447 ほどよく防衛
「やっぱり人数がちょっと違うだけで大分違うね」
まだ子どもだもの、そこまで大きく個々の実力差は感じない。だけど、そうなると尚更数の差が響いてくる。1人に対し2人以上でかかって来られたらもうダメだ。
「危ない!」
土壁発動! とても地味で単純だけど、子どもの振るう木剣には効果絶大な防御だ。
戦闘の外から眺めていると、全体を見渡すことができて便利だね。後衛っていうのはこうやってパーティ全体を気遣う役目もあるんだな。これ以上人数が増えたらもう無理だけど、6人程度なら把握できそうだ。
こうして地面に手を触れて魔力を流していると、離れた場所の地面だって素早く操作できる。じわじわと浸透させたオレの魔力は、既に辺り一体をカバーできるほどだ。
――ただ、傍目にはただぽつんと座ってる子どもにしか見えないのが難点だけど。
『地味すぎるぜ主ぃ! 突っ込んで行こうぜ! 1人で攻略とかカッコイイでしょぉ?!』
それはまあ、他人がやっていれば文句なしにカッコイイけど、オレがやるのは恥ずかしい。だって、相手は子どもだし。
だけど、ちゃんと宣言通りに魔法で防御は頑張るからね!
「ごめんねっ!」
踏み出した足の下に少々くぼみを作ってバランスを崩す、軸足を傾けてひっくり返す、土壁で戦力を分断する――。
「うわっ?!」
「きゃあっ!」
それだけのことで、相手側は結構な混乱を来している。
『それは既に防御には入らないと思うのだけど……』
そう? でも攻撃ってわけでもないでしょ? オレはちょっとだけ土魔法で手助けをしつつ首を捻った。貴族様たちは特別な授業を受けているからレベルが高いと思っていたのだけど……そうでもないのかな。なんだか、とてもイジワルをしている気分だ。
『タクトやラキだったら1人でも勝てるね!』
無邪気にスパッと言い切ったシロに苦笑した。うん、あの2人じゃなくてもオレのクラスの友だちなら、3人くらいいればなんとかなりそうだ。
ちなみに、タクトやラキ相手だとこんな嫌が……妨害はほとんど効果がない。タクトはこの程度でバランスを崩したりしないし、土壁ができるよりも早く剣を振り抜かれてしまう。ラキはそもそも魔法使いだからあまり動かないし、どんな体勢でも狙撃できる冷静さと集中力がある。
でも、貴族学校の人たちだって頑張ってるだろうに。どうしてここまで差がつくのかと不思議に思った。
『どうしてじゃないわよ、あなたがいるからでしょ』
『主のせいだぜ!』
――ラピスたちが鍛えてるの。半端では困るの!
ラピスが鍛えてるのはタクトとラキのみだけどね。
そっか、モモとチュー助の特訓でこんなに差が付くものなんだな。でもそれってオレのせいじゃないよね、モモたちのせいだもの。
1人納得して頷いた所で、モモがふよんと揺れた。頬に柔らかくぽわりとした感触が伝わる。
『それもこれもあなたの召喚獣たちのせいなのよ? あと、やればできるっていう見本が3人いるのもマズイわね』
『お外で食べるごはんがおいしいって知ったら、きっとここの子どもたちも強くなるよ!』
シロの台詞に、なるほどと頷いた。貴族様は普段から豪華な食事をとっているから、野外訓練にあまり乗り気じゃないんだろう。平民の子たちにとっては、外の食事は美味しいものをお腹いっぱい食べられるチャンスだからね! オレを含めて気合いが入るってものだよ。
『おいしいごはんを教えたせい』
蘇芳の指摘に、心外だなと頬を膨らませた。おいしいごはんを食べられること、黙ってた方が良くないよね? 現にみんなあんなに喜んで強くなったんだもの。
そうこうするうち、班の人数が逆転していた。ここまで来れば、もういいかな。
「魔力温存するよー!! あとはがんばってー!」
もちろん魔力に余裕はあるけれど、やりすぎるとかえって授業の妨げになるだろう。ちなみに無駄に広げた魔力で、結構消費は多かったりする。
ちゃんと宣言して手を振ると、おしりを払って立ち上がった。
「――そこまで!!」
再び鏑矢の音と共に、先生の大声が響いた。一旦ゲーム終了、次は攻守交代だ。
「はあっ、はあっ……あなた、こんなに魔法が使えたの?!」
