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972 採取?


「ちゃんと、強かっただろ? 討伐も任せろ!」

「僕の方も、素材は集めたいしね~」

どうやら、ちゃんと触覚も見つけたらしい二人が、ガンミョウを引きずりながら戻ってくる。お肉にもならない魔物の解体は、後回し。ちゃんとオレの収納に入れておく。

「まさか、本当にそんなことが……しかし、この子は別だろう」

視線が、一斉にオレに向く。あれっ?! なんで――あ!

「しまった……オレ活躍してない?!」

がくり、と項垂れるオレに二人が苦笑した。

「いや~そいつが一番強いけど……」

「とりあえず、行こうか~。見れば分かるよ~」

半信半疑ながら、悲壮な顔よりは今の方が断然いい。少し緊張感のほぐれた森人たちと歩きながら、今後の相談をする。


「戦闘できることが分かったでしょ~? じゃあ素材もアレだけってことないよね~?」

にこり、と笑うラキの笑みに圧がある。どっちにしたって、狙うのは食材だよ? 加工素材じゃないからね?

「あ、ああ……もし、本当に可能なら入手したいものはたくさんある……!」

「よしっ! どんどん行こうぜ!」

「ちょっとタクト待って?! オレが先に実力を見せるから!」

だってオレ、まだ森人の陣地内だから! 囲まれてるんだからね?!

ちなみに、元々の採取予定だったウルスの実は、すぐに見つかった。まさか、引き返すって言わないよね? の圧に負けて、こうして素材収集の探索は続いている。


「この先でマナナの実と、ヒトタケが採れるはずだから……」

「ええ~また採取か?」

不服そうな顔をするタクトに、森人たちが首を振る。

「マナナの実は、樹木系魔物からの採取、ヒトタケは魔物だ」

「それに、マナナの木は魔物を寄せるから、非常に危険だ。今回、この人数ならなんとか……」

ちら、とオレを見て渋面をつくったリスリスさんに、慌てて胸を張ってみせる。

「大丈夫! オレ、活躍するよ。しかも、回復魔法も使えるからね?!」

「ほう……回復要員か。それはありがたい」

少し、オレを見る目が変わったろうか。そっちじゃなくて戦闘の方で変わってほしかったけれど。


「よし、じゃあマナナの木を探せばいいんだね! 森の中で甘い匂いなら……」

すぐに分かりそう、と続くはずだった言葉を飲み込んだ。シロやティアに頼むまでもなく、これは……。

「「「甘い匂い!」」」

明らかに、森の中で異質なねっとり甘い香り。本来はそれで人や魔物を寄せていたのだろうけれど、今やそれを目印に人から狙われるとは、下剋上も甚だしい。人って罪深いものだ。

「気を付けろ、魔物も多くなる!」

「ホントだ、ねっ!」

伸びてきた何かを切り落とすと、側の木から何かが剥がれるようにもんどりうった。

カメレオン……? 擬態して舌を伸ばしてきたみたい。そこそこ大きいけど、いくらなんでもオレを丸のみは難しいんじゃない……? 欲張りすぎだよ!


しっかりとどめを刺して収納に入れた瞬間、その場を飛び退いた。

ドスッと重量級の音をさせて落ちてきたのは、きたのは……なんだろう、これ。

鮮やかな黄色と緑の、派手な色をした触手単体みたいな……ああ、もしかしてヒルの仲間?

「これも、素材じゃないよね? 仕留めるよ?!」

「メヌ……! 離れろ、こいつに剣は効きづらい! 魔法で――」

「大丈夫、魔法も使えるから」

ここは、セオリー通り氷か雷だろうか。

パキン、と音をたてて氷結したメヌは、綺麗と言えないこともない。一応、収納に放り込んで、さあ、次!

