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203 本登録へ向けて

やっぱりタクトにとって正規の呪文使うのは難しいんじゃないかな?大人になってイメージ力がしっかりしたらできるかもしれないけど…。

「タクト、一回呪文なしでやってみて?」

「何言ってんだよ…呪文なかったらできねーよ!」

「できるよ!単に剣に魔力を纏わせたらいいだけだもん。」

魔法剣っていうのは、カロルス様たち上位の剣士が使う、剣技の初歩みたいなものだな。カロルス様たちは無意識に周囲の魔素を使っているけど、魔法剣はごく普通に自分の魔力を使って魔法を纏わせている。攻撃魔法として使えるほどの魔力をもたない剣士が、魔法を纏わせて直接切ることで、斬撃+αの効果を狙っているみたいだね。

「そんなこと言われても…どうしたらいいか全然わかんねえ。」

途方にくれるタクト。うーん…やってみせたからって出来るとも思えないし…こうしたら分かるかな?

「んー、じゃあ、タクトの腕を通してやってみるから…しっかり感覚掴んでね?」

「やってみるってお前…できんの?」

「さあ?多分できるんじゃない?」

「お~ま~え~なぁ!」

まあまあ、やってみたら分かるって!有無を言わさず、タクトの右手をとるとすうっと剣の先まで魔力を通す。炎は危ないし…風ぐらいがちょうどいいかな?軽く風の魔法を纏わせると。刀身に沿って渦巻くような風が出現した。

「う……わ…やりやがった…これが、魔法剣…。」

「やっぱりユータは魔法剣の授業受けないで正解だね~。」

感動の面持ちで剣を眺めるタクト。ラキの視線が生ぬるいのは気にしないことにした。

「どう?分かりそう?」

「ああ……なんっとなくだけど、剣にしゅーっとしてぶわーってするんだな!ちょっと分かったぜ!」

へえーそう…それ全然わかんないけど、本人が分かっているならいっか。

タクトは『しゅーっとして、ぼうっ!』ってつぶやきながら練習に入ったようだ…。それ、察するに炎纏わせようとしてない?もっと離れてやってね…?


タクトが離れて練習する間、オレとラキもそれぞれ練習する。ラキは最近小さな指輪なんかも加工できるようになって、ますます本領発揮な感じだ。パーティでお揃いのアクセサリーとか作ろうって話もしてるんだ!チームメンバーっぽくていいよね!

『ゆーた、最近はお外行かないの?またお肉食べに行こう?』

退屈したのか、シロが鼻先でぐいぐいとオレの脇腹をつつく。お外でバーベキュー、楽しかったもんね!高級肉にするとみんな食べ過ぎるから…普通のお肉でやるのもいいかもね!

「シロ、お外はお肉を食べにいく所じゃないからね~?お外で料理するのは本当は危ないんだよ~?」

『そうなの?!じゃあ、じゃあ…シロ、ガマンする。でも…もし…もしゆーたがお外で作る時は、シロがちゃんと側で守るからね!』

へたりとしっぽを垂らしたかと思えば、フンス!と顔を上げる。頼もしいかぎりだよ…フェンリルの護衛…うん、頼もしいかぎりだよ…。


「うおおお!!できたっ!!見ろー!できたぞっ!!」

突如響き渡ったタクトの大声に、オレとラキが飛び上がる。

「ほらっ!ほらーっ!!すげーだろ!!サンキューエビビ!!」

「わ、ホントだね~!それは…水?」

「水を纏ったんだね!すごーい!!」

タクトが振り回す剣は、確かにうっすらと水を纏い、オレの目にはごくわずかに発光して見える。

「色々やってたらさ、エビビがなんか言ってる気がして。エビビのこと考えながら、じゃーってやったらできたんだ!!」

全然わかんないけどとりあえず良かったね!!エビビは完全に水の召喚獣だもの、サポートしてくれたんだろうか?…エビが??

「でもやっぱ火だよな!火ができるまで練習するぜ!!」

タクト的には魔法剣と言えば火らしい。確かに見た目はカッコイイもんね!

