表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

家族会議(エド視点)

そこに、ノックの音がして、アデールがやってきた。

シンプルな部屋着を着て、気恥ずかしそうに部屋に入って来る。

今までの話をエドワードがしていることを分かっているからだろう。

「ただいま戻りました」

声をかけてから、両親と向かい合わせのソファーにエドワードが座っている様子を見て、アデールは視線をうろうろと彷徨わせる。

昨日までのアデールなら、一人かけのソファーに当然のように座っただろう。

もじもじしている様子から、エドワードの隣に座りたいのだろうと察した。

愛らしい様子に目を細めて、横に座るように促す。

アデールは頬を赤くして、ぎくしゃくと近くまで歩いて来て、エドワードにぴったりくっつくようにして座った。

「……」

情けないことに、反応できずに固まった。

「近すぎるだろう」

そんなエドワードの代わりに、義父がアデールに突っ込む。

「だって……!恥ずかしさを我慢して、折角、お義兄様の隣に座ったのよ。堪能しなきゃ……!」

堪能ってなんだ。

不意打ちに顔に熱が集まってくる。

そんなエドワードよりも、アデールの方が真っ赤だ。

アデールはこんなことを言って、エドワードの傍に座っているが、彼を見上げる勇気はないらしい。真っ赤な顔で、エドワードにくっついて座っているだけだ。

可愛い。

なぜこんなに可愛いのだろう。

「まあ、いい。納まるべきところに納まった感じだな。アデール。お前は、エドワードとの結婚を希望しているということでいいんだな」

先ほど、エドワードとも確認したことを、義父はもう一度アデールに確認する。

「はい。この一年、ご迷惑をおかけしました」

義父も母も、アデールの姿にホッとしたように微笑む。


「エドワードとの結婚の前に、お前には反省するべきことがある」


突然、義父が厳しい表情を作ってアデールを睨み付ける。


アデールも、ゆっくり頷いて、大きく息を吸った。

「分かっています。自分がした事です」

言いながら、彼女の目に涙が溜まってくる。

あんなに修道院に行く気だったアデールが、こんなに辛そうにするのは、エドワードから離れたくないせいだと分かっているから、彼女がさらに可愛くなる。

「だったら、お前を義兄、エドワードの保護下に置き、これ以上、社交界には出さずにエドワードと結婚させることとする」

エドワードが考えたシナリオだ。

今日の舞踏会で、アデールへの同情は充分に買えただろう。

ただ、アデールはいつもの評判があまりよろしくない。デビュー以後、ずっと華やかに傍若無人に振る舞っていたからだ。

だから、その華やかな生活を断ち切らせ、そのあと、地味な義兄と結婚をさせる。

アデールはエドワードの見た目が気に入らず、他の結婚相手を探していた……ように見えていた。

実際は、どうにか偉い人に失礼なことをしようと動き回っていただけらしいが、だからこそ、エドワードを嫌い、高位貴族に媚を売っていた令嬢へ下る重い罰。

そもそも、アデールは叩かれたのを叩き返しただけだ。舞踏会会場の客の同情も一定量は引けただろうし、これで、充分すぎる罰だろう。

「お義兄様との結婚が罰ですって……!?」

うまいこと考えたつもりだったが、アデールは気に入らないらしい。

「罰になるはずがないじゃないですか!こんなに素敵な……」

エドワードは、とりあえずアデールの口を塞いだ。

家族の前で褒め散らかされるのは恥ずかしすぎる。

「アデール。これが、一瞬でも離れずにいられる最善の策なんだ」

口を塞がれたまま、エドワードを見上げて、眉がへにょんと垂れ下がる。もごもごと何か言おうとしているが、多分、謝っているだけなので無視する。

「エドワードが一緒に罰を受けているように見えるのは、公爵家として謝罪も含んでいる。次期当主が、どうしようもない令嬢を内側に抑え込んで、全ての責任を負うということだ」

アデールは、目をまん丸にして、義父へ視線を移す。

義父は呆れた顔をして、軽く笑い飛ばす。

「結果的には、お前が望むように結婚できるだろう。王族に手をあげてまで、公爵家を出奔しようとしたんだ。これだけの犠牲で良かったと思え」

アデールがふるふると震えて、小さく頷く。

もう声は出ないようで、エドワードは口を押さえていた手を、アデールの肩に回す。

義父の説明を聞いて、アデールが深く反省しているのが分かる。エドワードが負ったように見える罪のことまで言わなくてもよかったのに。

エドワードは、思わず義父を咎めるような目で見てしまったが、彼はその視線を受けても表情を変えない。

ただ、母に睨まれた時は、そっと視線を逸らしていた。

「明日、陛下に謁見を申し込んだ。謝罪して、エドワードとの結婚を伝える。多分、異例なほどの速い結婚になるだろうが……喜ぶな」

「あっ……つい……。すみません」

エドワードからは見えないが、アデールは、喜ぶなと注意を受けるような表情をしたのだろう。

それは見たかった。

『お前もだ』と言わんばかりの視線を義父に向けられて、エドワードも表情を正す。

結婚が成立する前に、嬉しそうな様子を見せるわけにはいかない。

どんなにアデールが可愛くても、表情は引き締めておかなくては。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