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136 召喚

「―ふーん、つまりお前が教えたってバレたらだめなのか。」

「うん!ウチの秘伝だから!……たぶん。」


なんとかタクトに納得してもらって、授業でオレが教えたってバレないようにあの呪文は使わない約束をしてもらった。

「あれはね、きっかけの魔法だから、一度使えたらきっと普通の呪文でも使えるようになるよ!」

「へえ、そうなんだ!よーし練習するぜ!!」

「でもタクト、やりすぎたら魔力なくなっちゃうよ~!」

「へーきへーき!倒れてもいいようにベッドでやるから!」

それって全然平気じゃないよね…?魔力がなくなると、生命維持にも支障が出てくるので、枯渇する前に意識がシャットダウンされてしまう。魔力ゼロの子は、ほぼ生命維持にまわす分しか魔力がない子たちだ。成長と共にある程度増えるのが普通だから、大人だったら普通は魔法使えると思うけどね。ただ、「明かりを10秒灯す」とか「火花を出せる」ぐらいかもしれないけど。


「ユータ、僕が使える秘伝はないの~?」

「うーん、あるかもしれないけど…今思いつかないよ。だってラキ習った魔法全部使えるじゃない。」

「他の秘伝ってどんなのあるんだ!?剣の技とかないのか?」

「剣ならチュー助に教えて貰ったら?」

「えー……。」

『なんだこのガキめっ!この俺様に教わる誉れを拒否するっていうのか!?』

空気の読めるねずみは、自分の名前が出たらここぞとばかりに出しゃばってくる。


『主ぃ!ちょっと俺様構えてみてよ!俺様の指導を見せてやるんだ!!』

もう…出たがりなんだから。断ったら断ったで結構面倒なヤツなので、仕方なくチュー助とナイフを両手に構えて腰を落とす。

『たっぷり!たっぷりめのたっぷりで!』

催促に応じて魔力を注いでやると、なるべくチュー助に意識を集中して力を抜くようにする。

『オゥイエー!主の魔力最高!いくぜっ!!まずは構えっ、シャキーーン!』

シャキーンと促される魔力のままに構え、薙ぎ、払う。いちいち『スパーッ』とか『くるくるジャキーンンッ』とか気の抜ける効果音が腹立たしいが、オレの体を実際に使って技を見せて(?)くれるのはこれ以上ない指導だ。ガンガン魔力を使われるのでオレは結構疲れるんだけども。

「はい、おしまい!これ以上は疲れるよ。」

『えーノってきた所なのに!俺様まだやれるー!』

そりゃチュー助はやれるだろうさ!使ってるのはオレの魔力でオレの体だからな!


「うっわー……ユータそれやばいな。えげつねえ…お前魔法使いなんだろ…?魔法使うわ剣使うわってそれどうなの…。」

「僕は魔法しか無理そうだなぁ…。ユータって本当に…優秀なのかぽんこつなのか…よくわからないね~。」


…どうしてみんな素直に褒めてくれないの!オレちゃんと頑張ってるのに…今度エリーシャ様たちに褒めてもらいに行こうっと。


「魔法使いでも剣使える人はいるよ!執事さんは剣も上手だったよ。それにね、オレ魔法使いでも短剣使いでもなくて、本当にやりたいのは召喚術なんだ!」

「「………何言ってるかわかんないよ…。」」



オレは説明した。この国ではなぜか職業が分かれているけど、オレの国では召喚術師も回復術師も従魔術師等も全部『魔法使い』ってこと。魔法が使えるなら向き不向きはあるけど、どれにもなれる可能性があるってこと。

思い込みを取っ払えば、ラキだって他の職業にも適性があるかもしれない。お馴染み設定、異国文化は便利だ!


「そうなんだ……ユータの国の人達ってすごいんだね…!」

「ううん、多分ラキたちだって一緒だと思うよ!」


「そうかなぁ…じゃあ僕も召喚できたりするかな?」

「結構向き不向きがあるから分からないけど、どれも初歩ならできることもあるんじゃないかなぁ?」

「おおー夢が広がるな!俺だって召喚できるならやってみたいぜー!」


うーんタクトは魔力が少ないからなあ…召喚できるだろうか。結構魔力を使うって書いてあったからなあ。でも何事もやってみて損はないだろう。


「じゃあみんなも召喚の授業、一緒に受ける?」

「うん!やってみようかな~!」

「おう!もちろん!」

やったー!これで召喚の授業も一緒に受けられるね!

実はそろそろ必須の授業以外にも選択できる時期に来ているんだ…!召喚術とか従魔術はかなり特殊な部門になるから、座学でちらっと習うだけで実技は自分で選択しないと受けられないんだよ。


でも、いよいよ、いよいよだ……やっと召喚術を学べる…!!オレは、うまくできるだろうか?これでみんなを呼ぶに違いないと思ってきたけど、本当にそうだろうか?



