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214 魔法使いと回復術師の離脱

天使(?)の声と身体の回復に、気が緩んだのか泣いてしまう子がたくさんいたけど、周囲の大人は気にも留めていない。よくあること…なんだろう…もう少しの辛抱だからね…。


さあ、オレはオレで地味な戦いをしよう。

手元の土器に意識を向けると、繋がった魔力がアリ塚もどきの中へと誘導され、蓄えられているようだ。

ふーん、オレの魔力はお好みじゃないって?まあそう言わず、それイッキ、イッキ!!

繋がりがあるなら送り出せる。わざわざ生命魔法を除外しようとするなら、混じることで、何らかの邪魔になるのだろう。一生懸命貯めている子どもたちには悪いけど、思い切り邪魔させてもらうよ!

ぐぐっと送り出す魔力を高めて、ぐいぐいと注いでいく。さあさあ、遠慮せずどんどんいきたまえ!


どのくらい注いでいたのか、さすがに疲れたし飽きてきた。ふと周囲に目をやると、光の戻った瞳で、子どもたちがみんなこっちを見ている…何事?!

「あなた…交代は?大丈夫なの…??」

周囲を気にしつつ、そっと囁かれた言葉に、交代のことなんてすっかり忘れていたオレは、慌てて手を離した。

「う、うん、そろそろむりって思ってたの!」

「その割に元気じゃねーか…Aって、言ってたもんな…オレもそんな魔力があったら…」

ふて腐れたような男の子も口をとがらせた。

「あなたも、聞こえた?天使様…。だから、そんなに一生懸命しなくていいのよ。しっかり魔力を絞って、吸い取られないよう気をつけて」

…驚いた、この子たちは放出する魔力のコントロールができるんだな。賢い子たちだ、ここを出たら、きっと優秀な魔法使いになれるだろう。


消耗する子どもたちに点滴しながら、土器にはぐいぐい魔力を詰め込んでいたら、オレも相当疲れた。周囲の魔素で補ってはいるけど、ちょっとやり過ぎたかも知れない。不幸中の幸いは、昼食が思ったよりちゃんと出たことだ。魔力持ちの子が消耗しては困るのだろう、ミックよりはずっと上等な、村人の食事くらいの量は出されていた。

延々とこんなことを続けて、夕方あたりだろうか?やっと終了を告げられた。またあの小部屋に帰るのだろうと思ったら、どうやらランクアップしたようで、他の子達が共同生活する場所に移された。うーん、人の目が多いから、むしろあの小部屋の方がオレは助かる…。

「お前はコレを着けろ」

さて部屋に入ろうとしたら、ぐいっと胸ぐらを掴まれ、首元にカチャリと何かをはめられた。

「これ、なに?」

少なくとも呪いグッズではない…。

「ふん、お前は魔力が多い。万が一があっては困るからな」

言い捨てて扉を閉められた。触れてみると、固い金属っぽい素材の…首輪だろうか?完全に円形になっていて、どうやって着けたんだろう?そしてどうやって外すんだろう…。


「君、魔力多いんだね。」

部屋の中は、たくさんの子どもたちで、さながら学校の教室状態だ。数人の子が寄ってくると、オレの首輪をジッと見てそんなことを言う。

「それ、着けられるのは魔力多い子だよ」

「えっ…そうなの?これなあに?」

「わかんない。でも、たぶん、魔法を使えなくする道具?」

えっ…?!まさかと、慌ててレーダーを確認しようとするが、発動していない!こそっと土魔法を試したが発動しない…!

ええっ!どうしよう…魔法が使えない…回復も使えない……あっ!収納が使えないと短剣も取り出せない!?いや、チュー助はラピスといるから…1本はある。で、でも…もしかして、召喚も使えない!?

