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第十一話 幼馴染

「う〜ん」


 ミコ達は戦闘の後、神社に戻ってきていた。

 アヤカの部屋には札が貼りつけられており、本人にも魔除けに札を持たせてあるので、取り敢えず問題はないだろうと予想されたのだ。

 祓われた不気味な人形持ち帰っており、今はもう動くことも無く、畳の上に横たえられていた。


「付喪神とか、それ系の物なのかなぁ? 」


 付喪神とは、人々が長年使っている物などに、魂が宿ったものとされている。

 ボロボロの童人形は、霊が宿るには十分古く、着せられた着物は上等な生地で作られており、長年大事にされていた物だとわかった。

 今は見る影もなく壊れているのだが、何かの理由が有り、捨てられてしまったのかもしれない。

 ミコの呟きに、一夜は首を横にふる。


「いいえ、付喪神とは一つの物に一つの魂しか宿りません。これは魂が宿ったと言うよりは、器になる人形に漂う魂を無理やり詰め込んだのでしょう」


 まあ、言われてみればそうだろう。

 ミコも『うんうん』と、同意する。

 それに、物を長年大事使ったにも関わらず、あんな気持ちの悪いものが誕生してしまったら、大事にする気も無くなってしまう。

 昨日の童人形の形相を思い出し、またミコは身震いをしてしまう。


「そういえば昨日、この人形が本体じゃないって言ってたけど…」

「ええ、本体は別にいるでしょうね。こいつは、こいつの意思では動いていませんでした」

「う〜ん」


 一夜の答えを聞いて、ミコはまた悩んでしまう。

 こいつが本体でないのならば、トカゲの尻尾切り、いくらでもこんな化け物を作り出せてしまうという事になる。


「じゃあ、どうやって本体を見つけ出せば良いんだろう? 」

「それについては問題は無いかと」


 悩んでいたのに、あっさりとそう言う一夜。


「昨日の大量の魂が居場所を教えてくれました」

「え? どうやって? 」

「結構な量を喰わせていただきましたからねぇ。そいつらの知っている情報から人形が歩いてきた場所、記憶を元に、大方の検討はつけています」


(喰った? 喰ったの?? あの気持ちの悪い物を?? ) 


 若干引き気味のミコの顔を見ながら一夜は、ペロリと唇を舐めて見せる。

 それから意地の悪い笑みを浮かべ、


「役に立つ式神でしょう? 」


 そう言いながら、さっきから一言も言葉を発していない二葉の顔を見る。

 

 ビクっ!


 二葉の肩が一瞬揺れ、


「も…申し訳ありません…」


 小さな声でそう答えた。

 二葉は一生懸命頑張っていたのだが、いかんせん力が弱い。

 使い過ぎた力の反動で、紙人形に戻ってしまったのだ。

 その事をネチネチと、帰ってきてからずっと一夜に虐められている。

 それで何も言えなくなってしまったのだ。

 ミコも、一夜にネチネチと言われた過去があるので、二葉の気持ちが痛いほど分かる。


(ここは主人(あるじ)である私がフォローをせねば!)


「二葉大丈夫だよ! 」


 二葉は期待を込めた顔でミコを見る。


「大丈夫! 二葉を戦力として考えていたわけじゃ無いから! 」


 胸を張って言い切るミコに、絶望した顔をする二葉。


(あれ? )


 石のように完全に固まってしまった。

 『それなら良かった! 』ってなるはずだったのに…。

 その横で、一夜は完全に勝ち誇った顔をしていた。

 ミコの一言は、二葉に完全にトドメを刺すには十分すぎたようだ。


「さあ、ミコ様、学校へ行く準備をしましょうね」


 一夜は昨日にも増して、機嫌が良さそうで、ミコの肩を押して、部屋を後にするのであった。





「ふぁぁ〜…」


(眠い…)


 若いとはいえ、流石に徹夜明けは体に堪える。

 人よりも丈夫な体を持っているとはいえ、昨夜あれだけ暴れ回ったのだ。


(あぁ、眠い…)


 ウトウトとしながら歩いあていると、唐突に後ろから声が掛かった。


「おい! 男女(おとこおんな)


(はぁ〜)


 ミコは振り返るのも億劫なのだが、取り敢えず声の主の方に顔を向けてやる。


「なんで最近空手の稽古に来ないんだよ! 」


 そこに居たのはミコの見知った顔だった。

 同い年の幼馴染件、腐れ縁、カズマ。

 短髪で、幼さを残した顔立ち。

 最近、最高級のイケメンを間近で見てしまっている為に、惜しい感じのイケメンとだけ表現しておこう。

 ちなみに、顔はそこそこなのに、女子人気はイマイチ。

 それはカズマの性格があまりにも幼稚な為だろう。


 気が利かない。

 失礼。


 ミコは、徹夜明けでコイツに見つかってしまった事を超絶後悔していた。


「はぁ〜…」


 思わずため息が出てしまった。

 疲れている時には会いたくない奴である。

 昔、泣き虫だったカズマを何度もいじめっ子から助けてやったというのに、恩人に向かって『男女(おとこおんな)』とは…。


 カズマは寺の住職の子供で、昔から何かとミコに張り合いたがっていた。

 ミコが空手を習っていると聞くと自分も習い始め、ランクの高い高校を目指していると、カズマも同じ高校に入学してきたのだ。


(これが神社と寺の宿命なのだろうか…)


 取り敢えず面倒くさいので、


「そのうち行く」


 と、一言だけ言い残して立ち去ろうとするミコに、


 ガシっ!


