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第一話 セイラ

 ミコは、学校で絡まれていた。

 興味の無い事は覚えないタチなので、その子の噂など、知る由もなかったのだが。

 

「ミコ! ラッキーだよ! セイラに占って貰えるんだから! 」


 クラスで仲良くしている女の子、ナオは楽しそうに言う。

 ナオはショートカットに日焼けした肌の、スポーツ女子だ。

 快活な性格は、ミコと、とてもウマが合うのだ。

 ナオの話によると、セイラは、気になった子に対して、突然占いを始めるのだと言う。

 その占いの精度は100%らしく、未来予知能力でもあるのかと、噂をされているらしい。


 ミコは占いには全く興味が無く、セイラにお願いをした訳でも無い。

 クラスの違うセイラの顔は愚か、名前もナオに聞き、初めて知ったのだ。

 放課後、ミコが帰ろうとしている所、廊下でいきなり袖を掴まれたのだ。

 最初は、興味が無いから断っていたのだが、ナオの勧めと、セイラが袖を離してくれなかった事もあり、仕方なく占ってもらう事にした。


 セイラは、小柄な子で、高校生ながらに身長は小学生と変わらない程だった。

 髪はロングヘアーで、眉毛で切り揃えられた前髪が、幼さを助長させている。

 最初に袖を掴まれた時、生徒の妹が迷子になったのかと思ったくらいだった。

 制服を着ていたから一応高校生だと分かったものの、危うく子供言葉で話しかける所だったのだ。


 セイラは、放課後の教室で、黙々と机の上でタロットを混ぜ、


「手を置いてください」


 ミコは言われるがまま、机の上に手を置くと、セイラはその上から自分の手を重ねてくる。

 セイラは一枚一枚タロットを机の上に並べ、読み上げていく。


「魔術師の逆位置

塔の正位置

月の正位置

戦車の逆位置」


 ミコにはさっぱりわからないのだが、セイラの冷たい手と、タロットに描かれた神秘的な絵柄も相まって、ドキドキと鼓動が速くなるのが分かった。


「思い通りに事は進まず、周りに流される。予想外の出来事が起こり、不安や迷い、現実を受け入れられ無い状態が続きます」


 占いの結果を聞き、ふと、最近起きた出来事を思いだす。

 先日、清花という霊に振り回されたり、最終的には、ミコの想定外のことが起こり、うやむやのまま終わってしまった。

 言い当てられたような気がして、占いに対して少し興味が湧いてきた。


「世界の正位置と…」


 言いかけて手を止める。

 どうしたのかと、顔を覗き込むと、難しい顔をしている。


「何やってんだ? 」


 唐突に後ろから話しかけられた。

 タロットに集中していて気が付かなかったため、ドキドキしていた心臓が口から飛び出そうになる。


「うぁぁ。ビックリしたぁ」


 声の主は、毎度お馴染み幼馴染みのカズマだった。

 セイラは急な来訪者にも動じていないようだった。


「今、良いところだから邪魔しないでよ〜」


 占いの行方が気になっていたナオは、カズマを嗜める。


「ナオ、さっき陸上部の先輩が探してたぞ」

「しまった! 呼ばれてたの忘れてた! 」


 カズマに言われ、ナオは鞄を肩にかけると、急いで廊下に飛び出していく。


「カズマ! 占いの邪魔しちゃ駄目だぞ! ミコ、また明日ね! 」


 そう言い残すと、ナオはバタバタと廊下を走り去って行った。

 ナオの後ろ姿を見送り、セイラに視線を移すと、手を顎に当て、まだ悩んでいるように見えた。

 少しの間をおいて、セイラは意外な事を言い出した。


「しばらくミコさんの事を観察することにします」

「え!? 」

「お家にお泊まりさせてください」


 そう言うと、セイラはタロットカードを鞄にしまい、


「さぁ、行きましょう」


(良いって言ってないんだけど…)


 その大人しそうで、可愛らしい見た目とは違い、どうやら強引な性格のようだ。


(占いに出てた『周りに流される』って、セイラの事なのかもしれない…)

 

「あの、今度にしない? ウチも片付けておくし…」


 やんわりと断ろうとするミコに、


「いえ、大丈夫です。廊下でも寝れるように寝袋は持ち歩いています」

「寝袋!? そんなもの持ち歩いてるの」

「では、行きましょう」


 何を言ってもついて来るようだ。





 仕方がないので、とりあえずセイラと一緒に家に帰る事にしたのだが…


「何でカズマまでついて来るんだ? 」

「気になったから…と、アイツにお礼参りも兼ねて」


 アイツとは一夜の事だろう。

 一夜はミコの一番最初の式神で、容姿端麗で、本人曰く『何でも出来る』器用な式神なのだ。

 先日、痛い目に会ったばかりなのに、懲りていないらしい。


(返り討ちに合いそうだけど…)


 まあ、セイラと二人だと話も持ちそうにないので、取り敢えずカズマと一緒で助かったのだが。

 神社の鳥居をくぐると、声が聞こえた。


「ミコ様おかえりなさい」


 そう言いなが近づいてくる二葉にーー、


占星(せんせい)宝瓶結界(ほうへいけっかい)! 」

「うぁ! 」


 セイラの言葉で(かめ)の形をした結界が形成され、二葉はその中に閉じ込められてしまった。


「ミコ様! 」


 結界の内側をトントンと手で叩きながら、ミコを呼ぶ二葉。


「二葉! 」


 唖然としていたミコだが、素早く手で韻を組み、


「解! 」


 パァーン!!


 ミコの声と共に、瓶の形をした結界が砕け散った。

 二葉に駆け寄り、無事を確認し、セイラの方を睨む。

 セイラは、顔色を変えず、


「すみません、浮遊霊かと思いました」


 当然のように言ってのけるセイラに、少しイラッとしたものの、彼女にも二葉が見えている事に気が付いた。


「二葉が見えているのか? 」

「ええ。フワフワと飛んでいたものでつい…」

「この子の名前は二葉、私の二番目の式神だ」


 二葉を紹介すると、セイラはゆっくりと、二葉に近づいて来る。


「ごめんなさい。式神だと気が付かなくて」


 セイラの言葉に、二葉は一瞬ビクッと体を強ばらせ、ミコにしがみ付く。


「嫌われてしまいました」


 セイラは、残念がっているのか、ただ口に出しているだけなのか、その表情から読み取ることが出来ない。


「ミコ様、お帰りなさいませ。どうかなさいましたか?」


 一夜は、そう言いながら二葉の首根っこをつまみあげ、ミコから引き剥がす。

 

「おや、お客さまでしたか? 不出来な式神が粗相を致しまして、申し訳ありません」


 一夜は一瞬鋭い目つきをしたが、すぐに悩殺スマイルをセイラに向ける。

 セイラは、一瞬警戒するように眉を寄せたが、会釈をする。

 どうやらセイラには一夜の誘惑術が効いていないようだ。

 もしかすると、一夜が人間でない事にも気づいているのかも知れない。

 ミコは一瞬目配せをし、カズマが頷くのを確認する。

 さすがは幼馴染だ。ミコが何も言わなくても、意図を理解してくれたようだった。


「一夜、友達を居間に案内してあげて。私は荷物を置いて、着替えてくる」

「はい、かしこまりました」


 ミコは、一夜の手から二葉を取り返し、手を繋ぎ部屋に連れていく事にした。

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