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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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263 カロルスブートキャンプ

「うめえっ!うめえよ!!」

「これ、何?!ダンジョンでこんな食事が…?!」

「こんな美味い飯にありつけるなんて…生きてて良かった…」

「…そ、そう?そ、それは良かった……」

…言えない……それはお魚なんだ…。そう、冒険者さんたちを食べようとしたお魚…。もちろん内臓は使ってないので胃袋は取り除いてあるけれど…。

あんな凄惨な目にあったのに、冒険者さんたちはやはり精神的にタフなんだろうか、もりもり食べて大喜びしている。回復したばかりの胃腸が心配になって、そっと『点滴』もしておいた。


地底湖のお魚は、淡泊だけど歯ごたえがしっかりあって、まるでお肉のような食感だった。だからお肉のような調理法で濃いめの味付けにしてみたんだ!こうすると、よく味が染みてとても美味しかったよ。

「ねえユータ、この唐揚げは何のお肉なの?ちょっといつもと味が違うね、でもとっても美味しい!」

「あ…それは…ワニ(?)かな」

「げ、あれかあ…聞かない方が美味しかったな…」

そのワニ(?)も地底湖で冒険者さんたちを襲っていた魔物だ。ラピスは大きい魚って言ってたけど、足あるからね…魚じゃないと思うよ。こちらは完全にお魚じゃなくてお肉だ。豚でも牛でもない独特の風味で、脂身が少ない割に柔らかいんだ…外皮はあんなに硬かったのに。

ダンジョンって食事に困ると思っていたけど、意外と大丈夫そうだ。ただ、このダンジョンに関して言えば野菜がない…苔しか生えてないもの。

『ここは結構厳しいとこだと思う!他なら外と変わらない環境のダンジョンも多かったし!草も木も生えてたぞ!だって採取しながら進んでたもん』

『ダンジョンってこういう地下なんでしょ?どうして陽の射さない場所に生えてるのかしら』

『え?陽は射してたけど?ガンガン明るいし、洞窟だってこんなに暗くなかったけど…あれ?なんで?』

『肝心なトコは知らないのね…』

モモ、チュー助は短剣だったんだから、そこまで詳しくは知らないと思うよ…お耳とおひげがぺしょっとなってるから…。



「助けていただいて…それも瀕死の重傷から救っていただいてありがとうございました!」

「その上こんな食事にありつけるなんて…」

「このご恩、一生忘れません!!」

深々と頭を下げる冒険者さんたちに、カロルス様はずいっとオレを前へ押し出した。

「礼ならコイツに言うんだな。助けたのも飯作ったのもコイツだ」

「えっ?」

「ユータちゃんはすごいって言ったでしょう?」

「そ、そうですか…ありがとうございます!」

「えっと…ありがとうございます!」

きょとんとした顔で、慌てて頭を下げられて苦笑い。何言ってるか分からないって顔されてるよ、半信半疑どころかほんのちょっぴりも信じられないみたいだ。

別に信じてもらう必要も無いし、カロルス様にはいつかおおっぴらにバレた時に味方になってくれる人を増やせって言われてる。だから、今信じられなくてもサラッと伝えておけばいいって。

「ううん、美味しく食べてくれて良かった。オレ、お料理得意なんだよ!」

「あんな美味い物を…貴族のぼっちゃんはすごいですね」

お料理の方なら少しは信じられるかな?今日彼らの中に刻まれるのは、死に瀕した恐怖じゃなくて、ダンジョンで食べた美味しい料理、そうであってほしいなって思った。


「それで、僕たちもそろそろ出ようかと思ってたから送っていくけど?帰るよね?」

「魔道具がありますので、すぐに1階まで到達しますよ。この人数なら全員転移可能でしょう」

「い、いいんですか?!そ、そりゃあ願ってもないことで…」

冒険者さんたちは恐縮しきりだけど、置いていかれはしないと知って瞳が輝いている。

「魔道具?えっと…習ったような。出口の近くまで行ける道具?」

「ええ、ダンジョンを抜けるための魔道具です。そこそこ高級品なので、踏破する気のない者は持たないことも多いですが、ないと非常に危険なので、必ず毎回持っていって下さい。珍しいものではないので魔道具店で販売していますよ」

「そうなんだ!便利なものがあるんだね」

執事さんが見せてくれたのは、大きめの魔石が嵌まった手のひら大の円盤みたいなもの。びっしりと何やら文字が書かれている。これをダンジョンの転移場所で使うと、繋がりを逆行して一番最初の場所まで行けるそう。


「では、行きましょうか」

ふわりと周囲が光に包まれ、ちょっとした浮遊感を感じる。

「ああ…帰れる…」

冒険者の誰かが、小さく呟くのが聞こえた。

「モモ!」

『オッケー』

足下がしっかりと安定した瞬間、サッと前へ出ながらシールドを張った。


ギィイン!


