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54 ブラッシングのために

 

 ブルのブラッシング、ちょっと体がぎしぎしするぐらい大変だったけど・・久しぶりで楽しかった。

大きめの生き物をブラッシング、やりたいなぁ。できればもうちょっと毛の長い生き物がいいな。

あ・・でもオレ、ブラシ持ってないなぁ・・。

今までカロルス様が不自由なく養ってくれているおかげで、何か買いたいと思うことはなかったけれど、そうだなぁ・・・この先色々ほしいものって出てきそうだ。そもそも、これから学校行くようになったら、色々と入り用になるだろう。きっとカロルス様は全て用意してくれようとしているのだろうけど、できることならオレも自分で何かしたいな。そして自分の趣味のものは自分で買いたいよ。


冒険者か・・8歳にならないとダメなんだよね・・。

ぱらりぱらりと『冒険者の心得』を読みながら考える。冒険者だったら、街のお手伝いとか、薬草集めとかお小遣い稼ぎできるんだけど・・。まぁそもそもヤクス村には冒険者ギルドがないので、ここで何か依頼を受けることはできないんだけどね。

冒険者にも飛び級みたいな制度はないのかなぁ・・・。




「飛び級・・・なんだそれ。」

ルーはぐてっと横になったまま、目を閉じて興味なさげに尋ねる。

「飛び級はね、本当は入学は6歳からなんだけど、学校でやっていける力があればもっと小さくても入れるし、学年を飛ばして進級できるってこと。冒険者は8歳からなんだ・・オレまだ、に・・・3歳なの。」

「・・すぐじゃねーか。」

「すぐじゃないよ!あと5年もあるんだよ?!」

「5年や10年なんざ寝てたら過ぎるだろ。」

「そんなわけないよ!人間は10年あれば別人みたいになってるよ!」

「くあああ・・・大体、そんなチビで冒険者になってどーすんだよ。」


大きなあくびをする獣。するすると撫でる手は止めずに、よくぞ聞いてくれました!と勢い込んで答える。

「それがね!オレ、ルーのブラッシングしたいなと思ったの!ね、いいブラシ・・欲しくない?」


ゆったりと揺れていたしっぽがぴくり、とした。揺れるしっぽを興味深げに見つめていたティアも、つられてぴくり、とした。


「・・・・・・べつに。」

ちょっとふて腐れたような声。

「・・大体ブラシと冒険者になんの関係があんだよ。」

「オレ、お金もってないもん。お小遣い稼ぎできたらいいなと思って。」

「はっ、金なら冒険者じゃなくても稼げるだろうが。」

「え?どうやって?」

「冒険者登録は依頼を受けるのに必要だが、素材を売るのに登録はいらんだろ。てめーいくらでも素材とってこれるだろうが。まあ、今の冒険者が昔と同じとは限らねーけどな。」

「えっ・・・!そっか・・!そうなんだ!!じゃあ、依頼がありそうな薬草とか木の実とか、そんなの集めて行ったら買い取ってくれるかもしれないんだ!」


ルーって結構人間のことよく知ってるんだね。愚痴って・・・いや、相談して良かった!

オレは目の前が明るくなった気がした。コツコツお小遣い貯めて、お買い物してみたいな!カロルス様たちに、なにかお礼とかできたらいいな!お菓子の材料とか探すのもいいかもしれない。

でも、まずは・・・

「もしそれでお金を貯められたら、一番最初にルーのブラシを買うからね!」

「・・・そうか。」


そんなものいらん、って言わないんだね・・。これはよっぽど楽しみにしてるやつだ。気合い入れて頑張らなきゃ!

むん!と両手で握り拳を作ると立ち上がる。

「ルー、ありがと!また来るね!!」

「きゅ!」「ピ!」

「・・・・」

ルーは振り向きもせずにしっぽをぱたんぱたんとさせた。



「素材を売りたい?」

「うん!あのね、冒険者になるまではまだまだかかるでしょ?でも、素材なら冒険者じゃなくても売れるってルーが・・あっ・・。」

「お前・・・一人で森にいったのか・・。」

「ご、ごめんなさい・・。でも、ルーのいるところに行っただけなの・・。」

「はぁ~・・お前ってヤツは!全く・・行くなっつーのも黙って行きそうでむしろ怖いわ。今度からどこに行くのでもちゃんと言ってからにしてくれ・・。」

「はい・・。」

「・・・で?素材を売りたいってどういうことだ?」

「うん!あのね、オレ、お買い物したりしたいなって思ったの。」

「うん?何が欲しいんだ?俺に言えばよかろう?それとも小遣いがいるか?」

「ううん!えっとね、自分でちゃんとお金を貯めて買いたいの。」

「お前・・・それは幼児が言うセリフじゃないぞ。」

「うっ・・で、でもね、元いた所では自分で採った草を売ったりしてたの。」

「どんな国だよ・・・お前のいた国は発展してんのかしてねーのか分からんな・・。」


嘘は言ってないよ・・山菜を売ってお小遣い稼ぎしたりしてたからね。幼児ではなかったけども。

なんだか旗色が悪いな・・ダメなんだろうか・・勝手にお金を稼ぐのも気が引けるし。


「だめ・・?」

「あー・・だめっつう理由もないんだがな・・厄介なことが起こる気がしてならん。」


うう・・そう言われるとどうにも・・。

「それにこの村で素材売る場所なんてないぞ。・・・お前、どこで売るつもりだったんだ?」

ギクッ・・それはその・・ラピスに連れてってもらって・・・ハイカリクやガッターあたりで・・・。

視線をさ迷わせる俺は、ジトっとした目で睨まれる。


「絶対よからぬことを考えていたな。あーーもうお前が勝手に何かするぐらいなら決め事を作って許可した方がマシだな。」


協議の末・・・


・素材を入手したらカロルス様に見せる。

・基本的にはロクサレン家が保管し、行商が来た時や町に行った際に売却する。

・危険なことはしない。

・一人でヤクス村以外の村や街に行かない。

・禁止事項でも、どうしてもやりたいことがあれば、まず相談する。


概ねこんな内容が決められた。

うーんこれだと薬草みたいな鮮度のあるものはやめておいた方がいいのかな。


「フェアリーサークルで、どこなら行っていいの?」

「まあ・・・神獣のところならいいぞ。それ以外は人がいるだろう?見られるとマズいからダメだ。ここにいるはずのお前を他の街で見かけるのもおかしいだろう。」


確かにね・・車も飛行機もないし、半日以上掛かる所で見かけられたらオバケの類いかと思われそうだ。


「移動する魔法ってないの?」

「転移か?なくはない・・が、素質のあるものが少ないからな。転送師として大概王家かそれに連なるような大貴族のお抱えだ。転送師はそれだけで贅沢して食っていけるからなぁ、それしか使えんヤツが多いぞ。ああ、大きな街には転移魔法陣もあるが、一般人が簡単に使えるものではないな。」


そうなんだ・・・なんだか、魔法ってすごく細かく分類されてるみたいだね・・・全部『魔法』なのにひっくるめて『魔法使い』にはならないんだ・・ややこしい。

色々使える人ってホントに少ないんだね。もしくは使えるはずだけど使えないと思い込んでるんじゃないかな?


何にしても、これでオレはお小遣い稼ぎの道を開くことが出来たぞ!あとは・・村とルーのところで何を集められるかだなぁ・・。




読んでいただきありがとうございます!


もう年末ですね・・・世間はお休み・・皆様はいかがお過ごしでしょうか。

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