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53 ブラッシング


拙い駆け足でたどり着いたのは・・牛舎?

うーん中にいるのは牛ではないけど、牛っぽい扱いをされている動物(?)で、レッドバックブルっていう種類。

見た目も牛っぽいけど、オスもメスも猛々しいツノがある。


「ここ!ここでおしごとするの。」

トトが得意げに巨大なフォークみたいなものを引きずってくる。どうやらこれでまき散らかされた飼い葉のようなものをかき集めるらしい。オレとトトが飼い葉集めをして、リリアとキャロは二人がかりで桶に水を注いでいる。

こんな小さいうちからちゃんと手伝ってるんだなあ・・偉いな。


「トト、もうお仕事できるの、えらいね!」

「うん!トト、頑張ってるの!」


「えートトはいつも遊んでるよ~?」

「手伝ってるの今日しか見たことないんですけど?」


二人がぶつくさ言っている。

ふふ、トトは今日張り切ってるんだね。



「ねえねえ、気になってたんだけどその鳥なに?ほんもの?」

「わっ!ホントだ~!おとなしい~!キャロ気づかなかったよ・・。」

「えっ?とりさん?」


「ティアはおとなしいの。かわいいよ?」

「ピピッ!」


「わあ~さわりたい!」

「ティア、さわってもいい?」

「ピッ!」


どーぞ!とオレの手のひらまで下りてきたティアが胸を張る。

「わあ・・・小さい!」

「あったかいね!」

「ふわふわ・・。」


小鳥を触れる機会なんてそうそうないもんね、みんな嬉しそうだ・・ティアありがとう。ちなみに村に出る時、ラピスとアリスは帰っているか上空に隠れている。


「いいなあ・・かわいいわ~!私もペット飼いたい!」

「ブルがいっぱいいるよ?」

「ブルはかわいくないわ!私より大きいもの。」


そうかな?ブルも見慣れるとかわいいよ?

あ、でもあんまりかわいがると・・・・きっと食用もいるから良くないかも知れない・・。



「みんな、ありがとね~!・・・あら?一人増えたわね?」

「ママ!」


リリアは、手を振りながらやってきた妙齢の女性に飛び付いた。あらら、普段はお姉さん風吹かせてるけど、こうして見るとまだまだ子どもなんだなぁ。


「ママ、この子がユータよ!」

「こんにちは!領主さまのとこで、おせわになってます。ユータです。」

「ピピッ!」


「まあ!小さいのに随分しっかりしてるのねぇ・・やっぱり育ちが違うのかしら!」

「ママ、ユータはちょっと変だから!」


変って・・ヒドイよリリア・・。


「こらこら、ヤキモチやかないの。ほら、頑張ってくれたみんなでオヤツを食べましょうね、仲良く食べるのよ?」

バスケットの中には薄くスライスされたパン?あ、ほんのり甘い。固いパンもこうやってスライスすれば子どもも食べやすいんだね。

「甘くておいしい~!私これ好き!」

「おいし~。」

「ぼくも好き!」


チクチクと短い草の生えた地面にぺたりと座って、みんなでオヤツを頬ばる。ちょっとばかり牛舎の独特なニオイが気にならないでもないけど、さやさやと吹く風にぽかぽかと暖かい日差し・・贅沢な時間だな。


リリアのお母さんは牛舎の中でお仕事中だ。食べ終わったオレは手と服をパンパンと叩いて立ち上がる。

「オレ、お仕事見てくる!」

「なにも珍しいものはないわよ~?」

「キャロはまだ食べる!」

「ぼくも!」


みんながオヤツの奪い合いをする中、一人牛舎の中を覗き込む。リリアのお母さんはせっせとブルにブラシをかけていた。

「あらっ?もういいの?」

「うん!オレ、こっちがいい。」

「うふふ、貴族様だったらこういうのも珍しいのかしら?」

やってみる?と言われて、オレは二つ返事で頷いた。


「わあ・・」

間近で見るブルはとても大きくて、触れるとすべすべした固く短い毛と、熱いほどの体温が伝わってくる。

「こうやってブラッシングしてあげると、いいお乳を出してくれるのよ。お尻の方へ行かないでね、ブルは大人しいけど、怖がって蹴飛ばすかもしれないわ。」

そう言いながら柔らかいブラシで撫でるように上から下へ。うーん、オレの背丈で届くのは足くらいだ・・隅にあった脚立を持ってくると、よじ登って見よう見まねのブラッシングをする。

