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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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503 秘密の場所

「結局あれ、なんだったんだろう」

テンチョーさんたちと合流すると、オレたちは一旦山を下りた。

村で事情を説明すると、ギルドへ使いを出してくれるらしい。もうすぐ暗くなることもあり、オレたちもギルドの指示待ちでゆっくりと休むことになった。テンチョーさんに追い立てられるように早々にお布団に入ったものの、目が冴えて眠れそうにない。


魔物はどうしておくのが正解か分からなかったけれど、テンチョーさんたちもしっかり目撃しているわけだし、下手に隠さず放置してきた。正直、収納に隠してしまおうかと思ったけれど。

「新種のアリゲールじゃねえの?」

あんな怖い新種がほいほい生まれると困る。それに――

オレは収納からいびつな黒い結晶を取り出した。これだけは、もし悪影響があったら困ると思って持って帰ってきたんだ。


「それが、魔寄せの結晶なんだろ?」

ごろりと寝返りを打ったタクトが、結晶を覗き込んだ。

「うん、前も同じのを見たことがあるんだ。多分呪晶石で間違いないと思う」

嫌な気配は魔物の内側からだった。案の定体内にあったこれは、浄化を終えて、ただ煌めいている。

「だけど~、呪晶石って魔石とくっつくものなのかな~」

ラキも横から手を伸ばして結晶に触れた。

いびつな呪晶石は、魔石と融合したようにも、魔石になり代わったようにも見える。魔物は呪晶石に引き寄せられて集まって来るけれど、もしかしてこうして体内に取り込んだりするのだろうか。

「くっつくかどうかは知らないが、あの魔物が呪晶石を取り込んでいたなら、納得だ」

「えっ? どうして?」

半身を起こしたオレを再び布団に沈め、アレックスさんが苦笑した。

「呪晶石って貴重なお宝だけど、割と危ないものなんだぞ? 魔物が取り込んじまったら、格段に強くなる。集まって来た魔物を食い尽くすから、なおさら強くなるんだってさ!」

オレの脳裏には、『蠱毒』なんて言葉がよぎる。喰らい合って残った最後の1匹が、あの魔物だったんだろうか。

嫌な気配こそすれ、半ば魔石と融合した呪晶石には、もう魔寄せの効果はないようだった。

以前、学校での実地訓練で魔寄せアイテムによるトラブルがあった。あの時も、もしかするとこんな風に強力な魔物が生まれていたのかも知れない。


「あまり考えるな、余計目が冴える。お前達はよくやった。いいからもう休むんだ」

大きな手がオレの顔を覆った。本当に、お父さんみたい。

「はぁい、パパ」

くすくす笑うと、テンチョーさんは投げやりにオレの布団をぽんぽんとやった。

隣からは既にタクトの寝息が聞こえる。規則正しい健やかな呼吸は、みるみるオレも眠りへと誘い出していった。



「なんかさ、冒険者って感じの二日間だったよな!」

タクトがきらきらとした笑顔で汗を拭った。

「僕、冒険者はもうお腹いっぱいだよ~」

オレも、もう十分。おかわりは結構だ。

今日は朝から到着した数人のギルド員と共に、また山を登ってきた。魔物の骸は昨日と同じように横たわっていたけれど、昨日よりも随分と損傷が増えていた。

どんなに強い魔物でも、骸となれば他の生き物の養分となる。まざまざと感じるそれは、悲しいような、救われるような――。

オレはギルド員と村人の手で解体される魔物を、ただじっと眺めていた。


これで役目が終わりかと思いきや、解体した魔物を手分けして村まで運び、今度は川の下流からさかのぼってバラナス討伐。低い山とは言え、1日のうちに何度も往復するものじゃないと思う。

タクトはどこかスッキリした顔をしているけれど、オレとラキはもうぐったりだ。段々とギルド員の前で実力を誤魔化すのも面倒になって、割とガツガツ倒してしまった。


「つかれたよ……」

ある程度のバラナスを討伐し、上流へ追い立てたところで任務終了。オレたちの依頼も完了だ。面倒な手続きややり取りは全部テンチョーさんとアレックスさんにお任せで、オレは洗濯物のようにべったりとシロの背中に寝そべって脱力している。

――ラピスたちに任せたらすぐに終わったの。

そうかもしれないけど、ギルドの人がいたし、村人たちの大事な川だもの。勝手に地形を変えるわけにはいかない。

もう1日村に泊ってから帰ろうと話がまとまった所で、オレはてっきり村の家へ向かっていると思っていた。

「――ところで、どこに向かってんの?」

タクトの不思議そうな声に顔を上げると、いつの間にやら村から随分と離れて平原を歩いていた。

「お前たちに見せようと思ってな。まだ少し歩くから、シロに頼んでもいいだろうか?」

「うん、シロ車だね!」

テンチョーさんたちの誘導に従って走ることしばし、オレたちはシロ車から降りて、また山の中に足を踏み入れていた。

もちろん、今日往復していた山ではないけれど、もうしばらく上り坂も下り坂もいらない気分だ。


「ほーら、あそこに行くぞ!」

やがて見えてきた川に、さらに既視感を募らせる。川と山、しばらくはもう行かなくていいかな。

「大丈夫だ、もうすぐそこだ」

苦笑したテンチョーさんが指さしたのは、川の向こう岸。だけど、向こう岸はごつごつと岩肌がむき出しになった山肌で、何があるわけでもない。

「なんか、大変なことになっちゃったけどさー、元々これを見せたかったんだよね」

どれを? 不審げなオレたちの視線に、テンチョーさんとアレックスさんが微笑んで頷き合った。


「うわぁ、こんな所から入れるんだ!」

「そうだろう、アレックスが川に落ちなければ見つけられなかった場所だ」

「ちょ、テンチョー! それ言う必要あった?!」

オレたちは岩の隙間から滑り込むように山肌内部へと入り込んでいた。

テンチョーさんの氷魔法で橋を渡した先にあったのは、ささやかな亀裂。大きな岩が目隠しとなり、対岸から見えなかったけれど、そこにはオレたちがなんとか通り抜けられるだけの隙間があった。

「綺麗~! 秘密の洞窟だね~!」

大きな木の根が所々壁から覗き、ほのかに光を帯びた苔や鉱石が光源を確保する。オレたちが見つめる先には、こんこんと湧いた小さな小さな泉があった。

水たまりと言ってもいいほどの小さな泉は、底から光が湧いてくるようだった。

「ここは、なに? すごいね……」

洞窟特有の淀んだ空気が微塵も感じられない。オレは胸いっぱいにしっとりした空気を吸い込んだ。疲れた身体がふんわり軽くなったような気さえする。


「ここを、お前たちに引き継ごうと思ってな」

「引き継ぐ?」

揺れる光を瞳に宿し、オレはことんと首を傾げた。

「そ、ここはさ、特別な場所ってわけ。そりゃ、俺たちにとっての大事な場所なんだけどさ、俺たち以外にとっても大事な場所だったみたいでね」

ちょいちょいと手招きされ、オレたちは狭い洞窟内の岩陰に身を隠すように座り込んだ。




力尽きました…



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― 新着の感想 ―
[一言] カロルス「俺だってパパって呼ばれたこと無いのに……」
[一言] お疲れ様ですm(*_ _)m みんなもお疲れ様ですm(*_ _)m 最後にご褒美!
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