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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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572 再びの邂逅

「モモ! 大丈夫?! 他の子は……」

魔族の子たちが地下壕付近で身を寄せ合っているのを確認し、ひとまず安堵する。

この騒ぎでもお嬢様の意識は戻っていないみたい。やっぱり魔力が回復するまでは難しいだろうに、オレが渡すお薬なんて飲ませてはくれないもの。


『大丈夫よ、今はね!!』

ぽんと腕の中へ飛び込んできたモモが、くたりと扁平になった。

「ありがとう……良かった、モモがいて」

『どういたしまして。だけど、ずっとはもたないわ。全く、特訓に付き合ってくれたバルケリオス様に感謝ね! 男の人の方で良かったわ。あの女の人だったら今の私でも無理よ』

付き合っていたのはモモの方だと思うけど、結果オーライだ。


オレはキッとシールドの向こうを睨み付ける。どうして、こう何度も遭遇するのだろう。もし、もしあの女の人もいたら……絶対に勝てない。

舞い上がった土煙の向こうで、空気を切り裂く鋭い音がする。視界の端々に赤い稲妻が走った。


マシンガンもかくやという管狐部隊の魔法乱れ打ちに、土煙の収まる気配がない。一点突破するつもりがあるのかどうか、四方八方で派手な破壊音が響き渡った。

緊迫する戦闘の中、ラピスの声が響く。

――ぴよっこが! そんな大ぶりで当たるわけないの! 


がくぅ。

脳裏に『ピヨ?』と小首を傾げるひよこが浮かんで、膝の力が抜けた。

違う……ほんの些細な違いだけど圧倒的に違う……。啖呵は間違うとすごく、すごく……残念。

だけど、そんな啖呵が切れるくらい相手との相性は悪くない。そりゃあ、鞭であの小さなラピス部隊を狙うなんて無理な話だ。


「なんだ、アイツ……? こいつらを狙ってんのか?!」

アッゼさんが魔族の子たちを視界に収め、シールドの向こうへ鋭い視線をやった。

「わかんない……! だけど、前は子どもを攫って魔力を――そうか、魔力を奪うためかも!」

魔族の子なら、普通のヒトの子よりもずっと魔力が高い。その分、リスクも段違いだろうけど。

「魔族の子を、攫う……?」

紫の瞳に、見たことのない冷たい炎が灯る。思わずぞくりと怖気が走って、歯を食いしばった。

ハッとしたアッゼさんが、目を閉じて深呼吸する。

開いた瞳はいつものように落ち着いた深い色をたたえ、軽い調子でへらりと笑った。


ぽん、とオレの頭に手を置いてから、彼は警戒心丸出しで身構える子どもたちへ歩み寄っていく。

「よう、ちびっ子たち。お前らなんでこんな所にいるんだ?」

注目を促すように流した髪をかき上げ、戦闘音などないもののように気の抜けた笑みを浮かべる。

「ま、ぞく……!」

「おう、生粋の5つ星魔族さんだぜ? お前らがワルイ子じゃなければ、星の助けってやつだ」

「5つ、星……?!」

目を見開いた少年たちが、へたりと座り込んだ。紫の瞳にみる間に涙が盛り上がり、ほろほろとあふれ出していく。

ああ、どれほど不安で心細かったろうか。知らず、オレの目にも涙が浮かんだ。


「ちびっ子のくせに、よく頑張ったじゃねえか。ここからはオトナのアッゼさんに任せな? それと、あっちのオムツが外れたばっかりのちびっ子。あれな、常識外のトンデモ仕様だから、頼って大丈夫だぞ」

……あんまりな言いように倍ほどに頬を膨らませてふて腐れたものの、こちらへ向けられた視線にこくりと頷いてみせる。

「それで、襲ってきたあの男は――」


『ゆーた!! 大丈夫?!』

「え、シロ?」

突然の声に驚いた直後、シールド内へ白銀の閃光が滑り込んできた。

「うおおぉ?!」

射出される勢いでその背中からはじき出され、タクトは空中でくるっと回って木を足がかりに着地を決める。

その両脇にラキと少年が抱えられているのを見て、ホッと胸を撫で下ろした。

「シロ、どうしたの?」

『良かった。あの赤い鞭の人のニオイがしたから、来ちゃったんだ。みんなを置いていくのも危ないと思って連れてきちゃった……ごめんね』


シロはぺたりと耳を伏せ、鼻を鳴らして垂れたしっぽを揺らした。置いていくのも、連れて行くのも危険。逡巡した末に、堪らず駆けつけたらしいシロをそっと撫でた。

少年は魔族の子たちがいる所にいた方がいいだろうし、まとまっている方が守りやすい。結果的にこれで良かったと思う。

「あ~~~死ぬかと思った~。……知り合い?」

やっと声を出せるようになったらしいラキが、ふらふらしながら立ち上がった。少年の方はまだ目を回して座り込んでいる。ちらりとアッゼさんに走らせた視線に、にっこり笑ってみせた。