オレからすると小山のような体躯だが、本当に大人しい。オレは地球でもブラッシングするのが結構好きだったんだ。特に、お日様でぽかぽかになった毛並みを丹念にブラッシングするのはとても気持ちいい。やり終わった後の艶やかな毛並みも堪らない。

気持ちいいのかな?ブルはされるがままでじっとしている。ルーと似たサイズかもしれない・・ブラッシング、ルーにもやりたいな!あのふわふわした柔らかい毛並みをブラッシングするのは、さぞかし心地いいだろう。

ルーを想像しながら大きなブルの全身をブラッシングしていく。結構力もいるし大変な作業だ・・リリアのお母さんは一人でこれをするのか・・・大変だな。


「ユーター!まだやってるの?」

「あそぼ~?」

「あっちいこ!」


「ちょっとまってね!」

子ども達がオレを呼びに来たので、急いで仕上げてしまおう。

上から下へ、全身を使った作業はなかなかハードだったけど、ツヤツヤの毛並みのブルを見たら、苦労も吹き飛ぶ素晴らしい達成感だ。うんうんと満足して眺めていると、トトがしびれを切らして手を引っ張った。


「あっちいこ!!」

「う・・うん、あの、ありがとうございましたー!」

「はーい!こちらこそお手伝いありがとうね~!」

これからも時々来てお手伝いしようかな。邪魔にならないなら、また頼んでみよう。


オレの手をぐいぐい引っ張ってとてとて走る3歳児・・いやオレも3歳児(仮)か。

今度はどこへ行くのかな?





オレは幼児の体力を見くびっていたようだ・・・。

あの後、彼のお気に入りの場所を散々に連れ回されて、結構くたくただ・・トトも加護持ちだったりしない?あっちへこっちへ思うがままに行動する様は、まるでチョウチョみたいだなと思った。

姉組二人は村道脇の木陰でおしゃべりに夢中になっている。太陽は真上あたり・・そろそろお昼ごはんだから帰らないといけないな。


「ねえトト、もうお昼ご飯じゃない?」

「トト、まだ遊ぶ!」


ぶんぶん、と首を振るトトだけど・・

「あら?ホントだ、お日様が見張り塔の上よ!帰らなくちゃ!」

「トト、行くよ~!ママに怒られるよ?」


渋々手を引かれていくトトにまたね、と声をかけると、オレもきびすを返して走って行く。

今日のお昼はなんだろう?そうだ、午後からはルーの所へ行こうかな?



-----------------


さて、残るはあと1頭ね!リリアの母は、ふう、と額の汗を拭うと、最後の一頭をブラッシングしようと顔を上げた。


「・・あ、あら?」


最後の一頭は明らかにツヤツヤの毛並みで母を見つめ返した。どうです?この毛並み。そう言わんばかりの得意げな顔ですこぶる機嫌が良い。


「どうして・・・・??」

「ママー!もうお昼よー!」


首を傾げていると、リリアが牛舎に戻ってきた。

「ん?どうしたの?」

「いえ・・なんだかこの子、随分ときれいになってるのよ。」

「あー、この子ユータがした子だ!言ったでしょ?ユータって変なのよ!」

「え?あの子が?一人で??」

「うん!全部やってたよ?ユータっておかしいのよ!大人みたいにお話ししたり、自分でカゴを作ったりするのよ!」

「で・・でも、ブラッシングはすごく力と体力がいるのだけど・・・・?」

「いいの!ユータだから!!ね、早く行こうよ~もう終ったんでしょ?」

「え・・?ええ・・・。」


・・・今度、また頼んでみようかしら・・・?

リリアの母は不思議に思いつつ、ちゃっかりそんなことを考えるのだった。







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