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第九話 魅惑の式神

 今朝はなんか、いつもと様子が違っていた。


 いつも早起きの親父は起きてこない。

 息吹曰く、『昨夜、急な仕事が入った為、まだお休みになっております』、との事だった。

 

一夜はいつもと変わらないそぶりを見せてはいるが、ここ数日でなんとなく、一夜の感情を読み取ることが出来るようになった。

 多分、今日の一夜は機嫌が良い。

 着物に袴、何故かエプロンをつけて、パジャマ姿のミコに声を掛けた。


「おはようございます、ミコ様。お食事の準備が出来ていますよ」

「お、おはよう…何かあったの?」


 ミコの質問に、少しうれしそうな顔をしたように見えた。


「いいえ、大した事はありません。邪魔者を退治出来た。そんな感じでしょうか」

「そ、そうなんだ」


 逆に、『一夜の邪魔をしようとした命知らずな奴すごいなぁ』と、思ってしまう。


 異変はそれだけでは無かった。

 学校に向かおうと家を出た時、境内が荒れている事に気がついた。

 木が焦げていたり、石畳の傷も心なしか増えている。


(一体何が…)


 そう考えていると、いつものように後ろから声がかかる。


「おやおや、二葉が夜に火遊びをしていた様ですね。後で折檻しておかなくては…」


(毎度毎度、気配を殺して、後ろから現れないで欲しいのだけれど…って言うか、二葉が石畳に傷を作れるのか? )


「折檻はしなくて良いんじゃないの? 二葉も頑張ってるみたいだし…」


(って言うか、二葉殺しちゃいそうだし…)


「ミコ様が言うのであれば、頭を小突く位で許してあげましょうね。所で、ミコ様、学校に遅刻なさいますよ」


 言われて慌てて自分の腕時計を確認する。


(ヤバイ! )


「じゃあ、行ってくるね! くれぐれも二葉に優しくするんだよ! 」

「分かっています。行ってらっしゃいませ」


 一夜の言葉に見送られ、神社を後にするミコ。


(一夜が小突いたら、二葉の頭取れちゃわないかな…)


 そんな一抹の不安を残しつつ、学校に向かうのであった。





 放課後、ミコは二人の式神と共に、アキラの姉をマークしてみることにした。

 二葉の話によると、アキラの姉アヤカは、大学生をしながら、アルバイトをしているらしい。

 家が焼けてしまっている為に、現在はアパート暮らしをしていて、神社に訪れた際に記帳して名前と住所から、すぐに居場所を突き止めることが出来た。


「ふ〜ん。今は家に居ないみたいだね」

「この時間だとバイトかもしれません」


 ミコの呟きに答える二葉。

 誰も居ない部屋を眺めるミコは、少し嫌な感じがしていた。

 背筋がゾッとするような、嫌な感情が、アキラの燃えた家同様ここにも残っていたのだ。

 まだそこまで強い憎悪では無いようだが…


「もしかしたら、この嫌な感じを追って行けば、アヤカさんにたどり着くかもしれないね」

「本当ですか?ミコ様?」


 少し驚いた感じで二葉が聞き返してくる。

 ミコは最近色々あった為か、感覚も鋭くなって来ている。

 これ位の気配が残って居れば、なんとなく今のミコなら追える自信があった。


「お手並み拝見ですね」


 ニコニコしながら一夜が言う。


「臨む所だ! 」


 ミコは元気よく答えて歩き出した。


 トボトボと気配を追いながらミコ達は歩いている。

 普段のミコはあまり考え事などしないのだが、昨日の事を思い出し、珍しく考え事をしながら歩いていた。


(一夜…)


 ミコが呼び出した強過ぎる式神。

 親父に聞いた事がある。

 式神というものは、自分よりも強い力を持つ者を主人(あるじ)と認め、付き従うもの。

 明らかにミコよりも強い(悔しいけど、認めざる得ない)一夜は、何故ミコを主人(あるじ)とし付いてくるのか。

 今の自分には、一夜が暴れだし、ミコを支配しようとしたとすれば、それを抑える力など無い。


(いろいろと聞いてみたい事は多いんだけどなぁ…)


 そう思いながら、ふと、一夜の顔を見上げる。

 端正な顔立ち、長いまつ毛、艶やかに流れる黒髪。

 そんな見た目とは裏腹に、昨日感じた一夜を恐怖する感覚。


(聞きたい…でも…知るのも怖い)


 何事も、物事をハッキリさせたがるミコにしては非常に珍しい曖昧な感覚ーー


「…コ様、ミコ様! 」


 二葉の声に気が付き、ミコは顔を前に向けようとした、その時ーー


 ドンっ!!