 カズマがミコの手を掴んできた。


「おい! 待てよ! まだ話が終わってないだろ! 」


(うぉ〜、超絶面倒臭い! )


 そう思いながらも、ミコは冷静に、そして、丁寧に言い放つ。


「離して下さい」

「なんで敬語なんだよ! 」


(どうしろと!? )


 と、くだらないやり取りをカズマとしていると、いつの間にか野次馬学生達の晒し者になっていた。

 時間は八時過ぎ。

 登校してきた生徒達は、興味本位で立ち止まり、二人のやり取りを見学している。


(あぁ〜最悪だぁ)


 そう思っているとーー


「いってっ」


 カズマの呻き声と共に、ミコの手は解放された。


(へ? )


 ミコが見上げると、不機嫌そうな顔の一夜がカズマの手首を締め上げている。

 禍々しいオーラを隠す気もないらしく、みるみるカズマの手が紫色に変わっていく。


「お、おい、一夜! 離してやって」


 ミコがそう言うと、一夜は手をパッと離した。


(なぜこんな所に一夜が…?? )


 そう思っていると、


「ミコ様、お弁当をお忘れでしたよ」


 ニコニコ笑顔を向けてくる。


「あ、ああ、ありがとう」


 そう言ってお弁当を受け取ると、先程よりも、もっと晒し者になっている事に気が付いた。

 女の子達は、一夜を遠巻きに囲い、口々に『カッコイイ〜』とか言いつつ、顔を赤らめている。


(ヤバイ…これはまた何かの術が発動しているのか…)


 そう思ったミコは、取り敢えず一夜と女の子達を引き離すべく、一夜の手を引っ張って立ち去る事にした。


「カズマ! 話はまた今度聞いてあげるよ! 」


 後ろからカズマの引き止める声がしたような気がしたが、今はそれどころではないのだ。


(女の子達を呪術から守らねば…)





「ふぁぁぁぁぁ〜」


 午前の授業の終わりを知らせるベルと共に、ミコは目を覚ました。

 結局学校に来たにも関わらず、午前の授業は全て寝過ごしてしまったのだ。

 考えても仕方ないので、ミコは自分の席でお弁当を広げようとする。


 ドカッ!


 ミコの目の前の席に唐突に座り込んで来た。カズマだ。


「はぁぁぁぁぁ〜」


 今日一番の長いため息をついてしまった。


「なんだよ! 来ちゃだめだったのかよ! 」


(うん、そうだよ)


 と、言いたい所だけど、心の中に留めておいたミコはとても大人になったと思う。


「空手、何で来ないんだ? 体調も悪そうだし…」


 どうやらミコの事を心配をしているらしい。


(なら最初からそう言えばいいのに…)


「大丈夫。寝不足なだけだよ。空手は…まあ、今は色々と立て込んでるから…」


 ミコが曖昧にそう堪えると、


「あいつか!? 朝一緒に居た、あいつが原因なのか!? 」


 カズマは椅子から勢いよく立ち上がり、大きな声で言う。


「ちょっと、声大きいって。違うよ、一夜は…」

「あいつのあの感じ…俺の感が危険信号を出してた。一瞬感じた忌まわしい感じ、あいつは一体何者なんだ? 」


 そう言えばカズマも寺の子供だけあって、霊感は強い方だった。

 昔から息吹と紬の事も見えていたようだし、そこそこ法力の勉強もしていたようだ。


(う〜ん…)


 何者かと問われると、ミコも答えられない。


「一応、私の式神…かな? 」


 ミコの答えに目をまん丸にするカズマ。


「あんな危険そうなヤツがか!? 」


 また声を荒げる。


「ちょ…いちいち大声を出すな! 」

「わ、わるい」


 カズマの言いたい事は分かる。

 一夜の力はとても大きくて、時折見せる禍々しさは、とても普通の式神と一緒にしていいものではないのだ。


(でも…)


 ミコはここ数日、一夜と行動を共にする事によって、そこまでの危険性はないと思っていた。

 むしろ、そんな事よりも、ミコへの強い執着の方が気になっていた。


「はぁぁぁぁぁ〜」


 疲れた顔でもう一度ため息をつくミコに、


「何かあったら俺に相談しろよ! 大船に乗ったつもりでいろ! 」


 カズマは自分の胸を『ドンっ』と叩き、ゲホゲホと咽せかえる。


(寧ろ、泥舟な気がする…)


 先ほど一夜に手酷い目に遭わされた事をすでに忘れてしまったようだった。

 

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