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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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343 ユータのガッカリ

「ユータ、持ってみるっす」

戻って来た先生は、ドゴンとたくさんの重りを置いた。さすが先生、この重り全部いっぺんに持ってきたの?

横合いから手を出したタクトが、いくつかの重りのうち、一番大きな物をひょいと持ち上げた。

「軽い軽い!」

「うわ~すごい!」

「ふむ、さすがっすね。適性は十分だったっすからね」

オレもわくわくしながら大きな重りに手を伸ばした。


「………何やってんの?」

……持ち上げようとしてるの!!

いくら顔を真っ赤にしても、大きな重りは残念ながらピクリとも動かなかった。

「ま、まあユータは元々適正ないっすからね~仮に身体強化できていたとしても、そこまで変化はないかもしれないっすよ」

そんな慰め、ちっとも嬉しくない!

少しむくれつつ、次々重りを小さくしてみても、結局ただの1つも持ち上がらない。シュンとして一番小さな重りに手を伸ばした。

「うーーん……ほ、ほら、持ち上がったよ!」

よっこらよっこら、小さな重りはどうにかこうにか持ち上げることに成功し、満面の笑みを向ける。

「……いやーユータ、言っちゃ悪いけどそれフツーだと思うぞ」

「そうっすねー全然強化されてないっすねー」

ズバッと言い切られて、がぁんと目の前が暗くなった。ええ……じゃあこれ、何の意味もないの……?



「ねえ、さっきからユータはどうしたの~?」

「いじけてんじゃねえ?身体強化できなかったからさ」

部屋に帰るなり布団の中で丸くなるオレに、ラキが訝しそうな声をあげた。だって、すごく楽しみにしていたのに……。できたと思ったんだけど。

「あ、そうだ、ユータさっきの身体強化?アレ見せてくれよ」

遠慮なしに布団をまくって、タクトが覗き込んだ。

「身体強化できなかったんでしょ~?」

「いや、できなかったんだけどさ、なんつうか、その……まあ見てくれよ!」

そんなにできないできない言わないでよ……オレ、一応傷心中なんですけど。

そんなことはお構いなしの二人が見せろ見せろと言うので、もしかしてもう一度やってみたらできるかも……と淡い期待を抱いた。だって魔力が体に行き渡っているのに、何の変化もないってむしろ変じゃない?

ふう、と息をついてさっきの感覚を呼び起こす。一度感覚として覚えてしまえば、再現はそう難しくない。

心地よさが全身に広がって、身体強化モドキが完成した。ふわりと目を開けると、ラキたちがじっと見つめていた。

「……な?違うだろ?」

「え~何が違うの?これ、身体強化じゃなかったら何なの?」

ほら、ほら言ってやれよとタクトがラキをせっついた。

「うん、他人が変化を感じる時点で身体強化じゃないだろうね~。なんかユータ、きれいだよ」

「……きれい?」

さらりと口にするラキが男前!きれいってどういうことだろう。ただ言えることは、そんな効果はいらないってこと。

「うん、どうなってるのか知らないけど、うーん……中から光ってるような~そんな感じがするよ~?」

ふうん?でもオレの体を見ても、実際に光っているわけではない。

「でも、先生は何も言わなかったよ?」

「だって先生はユータ毎日見てねえもん。ユータはそういうもんって思ってんだよ」

「そうだね~あからさまに分かるような感じじゃないよ。あれ?今日きれいだね、髪型変えた~?みたいな感じだよ~」

またもやさらりと言ったラキに、オレとタクトがひええ、と肩を寄せ合った。ラキ、もしかして……モテるタイプ?オレ、表情変えずにそんな台詞言えそうにない……。


「そのっ、髪型、かっ、変えたんじゃねえ?き、き、き……」

悔しそうな顔をしたタクトが、ぼそぼそと練習しているようだけど……まるでだめだね。やれやれと肩をすくめたオレに気付いて、タクトが食ってかかった。

「お前だって無理だろ!ほら、言って見ろよ」

ちょっと恥ずかしいけど、タクトほどじゃないよ!

「えっと、きょ、今日………」

どうしたことだろう、意識すると余計に恥ずかしくてたまらない。ぶわっと顔が熱くなったのが自分でもよく分かった。

「アウト~!鏡見て見ろよ。俺の方がまだマシだっつうの!」

張り合うオレたちを見るラキの目は、とても冷たかった。




「とってもきれいだね。手触りも最高、本当に素敵だよ!」

ほら言える。意識しちゃうからダメなんだ。ふかふかの被毛を撫でさすりながら口にすると、金の瞳が何言ってんだコイツ、と言わんばかりに細められた。


オレはいつものごとく、この傷心をルーの極上毛並みで癒やしてもらおうとブラシを滑らせている。持ち上がった尻尾の先が、機嫌良さそうにぴこぴこと動いていた。

「あのね、今日身体強化の授業だったんだけどね、できたと思ったのにできてなかったんだ……」

「お前はできねー」

ズバリと言い切られて、思わずルーの上に突っ伏した。

「……ど、どうして?!」

「どうしてもこうしてもねー。てめーの魔力は、生命の魔力が強すぎるから無理だ」

ええ……生命魔法って身体強化と相性良さそうなのに……別物なんだ。確かに回復術師の人は最も体術なんかと縁遠いイメージだ。神官さんなんて法衣だもの、ものすごく動きづらそう。

