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冒険者ギルド 2

「だが少し目を凝らすとだんだんと見えてくるのさ。……この街には…世界にはまだ未解決の種火が多く残っている。いくら都市でも外敵だって少なくないし、人間だって良識を持った人ばかりじゃない。それに、先の大戦の傷も完全には癒えてないしね」


「あー…そうですね…戦争の当時はまだ故郷で、小さい時のことなのであまり覚えてないですけど、両親から何度も聞かされたので知ってます」


「そうか…いや、知らない方がいいのかもしれないね、戦争なんて…。でも、戦争とはどういうものかは知っておいてほしいかな」


ニールの視線の先には、確かにギルド内の修復しきってない部分を捉えながらも未だに走り回っている子供たちを追っているように見える。


「あの子たちもいつかは成長し、街を支え、人を支え、そして世界を支えるようになる。そうなった時、過去の人となった我々が彼らにしてやれることは少ない。ならば、その手助けを今のうちにしてやらねば、世界は再び傷を背負うことになるんだよ」


「…………」


「おっとぉ、ごめんね、いきなり熱くなってしまって」


「……いえ、ニールさんの言うことが正しいことだというのは分かります」


「そうかい?君はまだ若いのに大人な考え方をできる人なんだね。……で、どうする?こんな暗い話をしてしまった後で申し訳……」


「ニールさああん!」


まだ自分の中で答えを出しきれていないその時、正面玄関の方から元気のいい声が聞こえてきた。

声がする方へ顔を向けると、さして自分と身なりの変わらない、歳の近そうな男が3人…。


「おい、シリアン。あまり騒ぐなよ、他の人もいるだろ?」


「そーだよー、しかも今ニールさんお話し中じゃん」


「うるさいなぁ別にいいだろー……な?」


………いやいや、初対面の俺にいきなり『な?』とか言われても困るんだけど…。


「おかえり、アイサクト、ミスラ、シリアン。無事にそれぞれ希望の職業になれたようだね。おめでとう」


ニールがそう言うと、1人は満面の笑みで、1人は微笑で、1人は遠慮がちに各々の装備品を誇らしそうに掲げていた。


---------------------------------------


それからしばらく5人で食事をしながら彼らの話を聞いていると、ニールの言いたいことがだんだんと読めてきた。


この一つ一つの動きが大袈裟な、先ほど満面の笑みをした人物、シリアンと言う。短めの金髪で体格がよく、顔立ちは男らし…いや、漢らしい。何事も豪快かつ最短距離で物事を終わらせたがる性格の持ち主。ロールは魔法アタッカー。職業は呪術士。


この中では一番大人びて見える、先ほど微笑した人物、アイサクトと言う。肩まで伸びる黒髪はさらさらと揺れ、中肉中背で顔立ちはそこそこ整っている。物事に対して基本的に若干の冷めた態度をとる性格の持ち主。ロールはヒーラー。職業は幻術士。


先ほど遠慮がちに笑みをこぼした人物、ミスラという。小柄で中世的な顔立ちをしているが、衣服の隙間から時々見える筋肉は主人公よりもできている。礼儀正しく、基本的には何でも他者に譲る性格の持ち主。ロールはタンク。職業は斧術士。


「この3人はね、ついさっきギルドで登録されたばかりの『冒険者』なんだ」


「まぁすぐ有名になる予定なんだけどな!」


「あくまで予定ね、予定」


「さっきから茶化すなよ…」


「とはいえ、3人だとあまりバランスのいいパーティとは言えない。確かに攻撃手段を多く持つシリアン、敵の攻撃を引き受けるミスラ、負傷した人を後方から支援するアイサクトの3人でも最初のうちはそれとなくこなせるだろう。だけど、敵が強大になるにつれて、体力値も高くなってくる。……そこで、君に話を持ち掛けてみたってわけさ。どうやら歳も近そうだし、君なら仲良くやれるんじゃないかい?」


「お、いきなり仲間の勧誘か!?いいねいいね!一緒にやろうぜ!」


「だから今ニールさんが一生懸命説明してくれてるじゃん…あまり茶化さないでよ…」


「お前らがそれを言うなよ!」


騒がしくも仲良さげに言い争う3人を、ニールはまるで自分の子供をあやすかのように優しい目と仕草で制止させる。


その様子を見ながら、今の自分に冒険者になった自分を当てはめて考えてみる。

豪華な装備品と武器を身にまとい、そして周りにはたくさんの綺麗な女の人。でもその誰もが勝てないような友情と信頼がある仲間がもっと近くにはいて…。今はまだ飲めないけど、たまにはお酒を嗜みながら、昔のことを馬鹿みたいに笑い、泣き、喧嘩して、でも最後は笑いながら……。

そしてそれはこいつらかもしれないけど…こいつらじゃないかもしれないけど……確かに、そんなことを想像すると…。


「やります」


「…え?」


「えっと…だから、やります、冒険者」


※オリアナ→日本

 グロリア→日本の中にある都道府県 のようなイメージでお考え下さい。

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