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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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198 歴史の変わるとき

「白犬さん、あなたにご指名よ。ふふ、この調子だとあっという間にポイントが貯まるわね。でも、配達だけじゃだめなのよ?色々な依頼を経験しなきゃ、ランクは上げられないわよ?」

「うん!ありがとう。じゃあ今度はお掃除も受けてみようかな…草むしりも簡単そうかな?まほ…召喚獣の魔法を使ってもいいの?」

「もちろんいいわよ?ちゃんと依頼が達成できるなら手段は問わないわ。魔法を使える召喚獣もいるのね、その年でそんなに召喚できるなんてすごいじゃない!」

受付のお姉さんは、にこにことオレの頭を撫でてくれた。ジョージさんはサブギルドマスターなのでなかなか忙しいらしく、毎日受付にいるわけじゃないようで…タクトは心の底からホッとしていた。

「でもね、失敗して庭を焼き払っちゃったり家を水浸しにしちゃったりすると、罰金がかかるから気をつけるのよ?」

なるほど…きっとそういう被害があるんだろうな。仮登録レベルの使う魔法だもん、きっと「あるある」な出来事なんだろう。


「じゃあ、いってきまーす!」

今日も授業の合間に配達屋さんだ。なんだかすっかり『白犬の配達屋さん』として定着してしまっている気がする…。中には多分、シロを触りたいだけの人も…。依頼品を受け取りに行ったら、依頼者がさんざんシロと触れ合って、じゃあありがとうってドアを閉められそうになったことが…シロをモフる料金じゃないからね?!配達料だからね?!


「エリーシャ様たち、大丈夫かな…。」

配達の合間に、ふと不安になって空を見上げる。ラピス情報では、今日ついに王様との謁見がはじまるみたいなんだ…。

『誰が行っても大丈夫じゃなさそうな気がするわ…一番見込みがあるのはセデスちゃんじゃないの…?』

「でもセデス兄さんが行くわけにはいかないし…。」

執事さんもエリーシャ様も、冷静なようでそうでもないから…むしろ最後の最後で踏みとどまれるのはカロルス様の方って気がする。エリーシャ様も執事さんも、キレたら王都破壊して帰ってきそうだ。そうなったらきっとラピスは止めないだろう…穏便に…穏便にいきますように…!


* * * * *


「―それは、地方で他種族の軍を編成し、謀反を企むつもりではないのか!」

「ロクサレン伯は、陛下の覚えがめでたいことを笠に、勝手な行動が過ぎる!この場におらんとはどういうことだ!地方に他種族を集めて何を企んでいる!」

予想通りの展開に、謁見の間でエリーシャは密かにため息をついた。

「謀反など、なぜ私たちがそのようなことを。そもそも、軍の必要がないことくらい、分かっておいでではないですか?にわか軍など、足手まといなだけです。」

エリーシャとグレイから漂う気配で室温がぐっと下がり、怖気が走ったような気がして、近衛兵は思わず腰の剣に手をやった。発言を行った貴族は青い顔で腰を抜かしている。

「控えよ!王の御前であるぞ!」

すうっと薄らいだ圧迫感に、一同がホッと呼吸を再開した。


何か言いかける側近を制し、エルバート王がおもむろに口を開いた。

「書状でおおよそのことは把握した。…わたしは賛成だ。」

「へ、陛下!?」

「そなたらも知っておるだろう、エリーシャの言った通り、ロクサレンは兵など必要としていない。そも、国の方から頼み込んであの土地を治めてもらっている。その言いぐさは、こちらの不義理というものだ。」

そもそもそれが気に入らない、といった表情を察し、これは長くなりそうだと、王はため息をついた。

「…先に新興宗教についてだ。天使教の方は、民草に広まる宗教だが…悪影響はないのか?」

「はっ…。こちらは司祭から聴取しております。元々、神信教は貴族が中心ですので、民草に広がる新興宗教に影響は受けません。また、信仰対象も神の使わす『天使』であるのが分をわきまえておる、という次第です。」