「えっ…?」

「あ……」

転移の前後は要注意…ホントだね、確かに油断しがちだもの。ちゃんと説明を聞いておいて良かった。

「お前ら、気ぃ抜きすぎだぞ」

「うふふ、気をつけないとねぇ。ご覧なさい、ユータちゃんだって前へ行こうとしたのよ?」

一応冒険者さんのためにシールドは張ったものの、セデス兄さんがきちっと前で攻撃を受け止めていた。転移直後に現れたのは、足の多いバッタみたいな魔物。オレはと言うと、前へ出ようと飛び出した所で、エリーシャ様にキャッチされてしまった。

「1階層でも油断すれば命を落としますよ?」

にっこり微笑んだマリーさん。メイドさんと貴族を含め、瞬時に全員が自分たちより前へ出ていることに、冒険者さんたちが目をしばたたいた。

「あ…ありがとう…ございます…?」

「あんたら……一体?」


* * * * *


「おら、もっと前へ出ろ!その程度で下がるな!心配いらん、回復薬ならあるぞ!」

「ひぃぃ!ちょ…だって!俺、後衛っす!!」

わはは!と豪快に笑いつつ、冒険者さんたちが下がってこないよう後ろに控えるカロルス様…なぜかオレたちは冒険者さんの指導をしつつ出口へ向かうことになってしまった。

「魔法使い!遅いぞ!剣1、2!てめえらはさっさと突っ込め!そしたらあいつも魔法で援護するだろ!」

カロルス様の無茶振りに、涙目で突っ込んで行く冒険者さん…必死の早口で詠唱する魔法使いさん…頑張れ…。でも、カロルス様はちゃんと危険な攻撃は防いでいるし、致命的なことにはならないよう見守ってくれている。


「俺ら、こんなに早く倒せるんだな…」

「本当に…これならすぐに1階層を抜けられそうよ」

冒険者さんたちも1階層は通ってきたのに、どうしてそんなに涙目になっているのかと思っていたけど、どうやら魔物1体1体に時間をかけて全員で当たっていたようだ。

「ユータ、冒険者はパーティで行動するんだからね、普通はこうやって1対多数で戦闘するんだよ。ちゃんと見ておかないと、『普通の人』と連携取りにくいと思うよ」

そうか…カロルス様たちは普通の人じゃないもんね…この人達を基準にしていたら、色々と悪目立ちしてしまいそうだ。

「ユータが何考えてるかすごく分かるけどね、ユータも普通じゃないから…もう目立ってるから…」

セデス兄さんの呟きは、聞こえなかったことにした。


『ユータ、ぼくたちと連携の練習しようよ!それならいつでもできるよ!』

「きゅきゅ!」「ピピッ!」

『そうね、それが一番現実的だわ』

『俺様指揮取るぜ!』

「ムムゥ!」

いやいや、ムウちゃんは戦闘に参加しないよ?そんなに一生懸命手を挙げてもダメだよ?ティアも参加しないよね…?いつものほほんと肩にとまってるだけだよね…?

でも…そうだね、どんな戦闘の時も一緒にいるのはこのメンバーなんだから、連携の練習は必須かもしれない。オレたちには『繋がり』があるから、なんとなく意思が通じるし、そこまで深く考えていなかったけど、練習して損はないよね!

『(でも、そうするとますますゆーたは「一人パーティ」になっちゃうのよね~)』

「?モモ、なあに?」

『なんでもないわよ、あら…もう出るわね』

「あ…ホントだ!わーい!」

随分久々に感じる太陽の光。オレと冒険者さんたちは、光に向かってかけ出した。



冒険者たち「帰れる…今度こそ…今度こそ帰れるぞおぉ!!」

冒険者たち「うおおー前だ!ひたすら前へ突っ込むんだ-!」 



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