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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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603 異国の町

「うわ、わあぁ! すごい! すごいね!」

いつものごとく、感動すると減ってしまうオレの語彙。だけど、それよりもずっとこの顔が感動を伝えられているんじゃないだろうか。

見張り塔に着いた時は、オレたちの土地とあまり変わらないとガッカリしたけれど、ここは違う。

異国だってはっきりと分かる。

何が違うって、まず建物が違う。


「どうして? なんでこんな色々な形をしてるの?!」

建築基準法なんて多分欠片も守っていない建物ばかり。地震どころかオレが押しても崩れるんじゃないかってくらい、いびつな形だったり、思いつきで変形させたような不思議な造形。なんというか、たとえは悪いけど子どもが適当に作った粘土細工みたいだ。

「そう言えば、ヒトの家はどれも似たような形だったわね。どうしてかしら?」

「だって、ちゃんと柱があって丈夫な造りじゃないと崩れちゃうもの」

一緒に首を傾げていたミラゼア様が、ああ、と手を打った。


「それよ! だって私たちは魔法で建物を構築するでしょう? 柱なんていらないわ、頑丈にするなら補強の魔法を使えばいいのよ。崩れそうなら自分で構築し直せばいいわ。さすがに全部は無理だけど、部分的に改築くらいならできるもの」

なんと! それは目から鱗だ。そっかオレがルーの森の中に放置してきた魔王城だって、そこそこの大きさだけど柱なんてなかった。

「じゃあ、気軽にお家を変えられるね!」

「そうだけど、イチから家を建てるにはそれなりにお金がかかるから、そう簡単じゃないわよ。掘っ立て小屋レベルなら簡単だけどね」

そっか、魔族もやっぱり大工さん的な職業のひとがいるらしい。そうだよね、オレだって土壁の簡易ハウスは作れるけど、定住の住処ならプロにお願いしたい。きっと、快適性が全く違うことだろう。


