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348 お手伝い

「おー! 来た来た!」

ギルドに入った途端、元気な大声が響いてビクッとなった。

「ひっさしぶりー!」

ひょいっとオレを抱え上げてくるくるまわるのは、赤いショートカットの元気な女性。

「わあ、ルッコだ! 久しぶりだね」

「ちょっと、大きくなった……?」

すとんと下ろして貰ったら、リリアナがオレの頭に手を置いた。うーん、まだリリアナより大分小さいけれど、すぐに追い抜くからね! 『草原の牙』メンバーは、ギルドでどうやらオレを待っていてくれたみたい。

「どうしたの? これから依頼?」

「そう、その依頼のことで相談だ! ……お前たち、一緒に依頼受けねえ?」

ニースがここぞとばかりに声を潜めて耳打ちした。

「受けるー!」

「「「即答?!」」」

満面の笑みで答えると、ニースたちがカクンとなった。そりゃあ即答だよね?!一緒に依頼を受けるなんて、すごく楽しそうだもの。ラキたちだってきっと喜ぶよ。


「いやお前さ、せめて内容聞いてから答えろよ……おにーさん心配になるぜ」

「でも、ニースたちだもん。大丈夫でしょう?」

にっこり微笑んだ信頼を込めた瞳に、3人がうっと呻いた。

「お、おうとも……何も、何もやましいとこなんか……」

「ああ……あたしの中の不浄が消えていく……」

「ルッコ、気を確かに。それが消えたらルッコがいなくなる」

いつも通り、ルッコとリリアナが言い争うのを放置して、ニースをじいぃっと見つめた。さりげなく視線を逸らしたニースが、だらだらと汗を流している。

「……あああ! もう! な、何も悪いこと企んでるワケじゃねーよ?! そ、そのさ……ランクアップに受けた依頼なんだけど……お前がいると確実かなーってさ。ちょっとさ、期限が………頼むよ~!!」

ニースが情けない顔でオレに縋り付いた。



「それで一緒に受けることになったんだ~うん、僕は歓迎だよ~」

「もちろん大歓迎! やったぜー! ちなみにどんな依頼なんだ?」

期限内に3人で合わせられる日があって良かった。ギルドに向かいながら、聞いた話を伝えておく。

ニースたちが受けたのは、なんてことはない依頼だったのだけど……。


「それが全っ然! 見つからねーーの!! 本当かよって感じでさ」

大きな拳が力なくテーブルを叩いた。

「もう依頼自体、嘘かも」

3人は、半ば諦めムードでため息をついた。ランクアップには、色々な種類の依頼を受ける必要があるのだけど、ニースのパーティには探索に向く人がいなくて、そういう依頼を最も苦手とするみたい。

「だから、つい後回しになっちゃってね……やっと手を着けてみたはいいんだけど、お手上げ~」

依頼内容を確認すると、ここから馬車で半日ほどの場所に、ワースガーズって魔物が出たんだって。近隣の村からはそこそこ距離があるので、それ自体では問題がないのだけど、ワースガーズっていうのが本来単独で出る魔物じゃないらしい。なので、群れがいるんじゃないかと不安に思った、近隣の村人からの調査要請だ。

「ふうん、難しくなさそうじゃねえ?」

「うーん、これは厳しいかもね~」

タクトとラキが、真逆のことを言った。

「え?群れを探すのって難しくないんじゃないの?」

『草原の牙』面々も、そうじゃないの?!と不安顔でラキを見つめた。

「うん、群れを見つけるのはそう難しくないと思うんだけど~」

「じゃ、じゃあなんで?!」

ニースがガタッと立ち上がった。

「群れがいたら、難しくないよ~。でも、いなかったら~? どうやって証明するの~?」

「「「あっ……」」」

「情報がね~少なすぎるよ~。ワースガーズは『単独で』見つかったんでしょ~? ちらほら見かけるならともかく、たった1匹しかいなかったら……もう他の魔物に食べられちゃってるかもだよ~」

「「「ああああ~!!」」」

3人がテーブルに突っ伏した。そ、そっか……そういう落とし穴もあるんだ……。だから本来、こういう依頼はある程度の達成条件をつけるのが普通らしい。数日間連続で探索して見かけないこととか、特有の痕跡がないとか。建物の中ならともかく、広い土地で、いないことの証明はとても難しいからね。

「だから、この依頼は~『スライム焼き』だね~」

ラキの言葉に、3人が今度こそ暗く沈んだ。『スライム焼き』っていうのは、簡単そうに見えて難しい依頼、もしくは、受けるだけ無駄って意味らしい。スライムを焼いたら何も残らないように……。

「だ、だから残ってたのか……」

「だってぇ~普段探索系なんて受けないんだもん~知らないわよ~」

「手痛い事実……」


「で、でもさっ! もしかしたらいるかもしれねーんだろ?! いる方に賭けてみようぜ!」

タクトの励ましに、3人の目に少し光が戻った。でもね、魔物は本来いない方がいいと思うよ……?

