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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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193 食卓戦争

「もー!ユータ遅いよ!」

今度はセデス兄さんが頬を膨らませる。ごめんなさい~先輩たちの話がとてもためになるものだったから、つい聞き入ってしまった。

「お前の登録祝いをしたかったんだが、ご馳走を持ってきたのがユータだからなぁ…エリーシャもいないし、ランクが上がったらまた祝いをしようか!」

「カロルス様ありがとう!でもお祝いはいいよ…恥ずかしいし…。」

「そんなこと言って、父上は美味しいものが食べたいだけなんだから、ユータは気にしなくていいんだよ!」

「おう、祝いは何回あってもいいだろ!美味いもんが食えて損はないぞ!」

ちっとも堪えずに豪快に笑うカロルス様。ふふっ!そっか、カロルス様が美味しいもの食べたいなら仕方ない!

「じゃあ、オレも何か作るよ!」

「ユータのお祝いなのにユータが作ってたら意味ない気がするけど…。でも僕もそれ食べたいし…。」


「さあ、最高級肉の美味いところ、熱いうちにどうぞ!」

セデス兄さんが何やら葛藤しだした所で、ジフと料理人が大量のお肉を運んで来た。一緒に連れてきた美味しい香りに、お腹がえぐられそうだ!じゅわっとお口に唾液があふれて、慌ててお口を閉じる。

どーんと大皿に盛られた、オレの頭より大きなかたまり肉。ジフが気取った手つきでナイフを入れると、みるみる溢れる肉汁…。切り分けられたかたまり肉は、断面の見事なワイン色をさらして艶めいている。

「お…美味しそう…。」

ごくり、と喉が鳴った。ゆるんだ幼児の小さなお口から、たらりとよだれがこぼれる。

『しあわせ……ぼく、もうしあわせ……。』

たまらず出てきたシロが、充満するお肉の香りを必死に吸い込んで陶然としている。


ジフが切り分けたかたまり肉をはじめ、肉・肉・肉のオンパレードだ。さすがに肉ばっかりどうかと思ったところで、やっとサラダ類が並べられた。

「さすがに美味そうだ!ユータ、シロ、でかしたぞ!ジフも見事な仕事だな!よし、食うぞ!!」

「いただきますっ!」

ナイフとフォークを引っつかむのももどかしく、ばくっ!と一切れ、お口に放り込む。

…う…わああ…。思わずうっとりと目を細めて手を止めた。お口の中でとろけていく柔らかな肉質、それでいてがつんとしっかりと肉を主張する焼き目…ああ……美味い。

異世界牛(?)、侮り難し…シロ、お手柄だな…これが食べられるなら、それだけで冒険者になった意味がある!…かもしれない!!肝心のシロはすっかり美味しいお肉でトリップしている。幸せゲージが上限を振り切って大変だ。

「……うまい。」

まるで最初の一口を噛みしめるかのように、重々しく言ったカロルス様だけど、既に相当量のお肉を消費している。ちょっと!独り占めしたらダメだよ!

「最っ高だね…シロ、ホントありがとう!!あんまり見つからない種類だからさ、お金を積んだからって食べられるものじゃないんだよ!」

こちらも顔に似合わずがつがつとお肉を平らげているセデス兄さん。オレ、オレ…まだ一口なのに!!じっくり味わって食べてたのに…!この人たちに美味いものを渡してもダメかもしれない。

そんなことを考えつつ、オレも負けじと食卓戦争に加わっていく。

チャキチャキーン!オレが取ろうとしたお肉を、横からスッとかすめ取ったセデス兄さん!しかしさらにそのフォークが何者かのナイフに弾かれ、お肉は空中を舞って…。

シャッ!

電光石火でキャッチしたのはカロルス様のフォーク!

「「ああっ!」」

「うむっ!うま……っ?!」

満足そうに頬ばったカロルス様の後頭部に、銀のお盆がくわん!と命中した。

「…はしたないですよ?もっと落ち着いてお食事なさってください。」

「「は、はいっ!」」

にっこり微笑んだマリーさんの圧力に、冷や汗を流しながらぴしっと座り直す。そうでした…エリーシャ様と執事さんがいなくても、マリーさんがいるんでした…。



「うぅー食べ過ぎた…お腹いっぱいすぎる…。」

『ぼくもお腹いっぱいすぎる…しあわせもいっぱいすぎる…。』

『もう!食べる量考えなさい?!気持ち悪くなっちゃったら勿体ないでしょ!』

その通りですー。とりあえず、しばらくお肉はいいやって気分だ。なんとか転移してベッドに戻ると、苦しいお腹と、たっぷりの満足感を抱えて、ことんと眠りに落ちた。



「おはよ~。」

「んー…ラキ?おはよう!」

ラキの声で目が覚めて、白銀のもふもふした海から顔を出す。シロはいつも寝ている時に出てきて、ベッドにミチミチに詰まっているんだ。狭いだろうに…どうして毎回出てくるのか。

