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88 ブラシを買いに

「きゅきゅう!」「ピピッ!」

翌朝は、はしゃいだラピスとティアのもふもふ攻撃で目が覚めた。ティアがこんなに自ら動いているのって珍しい・・。やっぱりお出かけは楽しいんだね!それに、今日はもしかしたら幻獣店に行けるかも知れないもんね!


はやる気持ちを抑えつつ、カロルス様の部屋に向かって、まふまふと毛足の長い絨毯を歩いていく。ちなみに今回一緒にハイカリクに来てるのはカロルス様・執事さん・セデス兄さん、メイドさん2人、護衛2人、御者さんだ。正直全く護衛の必要がないし、むしろこの面子だと護衛の方を守らないといけなくなる切なさなんだけど、形式上最低二人は必要らしい。頑張って御者さんと馬車を守ってあげて!

そんな大所帯で移動するもんだから、お宿は冒険者の宿と違って貴族用で、造りが全然違うんだ。なんていうか、たくさんの部屋を丸ごと借りる感じ。えらい人の部屋、家族の部屋、使用人の部屋、みたいになってるの。だからオレも1人部屋を割り当てられて、なんだかくすぐったい。メイドさんがご一緒に!!って言ってくれたけど、オレは自分のお世話は自分でできるからお断りしたんだ。むしろカロルス様のところへ行ってあげて?


「あ、ユータ、おはよう。よく眠れた?」

「セデス兄さん・・おは・・よう・・?」

途中で会ったセデス兄さん・・ああ・・メイドさんは、カロルス様だけじゃなくてセデス兄さんの所にも必要だったみたいだよ。

「セデス兄さん・・・ちょっとお部屋いこう?」

「ん?なんだい?」

まだぼんやりした様子の彼を部屋に押し込んで洗面所へ連れて行く。金茶の美しい髪が・・凄いことになっている・・・なんで彼はこのまま出てこようと思ったのか?イケメンは鏡を見なくても大丈夫ってことなのか?!

「ありゃ・・・ホントだ。あはは、なんでこんな髪になったんだろうね~?」

いやオレはそこよりなんで気付かなかったのかを知りたいよ。せっせと柔らかな髪を濡らしてドライヤー魔法で乾かしてセット完了!

「・・何気なく使ってるけどさー、その魔法、なに・・??いやもう今さらか・・・。」

セットした頭をいじりながら、部屋から出ようとする彼の服を引っ張って止める。

「・・・セデス兄さん、そのズボンはちょっと。」

「え?・・・ありゃ?なんで僕寝間着なの?あはは、おかしい~!」

けらけらと笑うセデス兄さんに脱力だ・・・何だろう・・・しっかりしてそうで抜けている・・そんな所でカロルス様の血を受け継がなくてもいいのに。

とりあえず髪とズボンを変更したら、抗議を込めて、運んで!とばんざいの姿勢をとる。オレ頑張ったから罰としてオレをカロルス様の所まで運んでください!

ひょいっと抱え上げたセデス兄さんが一言。

「ふふ、ユータは甘えん坊だね。」

・・・そう?!そうかな?!甘えん坊・・オレかな?!?!すごく納得できない評価にむくれると、頬をつついてまた笑われた。



「ええ、ユータ様良かったですね、ありましたよ!少し裏通りの方になりますが、正規のお店です。」

「ホント?!やったー!!行こうよ!ねえ、早く早く!」

「きゅきゅ!」「ピピッ!」


幻獣店があったって!オレとラピスとティアは大喜びで跳ね回って急かす。早くいこう!今すぐ行こう!もうみんな置いていっちゃおうかな!

「待て待て!まだ朝めしも食ってないだろう、とりあえず食ってからだ。」

「・・・カロルス様?あなたは行きませんよ?」

「なっ?!なんでだ!昨日終わったろ?もういいだろう?!」

「いえいえ、昨日は昨日の分、今日は今日の分のお仕事がありますからね。」

頭を抱えてうおおーなんて言ってるカロルス様は置いといて、セデス兄さんを引っ張る。

「じゃあ今日はセデス兄さんとお出かけ?執事さん?」

「ふふ、私は昨日ご一緒しましたからね、セデス様もどうぞ羽を伸ばしてきて下さい。」

「いいの?じゃあ今日は僕とお出かけしようか!」

「うん!あのね、オレどうしても幻獣店に行きたいんだ!そこに行ってもいい?」

「へぇ、おもしろそうだね!じゃあまずは朝ご飯食べて、そこに行こうか?」

セデス兄さんが執事さんから詳しい場所を聞いて、今日はオレとセデス兄さんでお出かけだ。カロルス様の見張りは執事さんがしてくれるらしい。さあ、大急ぎで朝ご飯を食べて出かけよう!



