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気になる事

「私は怒っているのだぞ。もう少し、神妙な顔ができないのか」

「無理です」


にこにこと笑いながらアデールは父に応える。

リビングで、また家族四人で座っていた。アデールとエドワードの距離は、常識の範囲内だ。父が「親の目の前でいちゃつくな」と言ったせいだ。

父の隣で、義母が彼を宥めていたのだが、どうにも収まらなかった怒りがアデールに向いてきた。

原因はアデールなので仕方がないのだが、今、悲しそうな顔をするのは無理だ。

この幸せを押し殺してしまうなんてもったいない!

エドワードと婚約できたうえに、一週間後は結婚。

だったら、この一週間は婚約者として謳歌しなければならない。

「公爵家として、許しを得るのに十分な条件を提示したにもかかわらず、王太子を御しきれないから、アデールに条件を付したようなものだぞ。そのせいで結婚の準備ができないなど、理不尽だと思わないのか」

「私は、お義兄様と早く結婚できるなら、それでいいです」

アデールがふしだらで、王太子から誘惑されれば床を共にしてしまうと思われてしまうのは、仕方がないところもある。

そういうふうに見られることを狙って振る舞っていたこともある。

アデールは自業自得な上に、結婚が早いことは望むところなので全く悲しいとは思わない。

「お義兄様は、結婚が早くては不都合なことがありますか?」

隣に座っているエドワードを見上げると、彼は困り顔で唸って、小さく頷く。

「アデールと結婚することで、正式に後継者として認められるということになっている。結婚式でするはずだった公爵を継ぐ披露目できないということだから……少し、困るかな」

それは、結婚式しなくては――!!とアデールが思った途端、

「それは困らなくていい。お前が後継だと、私が決定したのだ。問題ない」

父がエドワードに向けて言い放つ。そして、余計なことをしようとするなと、アデールにも釘をさす。

父が倒れたとか何とか言って親戚中を集めようとしたのを、一瞬にして見抜かれたようだ。

「ドレスなどが、全て既製品になってしまうけれど、それはいい?」

エドワードがアデールを気遣ってくれる。

「はい。ドレスは、形式さえ整えば別になんでも」

華やかな式は望んでいない。

両親に祝われ、エドワードが隣にいれば、それでいい。

……と、おもったけれど、一つ気になることが浮かんだ。

浮かんで――ここで言うことじゃないなと黙った。

なのに、ここにいる家族は、アデールの表情を読んでしまう。

「アデールは、分かりやすくなったね。……何が気になる?」

エドワードが楽しそうにくすくすと笑う。

「元に戻っただけだろう。身内の中では表情を隠すことをしない娘だったからな。

だから、エドワードの妻にするのはお前が望んでいると判断していたのに」

父は、またも舌打ちでもしそうな表情をした。

アデールは口を開けて……もう一度閉じた。

いや、みんなが聞きたがっていることは分かったけれど、やはり後からに……。

「大丈夫よ、アデール。ドレスでも会場でも、できることはするから、希望を言って?」

義母が優しく言う。

エドワードや父だけでなく、義母にまで促されて、アデールは頬を赤くしながら覚悟を決める。

できれば、後からエドワードにだけ聞きたかったけれど!


「初夜はどこで迎えますか!?」


ごふっ……。


隣でエドワードが苦しそうにむせた。

父は呆れた顔を隠さず、義母は促したことを後悔したように目を伏せた。

だから、言わなかったのに!

「だって……!初夜だけお義兄様の部屋で過ごした後、私は元の部屋に戻るのかしら?できれば、続き部屋にして欲しいけれど、そんな時間がないなら、大きなベッドが入る部屋を仮に……あ、大きなベッドでなくても、私がくっつけば……」

「アデール。アデール。分かった。大丈夫だから、ちょっと待ってくれ」

気になることを話し始めたアデールを、エドワードが止める。

エドワードを見ると、顔を赤くしている。アデールだって、負けずに赤いとは思うけれど。

「あー……エドワード、任せる。好きなようにしろ」

「そうね」

両親ともに、アデールとエドワードから目をそらして、そっと立ち上がる。

アデールにもう気になることはないと判断したのだろう。


それぞれ、今からできることをやると言ってリビングから出て行った。


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