「まさか、ここまでできるなんて。お前のおかげだぜ!」
息を切らして戻って来たメンバーは、泥だらけの顔で満面の笑みを浮かべていた。
みんな頑張ったものの、やっぱり大将は別格らしく、結果的に相手側は大将を含む2人が残っていた。でも、こちらもオレを含めて4人残っている。
「よぉし! よし!! 上々だ!」
「あとは防衛でどこまでできるか、ね……」
限りなく士気の上がっているこちら側だけど、防衛では再び10対6+1になってしまう。オレは、じっと見上げると、ひとつ提案した。
「あのね、こういうのどうかな――?」
「……それは……それはもちろん、できるならその方がいいと思うわ。だけど、その間あなたはどうするの? 大将が先に落とされたらその時点で負けになるのよ? それに、魔力はまだ残ってるの?」
「さっき温存したから大丈夫! オレは先に捕まらないように逃げるから!」
オレの提案に、メンバーは困惑気味の表情だ。だけど、オレが活躍するのでなく、ある程度みんなの力でなんとかしたって思ってもらいたい。
「いいわ、もしできなかったとしても、元々大して結果は変わらないもの。それなら、さっき助けてくれたあなたの案に乗っかるわ」
オレは差し出された手を握ってにこっと笑った。
うおおおー!
開始の合図と共に、相手側が猛然と駆けてくる。さっきの失態を取り戻そうと、相手チームはなかなかの気迫だ。前に立つメンバーが、ザリリと足を踏ん張ったのが見える。
オレは陣地のぎりぎり後ろまで下がって、地面へ手を着いた。
やりすぎは良くない。だから、直径2メートルって所だろうか。
「行くよっ!」
ズ、ズズズ――!!
訓練場の地面が震え、生徒たちは思わず足を止めた。ぽかんと見つめる視線が徐々に上へと移動していく。
「よし、このくらいでいいかな!」
高さは3階建ての家くらいってところだろうか。
敵味方問わず見上げる視線の先には、オレを乗せた土の柱がそびえ立っていた。
ふふふ、どう? ラスボスの塔みたいでしょ? ちょっと得意になってほくそ笑んだ。
よし、これでオレはちゃんと逃げられたから、第二段階。
「えっ?! きゃあ!」
「なんだっ?!」
ちょうどよくみんなが足を止めていたのをこれ幸いに、さらに土魔法で第2段階へと移行する。高さが出た分、土を操作しにくくなってしまったけど、オレが手伝うのはここまでだしね。
「ふう、結構疲れる」
思ったより手間だった。役目を終えたオレは、やれやれと高台で腰を下ろした。あとは、応援かな。
「こ、これは……?!」
「くそっ! どうする?!」
あぶれた相手方の数人が右往左往している。
眼下には、土壁によって隔てられた6つのスペースができていた。ひとつの区画に敵味方1人ずつ、きちんと分けられたよ。
「――本当にやっちゃうなんて。それなら私も頑張らないとっ!! これで、1対1よっ!」
はは、と乾いた笑みをもらした少女が、キッと視線を険しくした。
「ふん、1対1だからって勝てるわけでもないだろうに」
気を取り直した相手も、ぐっと剣を構えた。土壁は、邪魔さえされなければ簡単に登れてしまう。だから各個撃破を失敗すれば、全滅してオレだけ残っちゃう。そうなれば降参しようかな。オレだけで勝っても仕方ないもの。
あぶれた人が土壁の中に入らないよう妨害していると、どうやらオレを先になんとかすべきだと気付いたらしい。4人がこちらを指さして土の柱へと駆け寄ってきた。
「なんか、ドキドキするね。ダンジョンのボスってこんな気分なのかな」
『そんなわけない』
ええ? そうかな……。辛辣な蘇芳のツッコミにがくっとすると、オレは涼やかな風に吹かれて足をぶらぶらさせた。
セデス:うーーーん。アウト。
チュー助:目立ってる、主、それは目立ってるぜ!
埼玉県のメロンブックス大宮店さんで、もふしらコーナーがどーんと設けられたようです!
そこには戸部先生のかわいい直筆サイン色紙があるんですよ!!
お恥ずかしながら私のサインもあります…
お近くの方はぜひ覗いてみて下さいね!!






https://books.tugikuru.jp/20190709-03342/