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817 会場散策

「ユータ! 俺らもカレー食いに行こうぜ!」

居ても立っても居られない、と勢いよく立ち上がったタクトの背中で翼が揺れる。

「カレーは無理だと思うけど……」

「タクトは食べちゃダメでしょ~、いつでも食べられるんだから~!」

不服そうなタクトだけど、他にもお店はいっぱいあるんだし! カレーなら今夜にでもオレが作ればいい話だ。


「僕、会場も見てみたい~!」

「いいけどよ……ブースの従魔を狩るなよ?」

胡乱な視線に、ふふっと返された爽やかな笑みが怖い。

「と、とにかく! 会場を流し見つつお昼ご飯食べに行こう!」

ラピスには、ラキから目を離さないよう言っておかなきゃ。


「わ、これ――やっぱり販売じゃないよね~残念~」

さっきからラキが分身の術を会得したのかという勢いで、方々のショーケースに貼りつきに行っている。割と湯水のようにお金を使っている気がするけれど……大丈夫だろうか。

「あいつ、結構稼いでるから大丈夫だろ」

「人気あるもんね……」

加工師って大抵お抱えだったり工房所属なので、冒険者ギルドで依頼を受ける人は貴重だそう。割とひっきりなしに依頼があるみたいだからね……。


正直、オレたちが見てもなんだか分からない爪や石やら何かの欠片でしかない。ラキは放置してサラっと見回っていると、販売ブースにも大人気の場所があった。

「何だ? 食いモン……は外だもんな」

「人気ある素材? 看板もふもふでもいるのかな」

野次馬根性でチラリと覗いてみて、顔を見合わせた。

「……俺、腹減ってんだけど」

「で、でも……これを放置しては行けなくない?」


こそこそ会話していると、トン、と肩に衝撃があった。

「ククイッ! クイクイッ!!」

突如肩に飛び乗って、必死の形相でオレの服を引っ張る森跳鼠フォリフォリ

み、見つかってしまった……。

「えーと、ルル? シーリアさんはどうしたのかな~なんて……」

「クイクイッ!」

「だよね……どっか行っちゃうに決まってるよね」

なんでシーリアさんこんな魔境に参加してるの。いや、むしろ参加しないはずはないか……。


販売ブースには、シーリアさんお手製の従魔グッズが並んでいて、結構な人気を誇っている。

だけど、この人だかりの意味はと言えば。

「おーい、仮店長さん! これ、受け取って~」

「クイッ!」

キリっと顔を引き締めたルルが、ぴょーんと展示台まで跳んで戻り、お金を受け取ってぺこり。

デレデレするお客さんが、まだまだ列を作っている状況だ。

「……手伝おうか」

「おう……」

オレたちは溜息を吐いて、仮店長の手伝いを始めたのだった。


「あー! 腹減った!!」

シーリアさんのお店でしばらく手伝いをする羽目になり、おかげでラキは戻って来たけれど、お腹の方はそろそろ限界だ。

「ルルごめんごめん! シロちゃんの主人たちもありがとな!」

そう言ってラキに引っ張られてきたシーリアさんは、どうやらシロ待機列に並んでいた模様。またお店にだって行くのに……。

お詫びに、とくれたのは、屋台で買ったらしいサーターアンダーギーみたいなお団子もどき。

紙袋にどっさり入って、色んな色があった。


「これ……お芋?」

「もちっとして甘いね~」

「うわ、でも中身すっぱ! ジャムか? マズくねえけどすっぱい!」

もう中身まで到達したらしいタクトが、きゅんと顔をすぼめていて、とても笑える。

結構なボリュームなので、オレは中身まで到達できるかどうか……。


お団子もどきを食べながら会場外へ出て来てみたけれど、噂通り、ロクサレンカレーは凄いことになっていた。

そのうち略奪でも発生するんじゃないかと心配になるけれど、今居るのはジフを筆頭にロクサレンの料理人。まあ、大抵のことは大丈夫だろう。

ジフに見つからないようこっそり移動して、他の屋台で何か食べ物を調達する――つもりだったのだけど。

「カレーがダメでも、ネコカンはあるんだろ?」

「ユータ、絶対持ってるよね~? 僕もそれがいい~!」

……結局、猫缶とおにぎりを食べることになってしまった。


「こっちがマグロ?で、こっちはカニ、これはお肉系で……これ何だっけ?」

たくさん瓶を並べて、説明する端から手が伸びてくる。

「全部食うから何でもいいぜ!」

「ちょっとずつ食べたい~!」

「じゃあ、ラキとオレが一緒に食べればいいね!」

「で、残ったら俺が食う!」

よし、完璧なフォーメーションだ。

猫缶は一度開けたら食べきらないと腐りやすいし……何となく残ると見た目がアレなので。


生徒ゾンビが群がって来そうなので、なるべく人目のない施設裏の草地で猫缶パーティの開催だ!

