ぷろろーぐ
時代は今より少し進んだ近未来。
日本政府は全国の天才を学ばせるために、雲を突き破るほどの高層ビルを造り上げた。
三学年あり、一学年あたり40人程度。学年ごとにばらつきがある。
その中で、学年を問わず問題児を集めたクラス「エルピーダ」がある。
~とある生徒の取材記録~
ーーーーーーここで、「学院」の新人教師にインタビューしてみたいと思います!
なんだお前か、いきなりどうしたんだ?
ーーーーーーいえいえ、ちょっと暇潰しに…………というのは冗談で、インタビューしに来たんですよ。
俺なんかインタビューしても華にならないだろう。ほら美人教師のカレン先生でもインタビューしに行ってこい。
ーーーーーーそうやって、面倒事を回避しようとしているのはお見通しですよ。ほらほら、ゲロッちゃいなさいよぉ。あの事バラされてもいいんですかぁ?
っぐ! そこを突かれると痛い。分かった。インタビューに応じよう。それで、なにを答えればいいんだ?
ーーーーーーええっと、好きな女性のタイプと好みの体型と性癖をどうぞ
は、はぁ!?
ーーーーーー冗談です。普段澄ましている先生の慌てふためく姿を見たかった、キュートな先生思いのお茶目です。
なぁにが先生思いだ。こないだも聞いたぞ、教頭のスキャンダルを全生徒にばらまいたと。
ーーーーーーあーハイハイ、ページが押してるんで説教は四次元のポケットにでも閉まってください。
異次元じゃないか。しかも大丈夫か色々と。
ーーーーーーえっとでは、七組の担当になった先生の心情というかですね、そういうのお願いします。
ああ、それなら簡単だ。ただ一言で形容できる。「ヘタしたら死ぬぞ、俺」だ。教室に爆弾を設置して、物探しゲームをする奴がいるし。実験だどうのこうので教室のドアを吹き飛ばすやからもいるしな。挙げ句の果てには、
ーーーーーーはいストップストップ。先生のグチなんて、そこら辺のドックフードよりいらないですよ。
もはや人間の食べ物じゃないな
ーーーーーー知ってますか、おいしいドックフードもあるんですよ。
いらん知識が増えた。まぁおもしろいがな。
ーーーーーーでしょでしょ、と言うわけで、もっと表面的と言いますか、配慮と言いますか、だれだれちゃんと熱愛してるとか、そういう面白いことを教えてください。
全く表面的じゃないし、配慮してないな。
ーーーーーー面白ければオールオッケですよ
付き合ってられん、そろそろ授業の時間だ。お前もそろそろ教室に戻ったらどうだ。
ーーーーーーあっ! ちょ、ちょっと待ってください。
仕方あるまいから一つだけ。
面白いよ。あいつらといるのは。ま、誰しも共感できる部分はあるということだ。
面白ければオールオッケーだ。
残金三十五万。
無慈悲で純然たる事実が数字として俺の通帳に写し出されていた。
わが網膜を疑い、何度も目を擦り、何度も手元を見る。
「こ、これは何かの間違いなんだ!」
俺の心からの叫びに、行き交う人々が白い目を向けるか、あからさまに失笑を浮かべる。
三十五万もあれば十分な貯金だろう。しかし、それが職無し、孤立無援の引きこもりなら、また話は違ってくるだろう。
「なぜ、こんなことになってしまったんだ」
後ろめたく過去の行いの全てを思い出し、諸悪の根元を恨めしく呼ぶ。
「天神佑め…………!」
…………まぁ、俺の名前だが。
俺とて別に初めからニートであったわけではない。通帳の一番上の額である七十万を稼いだのは他でもない自分だし、仕事内容にも文句がなかった。
ただ、上辺だけのチットも中身のないやり取り。相手の本質を理解しようともせずに、その仮面を見て全てを分かったように振る舞うやつらが多すぎた。
決めては生来の「人間嫌い」だ。
会話、仕草、口調、抑揚、その他もろもろで何となく相手の本音が分かる俺には、嘘にまみれた社会は苦痛だった。
ーーーーだから辞めた。