「じゃあ、これはどうなってるの?」

ガックリしつつ、オレなりの身体強化をやってみせると、ルーはスッと目を細めた。

「……それは言うなれば『回復強化』だ」

「回復強化?じゃあ、ケガしてもすぐ治るってこと?」

うーん、便利だけど……あんまりカッコよくない。ケガする前提で治りが早いより、傷ひとつつかない方が断然カッコイイと思うんだ。

「ほっほっほ……回復強化の方が、よほど得がたき力よ。ぬしは何がそのように不満じゃ」

いつの間に現われたのか、柔らかな下草を静かに踏み分け、長いヒゲのお爺さんが歩み寄ってきた。心なしか、ルーの瞳が不満気だ。

「サイア爺さん!」

「サイア爺でよいとも、ユータや」

わあっと飛びつくと、細いお爺さんは軽々とオレを持ち上げた。サイア爺は大きな大きな、とても大きなお魚だから、人の姿であっても案外力持ちなのかもしれない。

「どうしたの?今日はマーガレットさんは?」

「あやつは修行中じゃ。連れてくるとうるさいのでな」

――ラピス、見に行ってくるの!

そわそわして飛んでいったラピスにくすっと笑った。時々会いに行ってるみたいだし、二人はすっかり仲良しだね。


「てめー、なんで来た」

「別に構わぬじゃろう、ユータが来ていると思うたのでな」

ぶすっとむくれたルーのご機嫌を直そうと、肩に跨がって丁寧に耳後ろをブラッシングしてあげる。

「おうおう、トンガリ小僧も随分丸くなりおって」

「うるせー!!だから来るなっつうんだ!!」

もう、せっかく心地よさそうにしてたのに。サイア爺に視線で「メッ!」とすると、再び手を動かした。

「それで、回復強化って珍しいの?」

「おうとも、それはそれは珍しいとも。ワシが見たのは、ぬしで………多分二人目じゃ」

サイア爺はちょっと視線を外しながら言った。怪しい、それ多分思い出せないだけじゃない?でも、そのくらい珍しいことには変わりない。

「珍しくなくてもいいから、身体強化したかったよ……」

「それは残念じゃのう、時に、ワシの加護に入れば体は丈夫になるんじゃがのう……今はそやつの加護が強いでな、ワシの加護が十分に効力を発揮できんのぅ……」

ギン!

ルーが、燃え上がりそうな金の瞳でサイア爺を睨み付けた。そうなんだ、加護ってひたすらに重ねられるわけじゃないんだ。

「オレにも加護をくれたの?ありがとう」

「真名を教えたじゃろう?これで繋がりができておるからの。ワシの加護も、もちろん渡しておる。身体強化には及ばぬが、『鱗』の加護がついておるよ」

そうなんだ!知らなかった……。どうやら軽いシールド効果のようなものらしく、あとは水との相性も良くなっているそうな。



「じゃあ、またね!サイア爺のとこにも今度遊びに行くね!ケンカしないでよ!」

手を振ったユータに見向きもせずにむくれたルーと、にこにこと微笑んで手を振ったサイア爺。

「良い子じゃ……随分と成長が早いの。さて、ワシも帰るか。マーガレットの成長は……早いとは言えんかのう」

早く帰れ。無言で尻尾を振ったルーに苦笑して、サイア爺はフッとかき消えた。


ルーは誰もいなくなった湖のほとりで、四肢を伸ばして横たわると、ユータの消えた空間をじっと見つめた。

「…………ゆっくりでいい」

小さく呟いた黒い獣は、随分と長くそのまま動かなかった。

まるで遺体のようにだらりとしたその体を、冷たい風が撫でていった。


ラピス:ルーも学校来たらいいの

ルー:行くわけねー!

ユータ:来たら嬉しいな!生徒はちょっと無理そうだから…先生?きっと人気が出るよ~!

ルー:絶対行かねー!!



そうこうしているうちにコミカライズ版更新まで1週間を切りましたね!!次も見てー!かわいいので!カッコイイので!!コミカライズ版見てるとカロルス様ファンになりそう(笑)


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― 新着の感想 ―
ルーの 遺体を連想する~が不吉… でも確かにユウタはもっとゆ~っくり強くなれば良いと思う… 強くなるのが嫌な未来の保険みたいになっててちょっとというか大分怖い 今回は日常回だけど先の感じが怖い回でした…
[良い点] ルーの、素直じゃないけどちゃんと見守っている感じがとてもいい(≧∇≦)b ヤキモチ焼きなところも(笑)
[一言] お疲れ様ですm(*_ _)m 遺体のように…っていう表現が なんか嫌な未来を連想させるというか 何か嫌な汗が出る感じというか… 考え過ぎかな? サイア爺の好々爺っぽい感じがいいですね。 キラ…
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