『いったぁ〜い』


 ミコと前から歩いてきた女性の声が重なった。

 アキラの姉、アヤカだった。

 尻餅をついたミコに手を貸し、引っ張り起こす一夜に、ミコは小声で言う。


「なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ!」

「いやぁ、ミコ様に見つめられるなんて、最高の気分でしたので…」


 少し頬を赤らめながら言う一夜に、ミコは鳥肌が立ってしまった。

 呆気に取られそうになっている時に、


「いたたた、ゴメンなさい、前をよく見ていなくて…」


 アヤカが謝ってくる。

 まだ尻餅をついているアヤカに、ミコは手を貸しながら、


「こちらこそ申し訳ない。よそ見をしてしまって」


(一夜の顔に見()れてぶつかったなんて、一生の不覚だ! )


 アヤカは尻餅をついた時に手に擦り傷をつくってしまったようだった。

 よく見ると、アヤカの傷はそれだけでは無かった。

 身体中、見えるところには擦り傷や青あざだらけ。

 二葉はそんな姉を見ながら少し複雑そうな顔をしていた。

 アヤカからは二葉は見えていなはずだ。


「あの、大丈夫ですか? 血が…」


 ミコが心配をしていると、


「ああ、大丈夫です! 私、本当にドジで、いつの間にか色々と怪我をしてしまって…今回も、私がボーッと歩いちゃてて、本当にご迷惑をおかけしました」


 そう言って、ペコリと頭を下げるアヤカ。

 ミコもよそ見をしていたのに、アヤカに深く謝罪をされて、すごく申し訳ない気持ちになった。

 それに、このままだと話を聞く前に立ち去られてしまう。

 何とかしようと焦った結果…


「あ、あの、最近アヤカさんの周りで異変はありませんか? 」 


(しまった! ストレートに聞き過ぎてしまった! )


「えっ? あ、あの、なぜ私の名前を…? 」

 

何と言えば良いのか分からず、アワアワとしてしまうミコ。


 フゥ…


 ため息を吐き、一夜は助け舟を出した。


「一週間程前に神社にいらっしゃったと思うのですが…その時の神社の者です。神主は忙しく来れないのですが、アヤカ様にあまり元気がなかった事を大変心配しておられましたので、様子を伺おうとこちらに出向いたのですが…」

「そうでしたか。わざわざ足をお運び頂き、ありがとうございます」


 良かった。何とか誤魔化せたようだ。

 一夜って、本当に何でもできるな。

 心なしか、一夜はこちらを見てニヤニヤしている気がする。

 マウントってやつだろうか? 気のせいだと思いたい。


「ご連絡も差し上げず、参りました事、大変申し訳ありません。しかも怪我までさせてしまって…。よろしければおうちまでお送りいたしましょう」


 美しい顔を近づけながら、アヤカの手を取る一夜。

 その瞬間、ポッと、アヤカの顔が赤らむ。


「あ、えっと、ああ、あの…」


 アヤカの答えを聞かず、有無を言わさず歩き出す一夜。


(今度は色仕掛けか…)


 やはり、そんな姉を複雑な表情で見つめている二葉。

 二葉の肩に手を置き、首を横に振るミコ。


(あれは仕方がない…)


 ただの色仕掛けでは無く、なんらかの術にかかっているのかもしれない。


(もしかしたら呪いの一種か)


 とりあえず、ミコと二葉も大人しく、アヤカの家に一緒について行く事にした。


 そして、自分では出来ない事を何でもこなしてしまう一夜が、何故ミコに仕えているのか…ますます分からなかったのだった。


 そして思う。


(恐るべし、一夜!)

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