がしています」

「自分の事を棚にあげて、よくも…。お前の様な穢らわしい存在が、巫女の側にいるとはな。今も…昔も…」


(やはり…)


 この女、セイラの中身は、昔、『定めの巫女』の側に、星詠みとして仕えていた女だ。

 星詠みは運命を見届け、占うのが仕事で、手を出したり、口を出したりしてくる事はなかったのだが…。

 どう調べたのかは知らないが、一夜がミコの側に居ることを知ってしまったらしい。


「まさか、星詠み…あなたも転生されているとは…」

「巫女が現れた今、星詠みが側に仕える事は当然だ」

「まあ、そうですね。しかし、昔のあなたとは随分変わりましたね?  こんなにおしゃべりではなかったでしょ? うちの弱小式神にも何かされた様ですし」

「こちらにも色々と事情が有るのだ」


 とりあえず、この女が星詠みだと確信が持てた。これで変に警戒する必要はないだろう。

 一夜の記憶では、星読みが巫女に手を出す事など無かった。

 過去には守る事も無かったのだが、二葉に対するあの態度は、まるでミコを守っている様にも見えた。

 昔は人間のくせに、何の感情も持たないおかしな女だと思っていたのだが…。


「わかりました。では、ミコ様にはお互い知られたくない事も有るでしょう?」

「お前は巫女に何も話をしていない様だな? 巫女としてお目覚めになるまでは、お前の事も黙っておいてやろう」

「ありがとうございます」


 一夜は礼を言い、立ち上がり扉の前を離れる。

 真っ直ぐに向かっていくのはミコの部屋だ。

 いつものようにミコの寝顔を眺める。


(定めの巫女としての力に目覚めた時、私はまた拒絶されてしまうのでしょうか)


 いつも自分のやりたいようにやって来た一夜だったが、自分の胸に渦巻く複雑な感情に気が付いた。

 

 ミコの髪にそっと触れる。

 ミコには強くなって欲しい。

 そう願っているのは事実だ。

 しかし、巫女としての力が目覚めた時に、一夜はどうなってしまうのか。

 今の様に簡単に触れられなくなってしまうと、要らぬ怒りをぶつけてしまうかもしれない。


 ミコに触れられなくなると考えただけで、胸が苦しくて、痛い。

 息が出来なくなる様な不安に押しつぶされそうになる。

 自分が弱くなってしまったのではないのかと疑ってしまう。


 この感覚は、昔定めの巫女が亡くなった時に味わっていた、それと、似た感覚。

 しかし、それと似てるようで、違うような…。


『一夜が人間らしくなれば、私と分かり合えるようになるのかもな』


 一夜は、昔言われた言葉を反芻する。

  

 強くなって欲しいけど、拒絶されるのは嫌だ。

 一夜の中で矛盾した感情が溢れ出す。


「これが、人間らしい感情なのでしょうか…」


 疑問を口にしながら複雑な表情をする一夜は、人間をは厄介な生き物だと思うのだった。

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