…もし、違ったら。

夜、ベッドで横になっていると急に不安が押し寄せてきた。

やっと手が届く所まで来て、もし違ったらどうしよう。


―違ったら、また他の方法を探せばいいの。ユータはまだ時間がいっぱいあるの。

ラピスが優しくほっぺに体をすり寄せた。柔らかな毛並みと、ほのかな温かさが伝わってくる。ラピスやティアにはちゃんとオレのことを話してある。ティアが理解しているかどうかは分からないけど、じっとオレを見つめて寄り添ってくれていた。


「ラピス、ティア…ありがとう。そうだね、方法が見つかるまで探すだけだね。」

インターネットも通信機器もないこの世界で、それがどんなに大変なのか分からないではないけれど。でも、今やれることをやっていくしかないもんね。

小さな二つのぬくもりに安心して、オレはそっと目を閉じた。




* * * * *


「召喚とは、神秘の御業。他の職業とは違うのです。召喚の才があるならば、誇りに思いなさい。」

召喚の実技などの特殊項目は、外部の先生が行う。召喚の先生は…何というか、ツンとしていてあまりいい印象を受けない。

「(なんだアイツ…なんか腹立つな!)」

「(偉そうだよね~!)」

両側からこそこそ話しかけてくるので、先生に睨まれる。先生!オレじゃないです!!


「では召喚陣を。まず初歩の初歩、基本の召喚呪文ができなければ先はありません。次からは来なくて結構です。」

1回でふるい落とされるのか…だから人気ない職業なんじゃないの?またもや長ったらしい呪文だけど、オレは唱える気がないし、二人には呪文の言葉そのものを覚えて唱えるより、メモを見ながらでもイメージがきっちりできる方が大切って言ってある。

配られた召喚陣とやらは、円の中に色々と図形なのか文字なのか不明な物がたくさんかき込まれた、まさに魔法陣って感じだ。召喚っていうのは、この召喚陣に秘密があるんだろうか?


「この神秘の召喚陣は、召喚者の魔力を増幅し、魂となって彷徨う生命の、在りし日を一時的に呼び戻すものです。正しき呪文を唱え、適性がある者だけが、召喚陣から召喚獣を喚ぶことができるのです。契約を結ぶことができれば、還しても再び魂となって術者の周囲に留まり、再び喚びかけに応えるでしょう。」


召喚獣は、魂の存在…!!それに姿を与えるための生命魔法か…!だから生命魔法に強い適性があるんだな。なるほど…そうか、チュー助の時を思い出せばいいんだな…!!


「では、各自説明の通り行うこと。いいですか、喚ぶのはスライムです。生まれて間もないものを。魂は長く生きたものほど重く、強いのです。身の丈に合ったものを喚ばないと、よしんば喚べたとして術者が食われて死にますよ。」

さらっと怖いことを言うな…ドラゴン喚びたいなんて言っていたタクトがビクッとした。


集中、集中だ。まずは、スライム。

召喚陣…きっとこれはナギさんを喚ぶ魔法陣と似たものだ。ここと魂のある場所を繋ぐゲートになっているんだろう。スライムは初心者でも簡単に喚べると言うけど、失敗したら教われなくなっちゃう。念のために周囲の魔力も根こそぎ集めて深く深く集中する。

ふい、とオレの胸の内が熱くなったような気がした。


何かが…来た気がする。


「おいで……オレのところに。……召喚!!」

ありったけの魔力を込めてゲートを開いて呼び寄せる…!

ぶわりと輝いた召喚陣に、ごそっと引っこ抜かれるように大量の魔力が抜けて、オレは思わずへたり込んだ。スライムを喚ぶだけで…こんなに消費するの?!オレ、魔力多いって言ってなかった?周辺魔力も使ったのに……?


荒い息をつきながら、徐々に光の収まる魔法陣を見つめる。

……そこに現われたのは、ぽてんとオレの両手におさまるほどの…桃色のスライム。これ、成功だよね?見たことない色だけど、スライムには違いない。危なくはないよね…しばしじいっとスライムを観察する。


「………あれ?」

見たことないスライムだけど、おかしいな、既視感を感じる。それも…懐かしい感じ。

そっと手をさしのべると、スライムはぽんと弾んで飛び乗った。オレは目の前に持ってきてまじまじと眺めると、首を傾げる。


「………亀井、さん?」

ふるっとスライムが震えた。

―よく分かりましたね。ええ、当たりよ。

オレは目を見開いた。亀井さん…あの亀井さん……??喚べたの?オレ……喚べたの!?

―とくべつサービスよ!だって私この姿になりたかったから、特別に頑張って割り込んだのよ。素敵でしょう?

ふよんふよん、と上下に揺れて得意げな亀井さん。


「……ホントのホントに亀井さん?……オレ、オレ……ごめんね。」

ビックリした。まさか、1回目で喚べるなんて思ってなかったから…。嬉しさと切なさと、安堵と…いろんな感情がないまぜになって、ぽろぽろと頬を伝う。


―謝罪なんて必要ないのよ?ほら、変に思われるから涙を拭いてちょうだい。あなた、随分小さくなったのね?私が大きくなったの?

「…ふふっ!オレが小さくなったんだよ。でも亀井さんもちょっと大きくなったかな?」

オレは桃色のスライムを抱えて、頬をこするとふわっと微笑んだ。



もうこんな時間……(-_-;)

すみません投稿遅くなりましたー!

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― 新着の感想 ―
[良い点] そっかぁ〜 やっぱり人じゃなかったか。 今後、どんな子達が戻って来るのか楽しみです♪
[良い点] ずっと気になっていた、ユータの召喚したいモノ。 人なのか? 動物なのか?…と思っていたのですが… 早速1人目! 召喚したい理由も、今後明らかにされると思うので楽しみ♪
[一言] 最初、このあたりは「???」でした。 だって、最初の転生のくだりでも、「みんな」が人間じゃないなんて全く書かれていなかったですからね。 今現在はモモとシロのあたりで暫く間があいたので読み返し…
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