「なんで俺がお子様のお守りを……しかも、いわく付きなヤツを。つくづく、損な役回りってやつだ」

納得して頷いていると、後ろからぐいっとフードの頭を押さえつけられ、何も見えなくなってしまう。

押さえる手をむしり取ってフードをちょっと持ち上げると、背の高い彼を見上げた。いわく付きなんて、そんなわけない。

「だけど、美味しいものを食べられるし、いっぱい観光できるよ! お得物件でしょう?」

「そうよ、こぉんなカワイコちゃんを両手に花状態なのだから、アッゼ様にとって損はないはずです!」

ううん、花は片手だけどね。


「花ぁ? まだ芽だろうに」

ふふんと笑ったアッゼさんに、ミラゼア様がぷくっとむくれた。ミラゼア様、アッゼさんにとってはまだまだ子どもなんだな。扱いが女性へのそれじゃなくて子ども向けだ。

「じゃあ、アッゼ様はパパって呼ぶわ。町では私たち、変装がいるもの!」

「ぱ、ぱぱぁ?!」

アッゼさんが端正な顔を歪めて愕然とする。

「じゃあ、オレはアッゼおじさんにする!」

「おっ?! おじ、おじ……?!」

別に、不自然ではないでしょう? だって『パパ』は、とっておきだから。


「ねえ、とにかく! 行こっ!!」

ぱっと大きな手を取って走り出す。もう我慢できなかった。

「そうね! まずはどこを見せようかしら!」

すかさず反対側の腕をとって走り出したミラゼア様。

オレたちは茫然自失のアッゼさんを引きずる勢いで町の雑踏へと飛び込んでいったのだった。



「あっ! この、光ってるの王都で見たことある! もしかしてこれ、魔道具屋さん?」

そう、王都で入った魔道具店『ヘルパイトス』と同じだ。黒い建物に星が浮かぶようにきらめいている。ただ、建物は四角じゃなくて丸みを帯びていたけれど。

「そうよ! 王都の方じゃないから、あんまり珍しいのは置いてないけど、見てく?」

もちろん! 買うのは無理だけど、ラキへの土産話になるもの。


「わっ? これなに?!」

店内に入った途端、煙のようなものがまとわりついてきた。かと思えば真っ白に輝いて眩しいくらい。

「そうだろうと思ったけどさ、お前俺と同じくらい魔力量あるのな」

「白なんてすごいわ! さすがユータちゃんね! 魔ぞっ……高位星持ちになれるレベルよ!」

2人にも煙はまとわりついて、アッゼさんはオレと同じように白く、ミラゼア様は緑に輝いていた。


これは、どうやら防犯と客の識別を兼ねた魔力感知システムらしい。

魔力量によって輝きの色が変わるそうで、白が最も高い。ちなみに魔力なしだと光らない。

魔族は魔力が多いと星持ちである可能性が高いので、それで対応を変える店もあるそうな。魔法使いでもないヒト族なんかだと暗い色になることが多いらしく、タクトを連れてきていたら危なかったかもと胸を撫で下ろした。あれだけ魔法剣を使えるなら、案外魔法使い程度の魔力にはなっているのかもしれないけれど。


煙によるチェックを受けてから改めて見回した店内は、オレにとってさほど目新しい感じはない。『ヘルパイトス』ほど高級感溢れるわけでなく、かといって街中の魔道具店ほど雑多でもない感じだ。

「あ! 収納袋!」

買わない、安くても買わない、と深呼吸してから覗いたお値段は、やっぱり金貨が3桁の枚数必要な代物でかえって安心した。ただし、性能は格段にこちらの方が上だったけれど。


「そうだ、ねえア……ッゼおじさん! 前にマリーさんに渡したガントレット、アッゼおじさんが効果をつけたとか何とか言ってなかった?」

呼び名が不服らしかったアッゼおじさんだけど、マリーさんの名を出した途端に相好を崩して語り出した。

「もちろんだぜ! 愛しのマリーちゃんのため、アッゼ様の強力な魔力を込めたってわけだ。もちろん、彼女への愛情の方が魔力よりも強力に勝るわけだけど、戦闘時に身につけるガントレットへ想いを、魔力を込めることでその身の安全を何より祈って――」

長そうなのでそっとしておいて、ミラゼア様の方へ振り返る。

「ミラゼア様、魔力ってどうやって込めるの?」

「うーん、それってそんなに一般的じゃないと思うわよ。普通はお店でやってもらうものだから。アッゼ様ほどの魔力もちだからこそね。ほら、あれね」


指さしたのは、色とりどりの大きめの魔石だろうか。

「魔石に込めるだけ?」

ああ、オレも光らせる魔法を込めたりしたことはあったっけ。だけど、それって発動しっぱなしで一時的なものでしかなかったけれど。

「魔石には違いないんだけど、これは既に魔道具の一種なの。取り込んだ魔法を安定、固定化して装具に付与するためのものよ。これは既に様々な魔法が込められてあるわ」

「へえ……!」

面白いね! 好きな魔石を選んではめ込めば、セミオーダー的なものが出来上がるってわけか。これ、ラキが喜びそうだ。

ちらりとお値段を見て、そっと離れる。

収納袋ほどじゃなかった。だけど、金貨がいる。あんな大きさの魔石に支払える額じゃない。ルーのブラシスペアがいくつも買えてしまう。


「ユータちゃん、あれが欲しかったの? 魔石があれば加工できるわよ? 中身が入ってないけど」

「そ! それ欲しい! 中身入ってなくていいよ、入ってない方がきっと喜ぶと思う」

聞くに、あのラキと熱烈な談義を交わしていた彼が、加工できるとのこと。これはいいことを聞いた。彼らが王都に行ってしまう前に、ぜひお願いしなくては。


婚約破棄もの(?)思わぬランキングまで上がってビックリでした。

続き、書きました~

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