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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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409 ラキの装備

温かい手が、優しく髪を梳いた。するするとかき分けるような指が心地よくて、浮上しかけた意識がまた沈んでいく。

「――ユータ、朝だよ~? もう起きよう~」

ラキの声? 珍しい、タクトじゃなくてラキに起こされるなんて。そっと揺すられて渋々目を開けると、やっぱりラキだ。オレのベッドへ腰掛け、くすくす笑っている。

「んんーおはよう。なんかオレ……すごく眠いよ」

ラキが起こす時間なら、いつもはもっとすんなり起きられるのに。ともすれば下がりそうなまぶたを押し上げ、大きなあくびをした。まだ暗い室内を見回すと、マリーさんが置いたであろう衣服が、きちんと畳まれて置かれてあった。

――ん? 暗い??

バッと窓の方へ振り返ると、案の定外はまだ真っ暗だ。

「……ラキ?」

じろっと見やると、スッと目をそらされた。ラキ……こんな早くから工房行かないからね?! 迷惑だからね?!

「でも~、職人さんだから、きっと朝は早いよ~?」

「お仕事が忙しいから早いんでしょ?! そんな時間に行かないよ。シロ、連行して差し上げて!」

「ウォウッ!」

「あっ、シロ待って、歩けるから~! べちょべちょになっちゃう~!」

遠ざかるラキの声を聞きながら、ばふっと布団をかぶった。ラキを止めなかったってことは、タクトは部屋にいないんだろうな。きっともうギルドに行ってるんだろう。オレとラキのパーティだったら、いつまでたってもゴブリン討伐と薬草採りだったかもしれない。

まだもう少し眠れるよね。朝早いタクトに感謝の祈りを捧げると、温かい枕に頬をすりつけ、ふんわり微笑んで目を閉じた。



「朝だぞーっ! ――っ?!」

大きな声と共に、思い切り引っぺがされた布団に眉をしかめた。今度は間違いなくタクトだ。眩しい日差しに目をしょぼしょぼさせながら起き上がると、腹を抱えて笑っているタクトに首を傾げた。

「どうしたの?」

「な、な、な、なんでもねえ……!!」

タクトは深呼吸すると、傍らのラキの肩へ、ぽんと手を置いた。

「わあ、それ何? かっこいいね!」

「いいでしょ~? 昨日買ったやつだよ~」

ラキの腰には、たくさんの収納がついたベルトのようなものが、ぐるりと装着されていた。まるで、大工さんの腰袋みたい。加工に使うであろう道具や素材がごちゃっと入っているようだ。ガチャガチャと鳴るそれは、オレの目にはとても、とても格好良く見える。

「いいな! オレもそれ欲しい!」

「ユータは大きな収納があるじゃない~そっちの方がよっぽどいいよ~? 僕もお金を貯めたら収納袋買って、ここに取り付けるんだ~!」

えー、確かに収納は便利だけど、いつも手ぶらでウロウロしてるのはあんまり格好良くない。武器でも道具でも、重そうにガチャガチャしてるのがカッコイイと思うんだ! 

『でもゆーたは重いの持てないよ?』

そう……そこは難点だ。ラキの腰袋は軽量化加工と共に、サスペンダーベルトもついているらしい。上着をまくると、連結された皮ベルトやギミックがさらに格好良さを高めて、よだれが垂れそうだ。これを身につけるためだけに、加工師になりたいとさえ思う。

「……もういい~?」

苦笑したラキの声に、後ろ髪を引かれる思いで上着を下ろした。やっぱりこれ、欲しい。

「ユータは買っても入れる物ないでしょ~?」

短剣は腰のベルトに収まっているし、普段持ち歩くものなんて全部収納に入っている。何か……何か入れる物はないだろうか。

「そうだ! ムゥちゃんとか、チュー助とか……あと、調味料とか?!」

これは中々いいアイディアじゃないだろうか。管狐部隊を呼べば、全てのポケットが埋まること間違いなしだ! しかも重くない!

「それ、カッコイイか……?」

ぐっと拳を握ったオレに、タクトがちらりと呆れた視線を寄越した。――想像してみる。ぴょこぴょことあちこちから顔を出すねずみにスライム、管狐たちとムゥちゃん。

………メルヘンだな。

ちょっと、思ってたのと違うかもしれない。オレはガッカリと肩を落とした。



「依頼、いいの取れた?」

急いで用意をすませ、ラキに急かされながら3人で部屋を出た。

「ま、そこそこじゃねえ? 簡単で割のいいやつの方が人気あるからな」

どうも目が合わないタクトを不思議に思いつつ、高鳴る胸の鼓動を心地よく感じた。

「そりゃそうだね~わざわざ難しい依頼を取りに行く人は少ないよね~」

なるほど、じゃあ難しい依頼ばかり狙うのって、ある意味第一希望を取りやすいのかもしれないね。お得ではないと思うけど。

「ユータたち、もうお出かけ? 早いねぇ、行ってらっしゃ……」

廊下で出会った寝起きのセデス兄さんが、ピタリと足を止めて目を擦った。両隣の二人が、必死に笑いを堪えている。セデス兄さんは、朝はいつもあんな頭だから……気にしないで。

「ぶっふぅーー!! ゆ、ユータ……何ソレ?!」

何度も目を擦ってオレを見つめた末、盛大に吹き出されて、ビクッと肩を揺らした。え? オレ? 