「…ユータなんかいい匂いするんだけど~…また秘密基地でお料理とかした?」

そう言われると…昨日いい匂いが充満したお部屋でお肉三昧して、そのまま寝ちゃってた…。

「どうやって秘密基地に行ったのかな~?なんて思ったりしたけど気にしないことにして~、今日はどうするの?タクトは授業があるし、秘密基地に行く?それとも依頼見に行く~?」

「依頼見に行く!」

一も二もなく決定事項だ!オレはともかく冒険者として動くことが楽しくて仕方ない。冒険者ギルドに出入りするだけでとってもわくわくするんだ。

「それならもうちょっと早く起きた方がいいと思うけどね~。まあとにかく行ってみようか、街中のソロ依頼ならあるんじゃない~?僕も加工師の依頼がないか探してみようかな~?」


そっとギルドの扉を開けると、視線がオレのはるか頭上に集まり……下に移動する。そんなにあからさまに視線を下げなくてもいいじゃないか…。人知れずヘコみながら依頼のある一角へ行くと、既に人はまばらで、割の良い依頼はなくなってるであろうことがよく分かった。

「うーん、やっぱり街中の依頼はいつ来ても似たような感じだね~。」

「そうそう街中で変わったことってないもんね。」

掃除、力仕事、運搬、捜し物、そんなところだ…草むしりなんかもある。どれでもいいけど、シロがいるのでお届けものや捜し物の依頼なんかはピッタリだね。

「オレ、これ受けてみようかな?」

「いいのあった~?僕はいいのなかったから帰ってるよ?授業に遅れないようにね~!」

「うん!ありがとう!」


「よしっ!シロ、頑張ろうね!」

「ウォウッ!」

オレが受けた依頼は、お届け物。街の簡易地図をもらったら、自分でそこに書き込みながら使うみたい。しっかりした住所なんてないし、表札なんてほぼないから大変だ。依頼者さんから家の大体の場所と外観、届け先の人の特徴を聞いて出発だ。

「シロ、ストップー!この辺りにあるはずだよ!」

『黄色い屋根~黄色い屋根~。』

シロに乗って大体の場所まですっ飛ばして行ったら、ティアとラピス部隊も使ってお届け先を探す。とにかくシロが早いし、プチ人海戦術を使えるオレには、結構向いている依頼かも知れない。お届け先の匂いが分かるものがあれば、もっと簡単、シロの鼻で一直線だ。

「おとどけに来ましたー!はい、どうぞー!」

「まあ…こんなに小さいのに?ありがとう。ちゃんとお仕事できて偉いわねぇ。」

行く先々でいいこいいこされてご機嫌のオレとシロ。次の授業が始まるまでに、3件の依頼を片付けることができた。

「えっ…もうこんなに終わらせたの…?そ、そっか…その犬がいるから…便利でいいわね~!」

「うん!シロはとっても優秀だよ!」

『えへへ、ぼく、このお仕事好きだな!みんな褒めてくれるもん!』

シロがすっかりお届け物のお仕事を気に入ったようなので、今後はそれを中心に受けていこうかな?オレはほとんどシロに乗ってるだけの楽なお仕事です…フェンリルの騎乗スキルだけは上がります。


「こんにちはー、依頼をしたいのだけど。」

「はい、どういった依頼でしょうか?」

「白い犬の配達屋さんに、これを頼んでちょうだい。」

―ハイカリクの街では、時々街中をかっ飛ばす、白い犬に乗った幼児の姿を見かけるようになった。「早い・丁寧・かわいい」で有名なその配達人さんは、『白犬の配達屋さん』と呼ばれて重宝されたとか…。



そのうち郵便…じゃなくて配達屋さんのコスチュームができたりして!メイドさんとシーリアさんがタッグを組んで、ユータとシロのお揃い衣装なんかできたりして!



いつも読んでいただきありがとうございます!

書籍化に伴い、「ネット小説大賞」のページよりお祝いコメントが入れられるそうで…本の帯に使われたりするそうなので、ご興味のある方はぜひ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] シロとお揃いの制服。 間違いなく、エリーシャ様とマリーさんが気を失うヤツ! 絶対可愛いから見てみたいっ♡♡♡
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