表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

うちの愛すべきジャジャ馬は無人兵器

作者: RAMネコ

爆弾や砲弾と何が違う。


無人兵器に対しての漠然とした感想だった。オペレータが指示して、その通りになるように考えて、そうなる。レーザー誘導爆弾や自己修正砲弾と何も変わらない。だからこそ、ハンガーに並ぶのは無人兵器ではあっても、戦闘機でも爆撃機とも考えられなかった。それはやはり、爆弾や砲弾と同じ兵器以上でも以下でもないのだ。翼手のパイロンに爆弾を引っ掛けても、違和感はない。ミサイルが一手間かけて多目的になった、それだけだ。


俺は“彼女”を見上げた。爆撃任務を任せられたのに、俺の帽子にオイルをお漏らしして出撃中止になったジャジャ馬だ。“彼女”はすぐに御機嫌を損ねる。姉妹たちと大きな違いだ。爆装を解除された彼女は、ポンプを交換して万全に体調を整えられた。有人機と比較して、体もお値段も貧相だが、よく働くのが“彼女”だ。歴戦の無人兵器、空から誰よりも速く駆けつけて、誰よりも長くそこから見守る。緊急出撃は有人機なら時間がかかっても、“彼女”は無茶を押せる。お陰で“彼女”のジェットエンジンは何度も全換えのボロボロだが、一番戦果を挙げ、一番頼りになる。


「ダグラスさん、まーた彼女にお熱だよ。お袋さんが拗ねますよ」

「うるせぇや、お前の娘っ子の面倒を見てやらねーぞ、ダイチ!」


ニッポン人にからかわれながら、“彼女”の飛行記録を見た。見た目は健康そのものだが、頭のほうはまだわからないからだ。“彼女”はGPS誘導と地形追随レーダで正確に飛ぶ。だがひとたび接敵し自己判断モードになると、荒い高機動を多用する。誰の何を学習したのやら。しかもこれは実戦だけで、シミュレーションだと手を抜くのだ!“彼女”曰く、脅威の重みづけがと言い訳するが、手を抜いているということだ。


“彼女”のAIを自己診断させる。人力でお化けコードを解析はしない。異常なし。それはいつもと変わりないことを意味していた。中ではどんなアルゴリズムで異常を走査しているのかはわからない。だが結果は、『正常』と現れた。俺はガシガシと頭を掻く。“彼女”が喋れば、とありえないことを考えた。具体的な言語機能は搭載されていない。“彼女”には通訳がいる。データから何を感じて、考え、結論したかをだ。赤ん坊を相手にするのと似ている。


無口な女だ。何も教えてはくれないのに、知ってほしいと拗ねる。猫よりも気紛れで、猫みたいに合理的だ。他の姉妹に倣ってもう少し素直なら可愛げもあるというものを……。ラップトップを閉じた。整備パネルに挿したケーブルを抜く。どうしたものかね。悩んだが、案ずるよりも産むが易し?という諺がありらしい。考え悩むのは苦しいというわけだ。


跳ねっ返りの娘っ子をどうするかね。まったく手間のかかる女だ。俺はにやける口を引き締めて、再点検に臨んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