表通りを逸れて、少し狭い道に入ると、昨日の華やかな雰囲気とはまた違った趣がある。建物がすごく高い気がするけど、きっと村の小さな家を見慣れているせいかな?それともオレがちっちゃくなったからかな?裏通りの商店街は、表通りより大分庶民的な雰囲気で、見かける冒険者も多い気がする。表通りは観光客用、裏通りは地元民御用達って感じだ。治安が悪いかと心配したけど、むしろ庶民しかいないからスリ等は表通りの方が多いらしい。ただ、ケンカや暴力沙汰はやっぱりあるみたいなので注意が必要だ・・・いや幼児にケンカを売る人はいないと思うけども。


「えっと、キャシーのお店の向かいだから・・ここだね!数年前にはなかったから比較的新しいお店だね、僕も見たことないや。」

緑色の大きな両開きの扉がついたそのお店は、真新しい、と言うほどでもなかったけれど確かに周囲の店よりは新しいだろうか。お店の前にちょっとした屋根のある休憩スペースみたいな場所があって、大きな生き物がいた。茶色い馬っぽいけど・・ツノが2本生えている。

「うわぁーこれ・・・」

これはなんて生き物、って聞こうとして思いとどまった・・ルーみたいな人もいるんだし、こんな町中にいるんだから、もしかしてこれ、人じゃないよね?

「・・・・えっと、はじめまして、こんにちは?オレ、ユータです。あの、お名前は?」

・・ぶるる!

2本ツノの馬は馬らしく首を揺すって鼻を鳴らした。うん、これは多分馬だね。

「・・・ぶはっ!!!ゆ、ユータ、なんでバイコーンとお話ししてるの?」

「・・・だって、もし人だったら失礼だと思って・・・。」

笑い転げてひいひい言ってるセデス兄さん・・どうやら2本ツノの馬はバイコーンと言うらしい。そんなに笑わなくてもいいじゃないか!ルーっていう見た目では分からない人もいるんだからね!怒ったオレは発作の治まらないセデス兄さんを置いて店の扉を開けた。

キィ・・・

軽い音をさせて大きな扉が開くと、ふわっといろんな香りが漂った。生き物の匂い、皮の匂い、草の匂い・・そして色々な魔力も感じる。

店内はそこそこ広くて、雑多な物が多い割にきれいに整頓されている。

「わあ~色々あるね!」

「おや?小さいお客さん、何かお探しで?」

突然声をかけられてビックリしたけれど、棚の奥からひょいと顔をのぞかせて若い女性がイタズラっぽい顔をしていた。

「あ・・こんにちは!あのね、ブラシをさがしにきたの。」

「おやおや、本当にお客さんなのかい!パパやママはどこいったの?一緒に来ただろう?」

「セデス兄さんがそこにいるよ!」

「ああ、兄ちゃんと来たんだね、よっしゃ、こっちおいで!どんな子に使うブラシだい?見たとこ貴族のぼっちゃんだろ?フェアリールーかい?アンゴラキャット?キミが飼ってるならモルマウスかな?」

言いながら次々棚からブラシを出してくれる。

こんなにあるんだ・・・どれがいいかな?!


「ちょっとユータ先に入らないでよ・・ああ可笑しいったら。」

まだクスクスしながら入ってきたセデス兄さん。

「ねえ、ブラシがいっぱいあるんだ!どれがいいかな?!」

「うーん、僕は見たことないしねぇ。ただ、大きいんだろう?大きいブラシの方がいいんじゃないかい?」

「へぇ!大きい幻獣なんだ?なんていう子?」

「うーんナイショ!おそとにいた馬より大きくて、長めの毛でさらふわでとってもきれいなの!」

「んーーなんだいそりゃ?大きくて毛が長くて綺麗・・・じゃあ、これなんかどう?グレートシープ用の高級ブラシだから、値が張るけどさ。毛を売り物にする幻獣用だから、ブラシとしては最高だ!」


そう言って出してくれた大きなブラシ。おお、大きさは良さそうだ。受け取って真剣に検討をはじめる・・握り心地・・ヨシ!そっと手に当ててかたさと弾力のチェック・・ヨシ!重さ・・・ヨシ!感じる魔力・・・ヨシ!

「・・なんだい、急に職人みたいになっちゃって。」

「あ、はは・・気にしないで下さい。ちょっと変わってるんですよ・・。」



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