呆気にとられる森人を他所に、無事活躍の場を得たオレは大いに張り切って襲い来る魔物を片っ端から片付けていく。

なんか、オレばっかり狙われているような、そんな気がしなくもないけれど。


「なあ、あれがマナナ?! どこ切ったらいいんだ?」

「うわあ~実ってあれのこと~? すっごく大きいよ~」

奮闘するオレを置き去りに、先に進んでいた二人の声が響いた。

えっ、オレも見たい!

慌てて魔物を蹴散らして駆けつけると、そこは妙にスッキリ拓けた場所だった。

そこここにオレより大きなウリっぽいものが転がって、それらは蔓で真ん中の植物に繋がっている。

中央に位置する大きな植物は、木というよりただ巨大化した植物のよう。巨大な、と言いたいところだけど、周囲の木々が化け物級なので小さく見えた。

「おわ?! なんだ、こいつ動くぞ!」

不用意に近づいたタクトの足に、地面を割って伸びた地下茎が絡みつく。間髪入れず、地面を這っていた蔓が跳ねあがるように巻き付いた。

「馬鹿ッ、樹木系魔物と言っただろう! 不用意に近寄るな! くそ、しまった……!」


もしかしなくとも、かなり激しく動く系の魔法植物らしい。ムゥちゃんのお仲間と言えば、お仲間だ。

積極的に栄養を取りに行くが故の、この丸々と巨大な実なんだろう。

「あんなに大きい実だったら、ひとつでも十分じゃない? どうやって食べるの?」

「いや、実そのものでなくて――そういう話をしている場合じゃないな?!」

料理人のサガか、反射的に答えかけたリスリスさんが、オレを二度見した。

マナナの木周囲では、森人たちがなんとかタクトを救出しようとしているらしい。

「じっとしていろ! 必ず助けてやるから!! 諦めるな!」

「くそ、あの蔓に捕まったら――あ、うん。そう、引きちぎれるの、か……?」

「あれっ……蔓ってそういう感じだったか……? 割と、結構、凄く危ないもんだったような……」


ほら、大丈夫じゃない。心配する必要なんてない。

引きちぎっていいとラキに言われて、タクトが一切の遠慮なくぶちぶち千切っている。大丈夫、そんなに千切ったら、枯れちゃわない?

「何なんだよ、この草。なんで俺に巻き付いてくんの?! 鬱陶しいし、甘臭いんだけど!」

もちろん、タクトを養分にしようとしていると思うけど。どうやら蔓自体も甘い匂いがするらしい。

「タクト、実を採ってきて~」

多分、木の有効範囲外だろう藪の中から、ラキがのんびり手を振った。応えたタクトが抱えた実は、タクト自身よりも大きい。

「大きい……これ、デザート? 何個採るの?」

まだ呆然としているリスリスさんに声をかけると、我に返った彼が首を捻った。


「あれは、実を食べるんじゃない。甘い匂いはするが、実は甘くないしな。それにしても、随分デカい……何が入ってるんだ」

「何って、実の中にバリエーションがあるの?」

「ああ、マナナの木はああして……うん、まあ、ああして生き物をおびき寄せて捕らえ、いわば培養液に漬けこんで魔力や養分を得ている。独特の風味と食感になるから、俺らはその培養液を拝借して、肉なんかを漬け込むってわけだ」

なるほど、つまり大物を咥えこんだら、実も大きくなるのかな。中身が程よい魔物だったら、そのまま食材としても使えるらしい。


培養液、と言うからには、もしかしてまだ生きているってこと……?

恐る恐るレーダーの精度を上げて、さあっと血の気が引いた。

「これ、どうやって中身見るんだ? フツーに切っていいのか?」

「ここで切ると、大事な液体が零れるから、持ち帰って――」

呑気にそう話すタクトの元へ、一直線に駆ける。

「ちょ……ひと、ひとぉおお!!」

必死の形相で巨大ウリにしがみついたオレに、彼らはきょとんと瞬いて顔を見合わせた。

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