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140 片鱗を見せる?

るんるん!なんて音が聞こえてきそうなほどご機嫌なメリーメリー先生は、スキップしながら教員室に戻った。

「メリーメリー先生ご機嫌ッス。いいことあったんスか?」

「ふふーん!今年はいい魔法使いが生まれそうなのよ!ウチのクラスにすごい逸材がいるの!」

「へえ、5組ッスか!今年は優秀なの揃ってるッスね~体術・武術系にもスゲーのがいるッスよ!羨ましい限りッス!」


「おや、メリーメリー先生のクラスには出来のいいのが揃っておりますな。文学にも秀でたのがおりましたよ。少々不真面目な態度が気になりますが、根は素直なようでしたな。」

「ウチの授業でも優秀なのがいるよ。覚えがよくて何でもすぐに習得してしまうんだ。将来優秀な薬師か学者になるよ。」

「すごい生徒の話だったら、私も聞いたよ。5組の生徒って言ってたんじゃないかな?召喚の授業で一発でいいの引き当てた子がいるって。」


その場にいた教員が次々と話題に入ってくる。自分の授業で優秀な生徒が輩出されたら鼻が高いもので、優秀な生徒の話は教員の間で共有されやすい。

「えっ?えっ?全部私のクラス??すっごーい!優秀な子がいっぱい!!ねえねえその子たち名前は?」


「ユータッス!」

「ユータ君、だね。」

「ユータ君です。」

「一際小さい子って言ってたような…。」


「……あれ………??」


ユータ君って名前、何人もいたっけ?メリーメリー先生たちは混乱した。



* * * * *


「ねえ、なんで先生が並んでるの?」

「さあなー退屈なんじゃねえ?」

体術の実技でいつもの運動スペースに移動したら、なぜかクラス担当の先生方がずらっと並んでいた。

なんだかこっちを見ているような気がしないでもない。


「今日は体術で習ったことを披露してもらうッス!先生方は見学に来ているだけなので気にしないように!」

実地訓練に向けて、各自の出来を見に来ているのかな?他のクラスの生徒まで見に行くんだね。

「なんだか見られてると落ち着かないよ~。」

「そうか?ギャラリーがいると嬉しくならねえ?」

タクトはすごいなぁ。オレはラキの気持ちに近いかな、ギャラリーがいたら緊張する方だ。まあ、今回は先生たちだからあまり気にならないけど。

「じゃあ、ユータは余るからいつも通り先生と組むッス。」

「はーい!」

うちのクラスは19人なので、ペアで行う訓練は一人あぶれちゃうんだ。オレたちは3人組だし、小さい相手はやりにくいのでいつもマッシュ先生と組ませてもらっている。


ゆっくりとした動作の型練習で、攻撃側と受け側の練習。オレが一通りの攻撃を行って、先生が避ける。なるべく大きく動作するけど、先生はやりにくいだろうな。オレが避ける番では、他のことを考えていたら先生にバレて、たまに早い攻撃が来るから要注意なんだ。

「ユータ、今日はちょっと速く行くッスよ?ちゃんと避けられるッスか?」

「大丈夫!」

カロルス様やマリーさんほどじゃなければたぶん避けられる!もしかして見学の人がいるから、先生も張り切っているのだろうか?宣言通り、いつもより速い攻撃。


「…やっぱ余裕ッスね?じゃあどんどん速くなるッス!」

わ、ちょっと!それ当たったら結構痛いよ?先生の攻撃は段々速くなる。ねえ、それって型の練習?普通に攻撃じゃない?!慌ててオレも本気モードに切り替えて真剣に避ける!避ける!まだ大丈夫、ラピス部隊の方が速い。

と、軽く飛び上がった所を狙う蹴り!空中回避は次の行動がとりにくい…仕方なく両足の裏で蹴り足を柔らかく受け止め、蹴りの威力をもらって高く遠く飛び上がって離れた。


先生が追ってこないのを確認して、くるりと回って着地する。


「「「「う……おおおーーー!!!」」」」


ビクっ!!突如わき上がった歓声に首をすくめた。

「ユータ、やっぱりこのくらいできたッスね!いつも余裕なんで試してみたかったんスよ!」

周囲の大歓声の中、マッシュ先生が爽やかな笑顔で言った。せっかく目立たないようにしてたのに…マッシュ先生のせいでバレバレだ。ラキとタクトがあーあ、と言いたげな視線を送ってくる。だって…しょうがないじゃないか!これはオレのせいじゃないよね?!