「うん! へたれで情けないけど強いんだよ!」

「お前っ! 前半の紹介はなんで必要だと思ったんだ?!」

ほっぺを引っぱられながら、不敵に笑う。これでおあいこだよ。


「ミ、ミラゼア、様っ?!」

連れてきた少年が、よたよたと覚束ない足取りで仲間の元へ駆け寄った。

「リンゼ?! 生きていたのか!」

「そんなことよりっ……」

輪の中心で守られた彼女は、ミラゼア様というらしい。

「大丈夫、魔力が切れただけだ。いくらミラゼア様でも、無茶がすぎる」

ミラゼア様の無事を確かめ、リンゼと呼ばれた少年はホッと安堵の表情を見せた。


「ミラゼア、リンゼ……じゃあ、ジノア、メルデル、ガーノ……なんかもいるってわけ?」

ビクッと肩を震わせ、少年たちが一斉にアッゼさんを見上げた。

「アッゼさん、知ってるの?」

「知らねえ~。けど、名前は有名だからなあ。そうだろ? 防衛一族の優秀なお子様方?」

視線を逸らせたのは、肯定の証だろう。


『ユータ、のんびりしてないでラピスを止めないと、森が丸坊主になるわよ!』

ラピス部隊の猛攻のおかげで時間が取れたものの、さっきから轟く地響きは留まることを知らない。だけど、今止めるとモモのシールドへ攻撃再開されてしまう。

――ユータ、やっぱり変なの! すぐに元通りになるの!

優勢だと思っていたラピスから、悔しげな声が届いた。元通り……やっぱり、強力な回復手段を持っているってことだろうか。


風を切る鞭の音が止み、土煙が消えていく。油断なく取り囲んだラピス部隊とのしばしのにらみ合いの最中、射殺さんばかりの赤い瞳がオレを捉えた。

「――鬱陶しい!! なんでてめえがそこにいる! 忌々しい、忌々しいガキが!」


火を吐くような台詞にも、もう、怖がったりしない。オレは腹に力を入れ、負けじとにらみ返した。

随分な血濡れのボロをまとっているけれど、のぞく肌に傷はない。負けないけど、勝てない。大雑把なラピス部隊の攻撃では回復されてしまい、膠着状態にあるようだ。

だけど、この子たちを逃がすだけの時間を稼げれば……!!


「ねえアッゼさん! この子たちを連れて逃げられる?」

オレの台詞に、彼らが目を見張ってアッゼさんを見つめた。

「全員いっぺんには、さすがのアッゼさんも無理だ。それより……お前ら、あの男のことを知ってるのか? コトと次第によっちゃあ逃げるよりも――」


細い縦の瞳孔がさらに細くなり、不穏な気配が漂う。

「知ってる!」

睨み付けるようにアッゼさんを見据え、リンゼが声をあげた。

「あいつだ。あいつが、魔物に村を襲わせようとした! あの魔晶石、きっとあいつが持ってる……早くなんとかしないと、凄い数の魔物が集まって来てるんだ!」

既に魔晶石を浄化したと知らないリンゼが、アッゼさんと仲間へ必死に訴えかけている。

村を襲わせる……? 村人を攫うではなく? それでは魔力を集める目的にそぐわない。引っかかりを覚えて、眉根を寄せた。


「……へえ? ユータが言ってた魔晶石は、あいつが? ひとまず、敵ってことで間違いねえな。もし、攫ったのがお前なら……」

ぱ、と電気を消したようにアッゼさんの姿が消え、ドォンと派手な音が響いた。

「……覚悟することだな」

アッゼさんは、さっきまで彼が立っていた場所にいた。

密着にも等しい距離からの攻撃魔法は、ひとたまりもなくあの男を吹っ飛ばしていた。


もふしら10巻、発売されましたね!!

諸々で浮かれてすっかり更新日を飛ばしてしまったひつじのはねです。すみません!


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めっちゃ可愛いんですよ!!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「あ~~~死ぬかと思った~。……知り合い?」 ラキは553話でアッゼさんと邂逅済みなのですが、アッゼさんのことを覚えてなかったってことなのでしょうか?
2022/08/12 03:57 退会済み
管理
[一言] 一体誰なのか分かりにくかったですが、結構前の話に出てきた、赤いムチの男ですね?ミックやミーナと出会ったのは、その時だったと思いましたが。 歴史の陰で暗躍する、邪悪な宗教団体の構成員かなんかで…
[気になる点] >>男の人の方で良かったわ。あの女の人だったら今の私でも無理よ 誰?
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