「ゆくゆくは炎の剣、タクトって呼ばれるんだ-!!」

タクトの目標は常に高いところにある…。




「はい、おめでとう。最後の依頼達成ね!」

ジョージさんはここぞとばかりに、タクトをイイコイイコしながら頬ずりする。「なんか痛てぇ…」の呟きは聞こえないことにした。

「これでランクアップ試験に臨むことはできるけど…おねえさんはあんまりオススメしないなぁ。ちいさな子は無茶しがちだから…」

少し表情を曇らせたジョージさん。きっと、色々あったのだろう…こんな小さな子どもが危険な所へ行く…歓迎されるはずがない。

「…実力に見合った依頼にするよ~。」

「そうだよね…ちゃんと、気をつけるね。」

「へへっ!心配いらねえって!オレ強くなったし!」

タクト……。

「いでででっ!なにっ?なんだよ!?」

オレとラキ、左右からほっぺを引っ張られて涙目のタクト。

「「タクトの面倒はちゃんと見ます…」」

「うふっ、二人はしっかりしてるわねぇ。駆け出しの兄さんたちよりずっと頼もしいわ。でもね、気をつけるのは魔物だけでもないし、君たち自身が悪いことに誘われないか…経験や知識が少ないとね、善悪の判断ができなくて騙されちゃうの。」

なるほど…言葉巧みに犯罪方面へ誘われることもあるのか…。それは確かに子ども自身では防げない。気付いた時には抜け出せなくなっているのだろう。

「何をしてるのか、大人の人にお話しするね。ナイショ話もできる人がたくさんいるから大丈夫だよ。」

「…そうね、きちんと自分がどんなことをしてるのか、お話しすることが大切ね。ユータちゃんは良く知ってるのね。」

そう言ったジョージさんは、少し悲しそうだった。ここにいれば、否が応でも悲しい知らせを聞くのだろう。そのたびに胸を軋ませるのは、どれほど辛いことだろうか。

冒険者は自己責任、それは、他人の辛さを思えばこそ、とっても重い言葉だと思った。


「さあ、それでも君たちは受けるんでしょう?ランクアップできても、きっと、無茶はしないと信じてるからね!あなたたち、まだ生まれて数年よ?何を捨ててもいいから毎日無事に帰ってくるのよ?」

吹っ切るようににこっとしたジョージさんに、オレもふわっと笑った。

「うん!ありがとう」


ジョージさんに教えられ、オレたちはランクアップの手続きと試験を行う。簡単な試験なので、裏の試験場ですぐに行えるそうだ。

「私が行きたいのにぃ~!」

「ダメです!ただでさえ、サブギルドマスターのお気に入りだから、ズルしてるんじゃないかって声が出てるんですから!」

駄々をこねるジョージさんの鼻先でドアを閉めて、少し厳しい顔をした男性職員がオレたちを見回す。

「本当に、ズルしたりしてませんね?あの人は仕事自体はできるので大丈夫だとは思いますが…」

「そんなら試験してよ!それで分かるんじゃねえの?」

待ちきれないタクトが男性職員に詰め寄った。

「そうですね…では、各登録項目について…こちらの職員の前で披露していただきます。…おや、全員魔法を使えると。では、まず魔法からですね。」

「オレは魔法じゃなくて魔法剣だよ!魔法剣士だよ!!」

「まあ、どちらでも良いですよ。あちらの的へ、魔法をぶつけてください。魔法剣なら斬ってかまいません。」

よしっ!こっそりラキを見てカンニングしながら、杖を取り出す。うんうん、杖を忘れがちだから気をつけないと。

適当な百人一首の句を呟きながら、小さなウォーターを発動させて的へぶつける。見事に的に当たって、ぱちゃんと弾けた水球。的を壊しちゃったら勿体ないもんね、ちょうどいいくらいでしょう!

ラキは得意のロックを無詠唱で、タクトはとうとうできるようになった、火の魔法剣で的を燃やして意気揚々だ。

「な…なんと。本当にみんな使えるのか!実戦レベルじゃないか!」

「そうだぜ!頑張ったもんな!!」

タクトの満面の笑みが眩しい。彼は本当に頑張っていたもん、胸を張って良いと思うよ。


「あとはそれぞれ担当の元で能力を披露して貰おう。加工師ラキ、あちらへ。魔法剣タクト、こちらへ。召喚士…ん?召喚士?君、普通に魔法使ってなかったかな?それに…回復も?」

「ユータは剣も強いぜ!」

「タクト!それ書いてないから!」

「あっそうか。今のナシー!」

両手でバッテンを作るタクトにがっくり…別に剣術のことは知られてもいいけどさ…それ以外のことはバラさないでよ…??

「ふーむ。そんなに欲張って登録してもよくないぞ?いいのか?実力に満たないと判断すれば、君は不合格になるが…。」

「うん!大丈夫だと思う…思います!おねがいしますっ!」

職員さんは、仕方ないと言いたげな瞳で頷いた。


ユータ:オレも「召喚士ユータ」って呼ばれたかったのに…。



ちょっとした思いつきで短編(ショートショート?)書いたので手持ち無沙汰な時にでも!短く書くのって難しい…。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >>適当な百人一首の句を呟きながら やはり……光系の魔法はハゲなのだろうか(坊主札的な意味で
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