「ユータは将来いい武闘家になるッス!」

「先生!オレ武闘家にはならないよ?」

マッシュ先生が大げさに驚いた。

「ホラ!ほらほら!ねえ、ユータくんっ!ユータくんは魔法使いよねっ!?」

メリーメリー先生には申し訳ないけど…。

「えーとね、魔法も体術も使うんだけど…オレは召喚術師になるの!」


マッシュ先生とメリーメリー先生が、がっくりと膝をついた。

「そんな……召喚魔法もできるってホントだったんだ……。魔法使い…私の優秀な魔法使いが…。」

「こんなスゲー逸材が…召喚術師…動かないッス!召喚術師、動かないッスよ!!勿体ねえ……ッス。」


「ユータ、魔法使いなのにどうして召喚術もできるの?」

「どうやってそんな動けるようになったの!?」

先生達がざわめくのをこれ幸いと、クラスのみんなが集まってくる。

「そ、その、オレ、異国出身でしょ?それでね――」

ええい、この際異国設定大盤振る舞いだ!これで5組では気兼ねなく行動できるだろう!


蹲っていじける二人の先生を放置して、他の先生までいつの間にか輪に加わってふんふんと頷いている。

「なんと…小さな島国では独自の文化が開花するのが常だが、これほど魔法に特化した国を生むとは…見目も良いし、もしや祖先にエルフ系の血が…?いや、この色はあまり類を見ない…新種の可能性も…?」

「それって私たちにも適応されるのかしら?もしかして食生活の影響とか?興味深いわね…。」

文系の先生たちには研究対象として見られてしまいそうだ。素直に聞いてくれる6歳児たちは、自分たちも他の才能があるかもしれないと、目を輝かせている。うんうん、可能性はたくさんあるんだから、狭めなくていいと思うよ!




* * * * *


「ユータくん!見て!できるようになったの。」

デージーが嬉しそうに振り返った。

「あたしだって!!」

「僕が一番頑張ってるよ!だってできなかったの多かったじゃん!」

ひみつ特訓は順調だ。

3人は一通りの基礎魔法を使えるようになって、鼻高々だ。ひみつ特訓では、イメージの強化をはかるために呪文の解説をしてみたんだよ。これがどういう意味で、この時点で魔力をどうしていくといいのかイラスト付きで解説したのが良かったみたい。他の魔法はできる面々だから、簡単にコツを掴んでくれた。

今後もせっかく習うであろう呪文を抜きに考えて行くのは難しいと思ったので、ラキ以外には呪文をベースに教えることに決めた。これなら周囲から浮いて悪目立ちすることもないだろうし、後々の詠唱省略もやりやすいと思う。


「みんな頑張ってるね~!」

「うん!すごいよ!」

オレとラキが微笑むと、3人は複雑そうな顔をする。

「頑張ってはいるんだけどねえ……それ見ちゃうとなんだか余計に遠くなった気がするわ。」

「お前ら段々むちゃくちゃやるようになったな…。」

「わ、私ももっとがんばるよ…。」


テーブルセットに座って粘土で遊ぶ……もとい、土魔法の練習をするオレたち。

ラキは元々加工師を目指すくらい器用なので、土魔法と相性がいいと思って便利魔法を色々教えている。いちいち呪文を考えないといけないので面倒だし、覚えるの大変だと思うんだけど、ラキには呪文がある方がいいらしい。

「大地の精よ、数多の土よ、ここに集い僕の望む形となれ!クリエーション!」

なので、いちいちバリエーションを考えなくていいように適当に汎用性のある短い呪文にした。


この、土魔法で色々なものを作れるってことがラキの心にクリーンヒットしたらしく、彼は夢中になっている。

ラキは魔力がさほど多くないので、休憩所なんかを作ることはできないけど、小物やテーブルくらいなら作れるようになった。しかも無駄に食器に模様を入れたりするこだわりがある。

「ユータ、これ加工師にとってもの凄く便利なものだよ!そこにあるものを加工するのが加工師なんだ~。ただの土、無から作れるって言うのは革命的だと思うよ~!加工の仕上がりを見本で示せるし、加工の前に具体的に説明できるから――。」

オレにとってはふうん?だけれど、すごいことだったらしい。加工師のこととなると饒舌なラキの話を適当に流しながら、オレも地図魔法の精度向上を目指して密かに練習している。

こういうの、いいな。

みんなで努力して、少しずつ強くなって、大きくなっていくんだな。努力すること、成長すること。前世ではむしろ辛かったり煩わしかったりしたけど、今はとても愛おしく感じた。




そして全然関係ないのに恨まれる召喚術の先生。

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