退職届を出した俺を上司はいたく止めようと必死に言葉を並べていたが、そんなものはお構いなしだ。どうせ環境が悪い職場だから、人手が足りないだけだろう。
ーーーーその結果、今の破綻寸前でホームレス直行ルートに移ってしまったんだけどな。’
簡単な措置ぐらいしてくれると信じたいが、国も働かないごくつぶしを養うだけの余裕はないだろう。
俺は心のそこからため息をひとつ、遅い来る日差しをうっとうしげに睨み付ける。
なら働けばいいだろうと突っ込みをいれたそこのあなた、だまらっしゃい。
そんな根性がないから、今が存在するんだ。
「はぁー、どこかに簡単な儲け話はないもの
か」
益体のないことを考えながら、虚ろな目をし歩道を渡る。
そのせいだろうか。いやきっと、そのせいに違いあるまい。俺が厄介事に首を突っ込むことになったのは
「うおぅ」 「キャ!」
突如、視界外から飛び込んできた衝撃に脚がふらつく。相手の油断をついた見事な脇腹への一撃。
相手は誰だ……? 悲鳴を聞いた限り女性のようだが。
ぶつかった相手を探すために前方に向くも、訓練を積んだ忍者よろしく、影も形もなかった。
「いたたぁ」
声の発信源は遥か遠くの地球の裏側……というはずもなく、すぐ近くの地面からだった。
すこし視界を下げてみると、案の定そこには尻もちを付き、痛そうに顔をしかめる少女がいた。
身長は女子の部類でもことさら低く、145~150センチぐらい。
体格もそれ相応のもので、大胸筋近くの膨らみも(胸)、後頭部側の下肢近くの膨み(尻)も皆無に等しい。
そんなものはどうでもいい、どうでも言い訳ないのだが、それよりももっと重要な特筆すべきものが少女にはあった。
ごうごうと揺らめく太陽を思わせる赤い髪に、同色の瞳の色。
髪を染めてカラーコンタクトを入れた、コスプレ少女か痛いやつか……と思ったのだが、どうも色彩が人工のもので無いように思う。それほど色鮮やかなのだ。
「悪いな君……。大丈夫か」
少女の情報を海馬にしまって早三秒。瞬時にそこまでの思考に漕ぎ着けたが、そろそろ一声掛けないと不審がられる。
「ううぅん、大丈夫?」
「なぜ疑問形?」
「君の心配をしてるから?」
ああ、そういうことか。
男と女、体格も違えば筋肉の量も違う。実際少女は吹き飛ばされ尻もちを付いている。にも関わらず俺の心配をしてくれたのか。
「俺は大丈夫だ」
「ほ、ほんとに?本当に?」
少女が立ち上がり、スーパーで野菜の検品をする夕方の主婦みたいに、俺の体をつついたりじっくり観察してくる。
な、なんか変な気分になるから、止めてほしい。
「うん、本当に大丈夫そうだね、よかったよかった」
少女は太陽を思わせる笑顔を向ける。と、動いた影響からか、ツゥーと一筋の赤い線が足に流れた。
「ありゃりゃ。血、流れちゃッったか」
ここで無遠慮に少女の手当てをするのがラノベ主人公だろうが、流石にそれを現実でしてしまえば社会的に抹殺されてしまう。
「ハンカチ…………やるよ。いらなかったら捨ててもらっていい」
俺は妥協案として、ポケットの中からハンカチを取り出し、少女に投げる。
空気抵抗を受けたハンカチはそのままヒラヒラとまい、少女の手のひらへと収まった。
「あ、ありがとう」
「気にするな、俺のエゴだ。じゃあな」
きびすを返し、片足を踏み入れる。もう一度後ろの方から「ありがとう」と聞こえた。
赤髪美少女さいこぉー!
と、言うわけで始まりました、あとがきです。
恐らく完全私用のラクガキスペースとなると思いますので、ぜひコメントをお願いします。もれなく作者の励みとなります。
この作品を創作するために、友人に読んでもらい、感想をもらったのですが、第一声が「主人公の名前アマテラス(天神)?」でした。
流石にアマガミと呼びますので、間違えないようにお願いします。
次回は二日後か三日後かになると思いますので、面白いと思った方はブックマークお願いします。
面白ければオールオッケーです。(好きな言葉)