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773 作戦決行!

『準備を整えて、朝方に決行するって言ってたぜ!』

ぽん、と戻って来たチュー助が、声を潜めて言った。中々帰ってこないと思ったら、作戦内容も聞いてきてくれたのか。

ああ、そういえば向こうからオレに連絡する手段がないんだった。

『だからさ、主……大丈夫なのか? ラキとタクトがめちゃくちゃ心配してたぞ!』

「え、そうなの? 二人は心配してないんじゃなかった?」

なんとなく嬉しいような、くすぐったいような。

にまにましていると、チュー助が真剣な顔で首を振る。


『いーや、すっごい不安そうな顔だったぞ! 俺様もそう思う! だって主、いっつも朝起きられないだろ!』

……オレの喜びを返してほしい。

さすがに起きるよ! ちゃんと起こしてくれれば!!

『そうね……ひとまず、起こしたら起きてちょうだい。もう、それでいいわ』

モモが大きなため息をついて、平たくなった。

ちゃんと起こしてね?! そう言われると不安になってくるんだけど!

突入したら寝てたとか、もう目も当てられない。


『不安になるところが、チガウ』

『気にするのは、そこじゃないだろ』

辛辣組に言われて、確かにと頷いた。オレたちはオレたちで、作戦がうまくいくよう考えておかなきゃ。

だけど、明日の朝脱出するよ! なんて言ったら、きっと眠れなくなっちゃうよね。そんな寝不足状態ではかえって危ない。

考えた末、みんなに向き直った。


「ねえ! みんな早起き得意? オレ、明日の朝早起きしたいんだ」

「起こしてあげてもいいけど、早起きしてどうするの?」

クリスティーナさんと数人が頷いている。きっと、この面々は早起きできるんだろう。ナターシャ様が無言で視線を逸らしているのは、見なかったことにすればいいんだろうか。

「えっと、朝ごはんのこととか……あと、何か仲間から連絡があったら困るから!」

連絡はオレからしかできないけども。

だけど、そういうことなら、と約束してくれた。ひとまずオレが起きて朝ごはんだよって言えば、みんな起きるんじゃないだろうか。


日が昇る前くらいに起こしてもらう約束をして、今日は早々に寝ることにした。もしみんなが起きられなくても、オレにはモモたちがいる。

他にオレたちができる準備は――。

そんなことをいくらも考えないうちに、オレの意識は夢の中へ連れ去られていたのだった。



『起きるって、言ったわよね?!』

顔にまふまふと何かが当たって、すごく嫌だ。どこかへやってほしい。

「ねえ、ねえってば。起きるんでしょう?」

ゆさゆさ揺さぶる手も、振り払っても振り払ってもやってくる。

「どうしたら起きるのかしら……」

ほっぺをもみもみと遠慮なく変形させる手も、邪魔になる。

ついにはくすぐりはじめる手が出て来て、オレは床をローリングの末、渋々起き上がった。


「まだ、暗いのに……」

「だって、夜明け前に起こせって言ったじゃない」

「ナターシャ様でさえ起きてるのよ?」

ラキでもタクトでもマリーさんたちでもない声に、ぱちりと瞬いて周囲を見回した。

成人前の子どもばかり、10人はいるだろうか。顔をしかめてそこまで視線を走らせたところで、意識が追いついてきた。


大慌てで笑顔を取り繕って、冷や汗を拭う。

「お、おはよう! それじゃあ朝ごはんにするから、みんなを起こして……」

はたと気が付いた。……みんな起きてる。

「あなたを起こすのに苦労してるうちに、全員起きたわよ」

「結局ユーちゃんが最後ね」

……せめてラキやタクトには内緒にしておこう。ほら見ろって顔をされるに決まっている。

ちょっぴりしょぼくれて朝食のスコーンを配り、飲み物はドライフルーツを入れた紅茶にする。多少香りはたつだろうけど、朝は結構気温が低いし、温かい紅茶にしておいた。


「――注目! 実は、今日早起きしてもらったのは……」

しっかりお腹も膨れて幸せそうな顔を見回し、オレは本日の作戦について話し始めた。

半信半疑だった顔が徐々に真剣に、そして期待と不安に歪む。

「オレも、オレの仲間も強いけど、みんなが人質に取られたり、ばらばらに逃げたりすると大変になっちゃう。だから、固まって行動しようね。だけど、固まってると狙う方も簡単だから……」


オレの提案に、困惑が広がる。ええ? ダメな作戦かな? いい方法だと思ったんだけど。

でもこうしている間にも夜の闇が薄まって来た気がする。迷っている暇はない!