オレが選んだのは鳥系アッサリ缶。

ほろろ、と崩れる柔らかな身がぎちっと詰まっていて、だしを使った和風味が最高にごはんに合う。ちなみにコッテリ系や甘辛系なんかもある。

おにぎりと一緒に食べるなら、最初からこれを具として入れてしまうのもいいかもしれない。


「これ、パンには合わないの~?」

多分オレの分は残らないな、という勢いで食べるラキに言われ、考えてみる。

「合うと思うよ! 物によってパンに塗るものを変えると、もっといいかも!」

オレが今食べているアッサリ鳥缶なら、味噌マヨソースなんてどうだろう。甘みを足してもいい。

まぐろチーズ缶はやっぱりハーブバターやチーズかな?


チャトの希望で作った猫缶だけど、案外料理の幅が広がるかもしれない。何せ、調理済みだけどそこからさらに応用できる。

チャーハンや雑炊の具にしたり、炒め物に使ったり、つくねや肉団子に混ぜ込むのもいいかも。お湯に溶かして塩を調整すれば、そのままスープにもなったりして!

今の煮沸&脱気でどのくらい日持ちするか検討できたら、これって割といい発明かもしれない。

広がる夢に思いを馳せつつ、ロクサレンがますます『食』認定されてしまうなと笑ったのだった。


「お腹苦しい……もうちょっと休憩してもいいかな」

だって、猫缶はいっぱい種類があるんだもの。

ごろりと転がったら、ラキの膝がちょうどよくオレの頭を受け止めた。

「俺ら一応警備だけどさあ、こんなに人がいたら大丈夫じゃねえ?」

タクトが座りなおし、うまい具合に日差しが遮られて眉間のシワが取れた。

「まあね~。盗られそうなものはショーケースに入れたもんね~」

ちなみに、会場警備は今もラピスたちが担当中だ。ラピスたちに不審者の選定なんて無理なので、実際盗られてからの対応になるけれど。


一応、罠は仕掛けてある。

もし本当にそんな悪人が来たとしたら、オレたちのブースを……というよりオレのブースを狙うように仕組んでみた。

他の従魔ケージは運び出せないよう、会場でラキが固定してしまっている。だけど、チャトとチュー助、モモケージだけは小型サイズな上に、テーブルへ並べてあるだけだ。さりげなく、は無理だろうけど、持って逃げることはできる。

知らない人が見て、ケージ内にいるのがまさか召喚獣とは思うまい。

チュー助は……まあ、大丈夫だろう。アゲハは炎化して逃げられるし。


気持ちのいい風が、建物の間を抜け、草間を抜けてオレの髪を揺らす。

ここは、静かだ。

離れた場所では、たくさんの人の気配が、声がする。

ごった返す人混みのすぐ脇でこんな風に過ごすなんて、なんだか贅沢だと笑った。

だけど、そんなのんびりタイムは長くは続かない。


「あ! いた!! なあユータ、シロの移送って誰かに頼んだ?」

「え? 頼んでないけど……」

「休憩だって連れて行っちゃったんだけど……ユータ、ブース内の盗難とかは泳がせていいって言ってたろ? これでいいのか?」

オレたちは何とも言えない顔を見合わせた。

……え? シロを?? 

「ラピス……?」

――シロは、警備対象外なの。そういえばいないの。

警備担当からは、あっけらかんと返事が返って来たのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] え~。まさかのシロ盗難。命知らずだなぁ。 誰が犯人?どうなるか楽しみです。
[良い点] まさかのシロちゃん! うーん、お散歩に行ったのかな。 ご機嫌にフェンリルダッシュされちゃったら、手を離し損ねて挽き肉になるか、死ぬ気でしがみついてそのまま一緒に帰ってくるかじゃない??(笑…
[一言] シロは召喚獣だから召喚し直せば問題なし。ただ、シロには知らない人にホイホイついて行かないように説教しないといけないかな。
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