「あとは、いなかったとしても、これだけ探しましたって事実を伝えて~、依頼者さんが納得してくれたらいいんじゃない~? 多分、依頼者さんも慣れていないだけじゃないかな~?」

「そ、そうか……依頼者はギルドじゃねえもんな、ただの村人だ。誠心誠意、真心込めて……!」

完全に光を取り戻した3人が、ぐっと拳を握って立ち上がった。

「よし! それじゃあお前たち、サポートしてくれるか?!」

「「「おー!」」」

よく落ち込むけれど、立ち直りも早いのがこの人たちの長所なのかもしれない。さっそくギルドを出ようとした所で、ふと気になったことを尋ねた。

「ところで、期限って言ってたけど、いつまでなの?」

扉を出ようとした3人の足が、ぴたりと止まった。

「……………あさって……」

……今はお昼前。そして目的の場所まで半日、つまり往復で1日必要として……。

「「「えええぇーー!!」」」

ギルド内には、オレたちの甲高い悲鳴が響きわたった。


「間に合うかなぁ……」

「普通に考えたら間に合わないよ~」

「でも、ユータがいるしな!」

探索の範囲は、そんなに狭い場所じゃない。ゴツゴツとした岩場が多いので、森なんかよりはずっと難易度が低いけれど、起伏に富んで見通しは全く利かない。まあ、見通しが利くならそもそも依頼なんて出ないだろうけども。

風に髪をなびかせ、後ろで響く悲鳴を聞きながら、オレたちは深いため息をついた。

「俺が悪かったアァ~~~止めてくれえーー!!」

「ぎゃああああー!」

「………」

素晴らしい速度で疾走するのは、馬車じゃない。少しでも時間を稼ぐためのとっておきだ。

『どうしてそんなに大声出すの~? 怖い? でも急ぐんだよね?』

困った顔でシロが振り返った。

「うん、急いでるから気にしないで! シロは速いね、助かるよ!」

スピードを緩めた方がいいのかと気にするシロに、まふっと抱きついて首元を撫でた。こてんと頭をもたせかけると、サラサラとなびいた毛並みが頬に触れて心地良い。


ひょい、とシロが段差を飛び越えて、後ろのソリが跳ね上がった。一際大きな悲鳴があがったけど、曲がりなりにもDランク冒険者だもの、大丈夫。

「もう少し時間あったら、乗り心地にもこだわれたのにね~」

「こんなスピードで走ったら、丸太に乗ってたって一緒じゃねえ?」

シロの背中はオレたち3人でいっぱいだ。オトナたちは、大急ぎでラキが作ったソリに乗ってもらった。時間がないので、土魔法で作った重いソリだけど、シロはこれだけの人数を乗せてなお、軽々と走ってくれた。

「ごめんね、重いよね」

『ぜーんぜん! 僕、いっぱい走れてとっても楽しいよ!』

嬉しげに駆けるシロは、本当に楽しそうだ。力強い四肢の躍動がダイレクトにオレに伝わって、生き生きと溢れる生命力を感じさせた。召喚獣になっても、シロは眩しい生命そのものみたいだ。

「そっか、うん、本当だね! 楽しいね!」

オレは顔を上げて、まともに風を浴びた。

「ねえタクト、ちょっと支えていて?」

「あ? おう……ってユータっ!!」

ごうごうと唸る風に、思い切って両手を離した。タクトが大慌ててオレの腰を支え、挙げた両腕が旗のように振られた。仰のくと、髪の毛まで風に持って行かれそうで、きゃっきゃと笑った。



ルッコ:り、リリアナ~?!ちょっと、リリアナが息をしてないっ?!

ニース:大丈夫だ、一時的に仮死状態になってやり過ごそうという本能が……

ルッコ:うそぉ?!


久々の登場ですね、賑やか3人組。


いつも評価や感想をありがとうございます!

過去に出ている人たちは、ちらっとですけど大体出てくると思います。ただ、ちらっとですけど…。

そして2222の日は……気付かなかった……誰か、イベントっぽい日の1週間前くらいに私に教えて…当日に知っても間に合わない…(>_<)


自宅待機の方々は、電子書籍なんてどうですか?もふしら1巻、半額セールが3/5までですよ~!この機会に手元にいかがですか?課金ガチャだと思えば……確実にSSイラスト+αと新たなお話が手に入りますよ(笑)


*モンスター名後で入れようとすっかり忘れてました!置換前に読んじゃった方ごめんなさい!教えて下さってありがとうございます~!!

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、うん ちびっこを便利屋扱いしちゃあかんよ 天罰だなw
[一言] お疲れ様ですm(*_ _)m お~久しぶり~ そして相変わらずの残念ぶり!
[気になる点] なんだろう モンスター「アイボール」や「土下座衛門」とかの、この世界での表記なんだろうか「◎」 ねぇわな まぁ、純粋に名前決めかねて、仮称として放置したまま投稿しちゃったんだと思います…
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