「(モモ…シロ…?)」

『マズいわね…魔法が使えないのはマズいわよ』

『ぼくがゆーたを助けるよ!』

恐る恐る尋ねると、二人の声が聞こえてホッとした。

「(二人とも、出てこられそう?)」

『多分、いけるわ。でもコードレスね。』

「(コードレス?)」

どうやら、オレの魔力は外に出せなくなっているだけで、なくなったわけではないらしい。召喚獣は、普段は電源プラグが繋がっているように、細々と主の魔力と繋がることで現世に留まり続けるので、今はオレの中にいるから留まってられるけど、外に出たら使えば使う分魔力を消費して、やがて送還されるらしい。今の状態で送還されると、この首輪がある限り召喚はできないってことか…。

「(オレの魔力をめいっぱい詰め込んで出てこられないの?)」

『無茶言わないでちょうだい!シロならある程度詰め込めるけど…それぞれ限度があるわよ!出ては戻って充電するしかないわね…』

「(うーん、転移とレーダーがないのはかなり危険だね…)」

ティアは戦いに向いていないし、チュー助も戦力にはならない。普段と変わりないのはラピスだけか…。

「(ラピス、そっちはどう?早めに戻ってきてくれる?)」

「きゅ?!」

早っ?!言った途端に戻ってきたラピス…あれ?チュー助は?

―ユータが呼ぶなんて緊急事態なの。チュー助は置いてきたの。

かわいそうなチュー助…とにかく事情を説明して、チュー助を連れ帰ってもらう。うーん、おいそれとラピスをおつかいに出すワケにはいかなくなってしまった。


「ここで寝るの、ちゃんと自分で用意して自分で片付けること!」

薄っぺらい敷物をそれぞれ敷いて雑魚寝するこども達。オレも入り口近くにスペースを確保すると、ごろりと横になった。考えなきゃいけないことがたくさんなのに…今日は疲れたから…眠くて……

横になった途端に眠ってしまったらしい。ぐっすり眠っていたオレは、乱暴に揺さぶられて目を覚ました。

「んむ……?!」

目を覚ますと同時に、がしりと口を塞がれる。何事?!目だけを動かしてオレを抑える手を辿ったら…

「んんん!」

「(声を出すなっつうんだよ!何のんきに寝てやがる…)」

しかめ面でこちらを睨み付けるのは、見覚えのある紫の瞳…。

「(てめえ……厄介なもんつけられやがって…)」

スモークさん!?大きく目を見開いたオレに、もう一度騒ぐなよと念を押されてから、ようやく口元の手を外してもらった。

『スモークさん、どうしてここに?!どうして分かったの?』

「?!(これは…念話?!お前、念話できるのか…)」

『元々モモ達とは念話?で話してたもん。それで、どうやってここに?カロルス様たちももう来るの?』

「(俺はコレだ。様子を探りに来た)」

そう言って見せたのは、小指にはまった指輪。あ!それ執事さんがつけてた、オレの居場所が分かる指輪だ!これで辿って転移してきてくれたのか。

「(お前…それ魔力封じだろうが…どうすんだよ…カロルスたちが来るまで、まだかかるぞ。ねずみ野郎が、隷属の腕輪の効果はないって言ってたが…問題ないんだろうな?!)」

『れいぞくの腕輪?あ、これ?うん、これの効果はなくなってるよ!魔力封じってこの首輪?そうなんだ、困ってるの』

「(困ってるじゃねーよ!てめえ…ぐーすか寝てたじゃねえか!!)」

『………騒いじゃダメ、静かに!…それで、これからどうしたらいい?』

素知らぬふりして、きりっと表情を引き締めて聞く。いい、スモークさん、おふざけしてる場合じゃないからね?

「~~~!」

痛い痛い!!無言で両頬を引っ張られて目が潤んでしまった…すぐ乱暴する…。

「(てめえはここで大人しくしてやがれ!魔法使えないんだろうが!!何もするな、お・と・な・し・く!してやがれ!あの白いチビは使えるんだろ?!)」

ラピスのこと?と頷くと、それなら十分だろうと彼は立ち上がった。

「(俺は情報をある程度集めてカロルスに合流する。もう少し待て。)」

『この首輪、外せない?』

「(普通は外せないが…お前は魔力が多い。内部から破壊できるかもな。でも今はよせ、目立つ。)」

それだけ言うと、フッと消えてしまった。

スモークさん…こんな危険な所で、わざわざオレの所に来てくれた。安心させようとしてくれたのかな…もうすぐカロルス様たちが来る…オレの胸の中は温かいものでいっぱいになった。

魔法が使えなくても戦うことはできる、カロルス様たちの行動が始まったら、オレも全力で動こう。

『むしろ普通の召喚士よりはできること多いものね』

『主パーティの魔法使いと回復術師が抜けたのはデカイけど、召喚士と剣士と従魔術師はいるもんな!まだまだ一大戦力キープしてるって!』

チュー助は自分が活躍できそうだと、どこか嬉しそうだ。



まだまだ一人パーティ健在!

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