「なるほど。それで狼藉を働く者が減るならば問題はあるまい。宗教の発生を止めるのは中々厄介だ。」

どうやら天使教と犯罪発生率の関連を数値化して見せたことで、納得するものが多かったようだ。ユータの言う、『データを示す』ことの効果に、エリーシャは内心舌を巻いた。


「陛下、他種族との交流については…。」

「ヴァンパイアが人であるかは、追って調査すれば分かること。識者で調査団の編成を行う。その他種族も含め、交流についても、私は国のためになると思っているが。」

「恐れながら陛下、そのように甘いお考えでは他種族にこの国を乗っ取られてしまいます!ロクサレン伯は、それを狙っているやもしれんのです!」

口々に反対する貴族に、エルバート王は少し呆れた視線を寄越す。

「なぜそう思う?カロルスにあの土地を手放せと言えば、喜んで手放すだろう。貴族の位すら不要なヤツだ。ようやくつけた手綱を、お前達が外そうとしているのがわからんのか?言うことを聞かんでもいい、手綱がついていることが重要なのだ。」

さすが、エルバート王、よく分かっている…エリーシャは少し安堵した。きちんとエリーシャの前でその発言をする王に、国への信頼を回復させる。


「しかし……脅威になりますぞ!?いっそ、全て剥奪すれば良いのでは?!」

「謀反の可能性があるのです、勝手な行動に処罰を!」

ふむ、アレと、アレですね…。雲行きの怪しい事態に、グレイは発言した貴族を一人一人記憶しておく。謀反を起こすならば、まずアレらを…いえ、例えばの話ですがね。おや、顔が土気色に…殺気は押えているはずですが。グレイの視線を受けた貴族は、死神の鎌をのど元に感じ、顔色を変えて後ずさった。


「……分かっておらんな、今で十分に脅威なのだ。アレは手綱がついたドラゴンだ。手綱があっても口輪はない、気に入らなければいつでも我らをかみ殺せる。それでも野生のドラゴンの危険度とは比較にならんのだ。味方であることに注力すべき相手だと心得よ!………それに…。」

王は唐突に玉座から立ち上がった。虚空を見つめてわずかにほころんだ表情に、家臣たちが訝しげな表情をする。


「お前たちには見えぬだろうが…今、ここには妖精が集っておる!歴史を語る者たちが…この沙汰の結果を確かめに来ている!私利私欲で醜い様を晒すでないぞ!!」


朗々と響いた王の声に、謁見の間はにわかにざわめいた。

「なっ…?!」

「よ、妖精?!」


『おや、バレておるの。魔力視のできる王じゃったか。声が聞こえればよかったのじゃが。』

『ゆーたのおうえんにきたー』『れきしのかわるときー』『たちあうのー』


見る者が見れば、謁見の間は、姿を隠した妖精たちで溢れているのが分かったであろう。チル爺とラピスの呼びかけで集まった妖精たちは、エリーシャたちを守るように、周囲に集まっていく。王の視線の動きで、家臣達は妖精の動きを知る。その小さな淡い輝きは、ひとつ、ふたつと重なり、二人の周囲は色とりどりの輝きに溢れた。

「こ、これは……!?」

「なんと…美しい。」

眩いばかりに重なった光に、優秀な近衛をはじめ、武勇にすぐれたものから、その輝きを捉えはじめた。

『ふむ、これだけ重ねれば見えるようじゃの。』

『ひとのおうよー!』『よきほうへすすめー!』『ひかりのみちびきのままにー!』


「この、光は…?まさか…まさか、チル爺さんたちが…?」

「…私たちは…守っているつもりで、ユータ様に守られてしまいましたね。」

「ユータちゃん…。」

エリーシャは熱くなる目頭を押さえた。


エルバート王は、眩しげに目を細める。

「……妖精の光に包まれて、私の目には、まるでそなたらは神の使者のようだ。我らはもう少し、他種族との交流をはかるべきなのかもしれぬ。」

「そんな……。」

反対派が青ざめる。太古から生き続け、数々の重要な場面で助言を残した、心正しき妖精。妖精たちがロクサレンの味方をする…それはこの謁見の行く末を決定するに、不足のないものだった。



―ルー、ありがと…!上手くいったみたいなの。

ラピスは、ユータの望む通り、平穏に事が動き始めたことに安堵して呟いた。



妖精トリオの尊大な台詞は伝承の本の台詞を言っているだけ…

チル爺、たまには大活躍!


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― 新着の感想 ―
[一言] ↓ユータさんじゃなかった
[気になる点] カロルス様はあの土地を手放すのかな
[一言] トリオの発言だったのか ユータさんが頼んだ大元だから代表となったのかな
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