「みんな、急いで!」

せっせとみんなに作戦用小道具を押し付けると、焦るオレに感化されたように慌てて受け取った。


――来たの。アヤシイ馬車が何台かやって来たの!

そうこうするうち、ラピスから連絡が入った。アヤシイとか言わないの、助けに来たんだよ!

さて、大体の人数はレーダーで調べて伝えてあるけれど、どういった作戦でいくんだろうか。

朝方に突入、とは聞いているけれど詳細は知らない。建物内には結構人がいるし、オレたちのいる場所はかなり奥の方。この人数がこっそり抜け出すのは、中々至難の業だ。


「みんな、いつでも行けるように心構えしておこう。準備OK?」

振り返ると、少し戸惑った様子ながら、みんながこくりと頷いた。

しん、と静かな森の一角。

悪人たちも概ね眠っているんだろう。オレたちが息を潜めれば、朝露が落ちる音さえ聞こえてきそうだ。

もしや、ラキたちがこっそり潜入してはいないかと、オレはますます耳をそばだてて――


ドゴン、と派手な音がした。

そして、わめき散らす怒号、打撃音、悲鳴。建物内がにわかに騒々しく目を覚まし、慌てた足音が響く。

一瞬で散り散りに粉砕された静寂に、オレの耳がびりびりしている。

これって……

――見事な正面突破なの! 素晴らしいの!

……やっぱり?! ラピスが大喜びでくるくる回っている。どうしてそんな正々堂々真正面から殴り込みに来ちゃったかな?! 人質っていうかオレたちがいるんですけど?!

『あなたがいるからじゃない?』

『だって主がいるでしょー?』

『あうじが、がんばよねー!』


えええ?! そういうこと? すっかり助け出される気満々だったのに!

慌てたところで、部屋の鍵が開く音がした。思い切り開かれた扉から顔を覗かせた男が、オレたちに視線を向けて、一瞬ぽかんと動きを止める。

と、その姿が掻き消え、鈍い音が響いた。

「ここだろ! ……ほら、見……ろ?」

代わりにいたのは、ラキを小脇に抱えたタクト。口まで塞がれていたラキが、その手を振り払って怒る。

「タクトはいいけど、僕、あんな速度でぶち当たったら結構死ぬんですけど~!!」

「当たってねえからいいだろ! っつうかお前、この状況で他に言うことあるだろ」


タクトがオレたちに指を突きつけ、こちらを向いたラキも間の抜けた顔をする。

二人はタクトの野生の勘に従って、正面突破から一直線に走り抜けてきたらしい。

「二人とも! なんでこんな大騒ぎなの?! もっと慎重に侵入するとかさ!」

「いや無理だって、この人数。なら思いっきり派手に行って入口に人を集めようぜって話になったんだよ。それよりお前、何それ」

「これが、オレの作戦だよ! 二人もはやく!!」

「何で俺まで……」

それこそ、奴らが混乱しているうちに脱出しなくちゃ! 魚群のようにひとまとまりになったオレたちは、さっそく檻を後にしたのだった。


*****


「おい、お前らガキ共を見て来い! 縛って連れてくれば盾にもならぁ!」

すわ、騎士団かと慌てた男たちは、相手が少なくとも騎士団ではないと知って混乱から攻勢に転じ始めていた。次々入口付近の部屋を封鎖し、足止めしつつ奥の部屋へ向かう。

ガキ共を盾に脅せば、うまくいけば馬車や武器まで全部手に入る。舌なめずりした男たちが角を曲がった時、ちょうど向こうの角を曲がった一団と出くわした。

「あっ……そのまま! 大丈夫、行くよ!」


「なっ……?!」

あまりの違和感に、不気味だとすら感じて男たちが後ずさる。

「ほらみろ、場違いすぎて怖がってんじゃねえか」

「そ、それならそれでいいでしょう!」

聞こえた幼い声に、男がハッと我に返って声を張り上げた。

「ガキが逃げてやがるぞ!!」

言うなり手を伸ばして――男の意識は途切れた。


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読みたい方は既にアルファポリスさんで読んで下さっていると思いますが、まだの方はぜひ~!

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― 新着の感想 ―
[一言] 絶対キグルミですやん、久しぶりに腹筋が試されたんですが(笑)
[一言] え~。どんな作戦?凄く気になる・・・。
[一言] 無言になったタクト。何を見たのか、気になる~ 寝る子は育つ! どちらのチビッ子も、頑張れ~
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