憮然として左右を見ると、二人も堪えきれずに笑い出した。

「なんだ? 朝から何やって――」

半裸で顔を出したカロルス様も、オレを見るなり壁を叩いて爆笑しだした。カロルス様、壁がヘコむからやめてね!

「ゆ、ユータ様……それはそれである意味とても可愛らしいのですが……」

「そ、そうね――カワイイのよ? でも、お外はちょっと……」

マリーさんとエリーシャ様まで! 何がおきているのか分からず、ぶすっとへの字口をしたオレに、マリーさんがサッと鏡を差し出した。

「――? なっ、うわあぁー?!」

立派なヒゲに、左右が繋がりそうな極太眉毛。念入りに描かれたアゴヒゲまで……!!

い、いつの間にーっ?!



「も~機嫌直してよ~すぐ落ちたでしょ~?」

落ちたけど! でもセデス兄さんに会わなかったらあのまま館出てたんですけど! この世界に油性ペンがなくて本当に良かったと思う。

「ヒゲが似合わないって分かって良かったじゃねえか!」

まだ目を合わせないタクトを睨みつつ、今は似合わないだけだとむくれた。

『あんなに落書きされて、起きない方が不思議よ~』

……モモ、知ってて黙ってたね?! どうやらオレの味方はいないらしい。

『俺様、かっこいいと思うのに、なんで消したの?』

シャキーン!

肩でポーズをつける姿に目をやって、思わず吹きだした。精霊に落書きってできるんだ……。しっかりと描かれた眉毛とひげは、ある意味似合っていた。

『おやぶ、かっこいい! おとな!』

尊敬の眼差しで見つめるアゲハと、ふんぞり返るチュー助のせいで、お怒りモードを継続するのが難しくなってしまった。

よし、今度はオレが落書きしてやろう。そんなことを考えてほくそ笑んでいたら、タクトとラキに胡乱げな瞳で見つめられていた。

「まずお前が起きねえだろ」

「僕だってさすがにね~描かれる前に目が覚めるよ~」

……そんなに分かりやすく顔に出ていただろうか。じゃあどうしてオレは描かれても目が覚めないんだろうか。


「カン爺! ラキ連れてきたぞ!」

「おはようございます~!!」

むわっと熱気の漂う工房内を見回して、ラキの瞳がきらきらしている。

「ほほう、あんたがラキか、ワシが工房主のカンジームじゃ。カン爺と呼んでくれてかまわんよ」

カン爺さん、どうしてちょっと気取ってるんだろう。小さな背丈をめいっぱい伸ばして工房内を案内する様は、なんとなく微笑ましい気分になってくる。

「――で、ここがメインの窯じゃな。ここを使えるようになるには――」

「君がラキくん~?! まあ、思ったより大人っぽいのね~!」

ぐい! と尻でカン爺さんを押しのけ、サヤ姉さんが割り込んできた。先日はきゅっと結んでいた髪が解かれ、肩に流れ落ちている。

「サヤ姉、だからラキだって俺と同い――」

「ふふっ、そう~? ありがとう~。お姉さんも加工師~? 美人な加工師さんだね~」

爽やかに微笑んでサラッと流した台詞に、オレとタクトは戦慄してラキを見つめた。



ラキ:次はどんな顔にしようかな~?

タクト:まぶたに目描こうぜ!!リアルなやつ!


なんかラキ関連が長いですが、そんなつもりではなかったんです……はしゃぐラキがやたら出てきてしまって。


文章の乱れはすみません!気付いてます!でも更新頻度を維持しようと思ったら多忙な時期はこうなっちゃう…投稿ボタン押す瞬間まで一気に書いて滑り込み投稿するって荒技でやってるので…

時間できたら直します~多分。ちゃんと推敲して修正した文章が読みたい、という方は、なんと書籍版という良いモノがあるんですよ~!(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] ポンコツは二人?ラキとタクト
[一言] ラキの女性あしらいが上手? これは将来が危険ww
[一言] 書籍版?それって推敲して、編集さんにダメ出しされて(ToT) 編集長にもダメ出しされたヤツの事かな(-。-)y-~
感想一覧
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