12 フェリティア
えっと・・・どういうことでしょうか。
とりあえず回路を切って、ぜえはあしているチル爺に向き直る。
「えっと・・何かだめだった?」
「ぬし・・・・いや・・こやつはまだ年端もゆかぬ子どもじゃ、知らんでも仕方ない・・・・・わけなかろう!知らんからと言ってできるもんでないわ!!」
・・・チル爺は一人でボケて一人で突っ込んでは地団駄を踏んでいる。お年寄りだしね・・そっとしておいてあげよう。
「ひとのこ、どうして はなの まりょくを きゅうしゅうできるのー?」
「ふつうはね、『たしゃのまりょくは ふかしん』っていうんだよ!」
「まりょくじょうとの まほうはあるけど それとはぜんぜんちがうねー?」
ほうほう、『他者の魔力は不可侵』かな?でも、こないだドレインもどきをしちゃった時はそんなに驚いてなかったのに?
「ドレインは、もれでるぶんの まりょく を きゅうしゅうしてるのー!」
「ほんたいの まりょくは ドレインで うばえるけど きゅうしゅうは できないのー!」
「ドレインは ふつう まものや ようせいの すきるなのー!」
うーん、ドレインは本体の魔力と、漏れ出る周囲の魔力を一緒に引っ張ってきて、漏れ出ていた分だけ吸収しているってことか。・・え?ドレインって魔物のスキルなの・・?お・・オレ、ちょっと特殊な生まれ(?)だけど魔物じゃ・・ないはず。ないよね??
「そうじゃ!なに当たり前のように吸収しておるんじゃ?!」
しれっとチル爺が混ざってくる。
「それにのぅ、言ったじゃろ?それで作った酒は神酒にも劣らぬと・・それだけ特別な植物なのじゃ!その魔力を取り込むなど・・」
「からだに わるい?」
「悪いわけなかろう!むしろ良いわ!羨ましいわ!!」
チル爺また怒ってる。でもいいんだったら・・みんなも一緒にやってみたらどうだろう?吸収できないって言うけど、案外やってみたらできたりするんじゃない?
おもむろにチル爺の小さな手を取ると、右手を妖精涙滴に添える。
「チル爺、ひだりの おててで ふぇりてぃあ さわって!」
「な、なんじゃ?」
チル爺は戸惑いながらも、ちまっと苔に手を置いた。
急に魔力を流して負担があるといけないので、チョロチョロと流し始める。
「おおおおおお・・」
チル爺が顔を紅潮させて奇妙な声をあげた。チル爺を回路の一部と思えば、魔力を流すのは簡単だ。ただ、チル爺自身は吸収したり魔力を流したりしていないので、単にオレと妖精涙滴の魔力を通しているだけになる。
数秒魔力を流して、ゆっくりと終了した。
「どう?吸収できた?」
「これは・・・・・・素晴らしい。」
チル爺は自分の両手を見つめて体をワナワナと震わせている。
「「「ひとのこー!やりたい!」」」
ちびっこ妖精たちにせがまれて、もう一度妖精涙滴と接続する。今度はオレと苔の間に3人入っているので、うまくいくだろうか?そうっと魔力を通し始めたが、一周回ってきた魔力はかなり薄くなっている・・妖精涙滴の負担が増えるとよくないので、オレの魔力をさらに追加して回した。
「きゃー!」「すごーーい!」「おもしろーい!」
妖精たちは大騒ぎだ。
「のぅのぅ、これ、またやりに来てよいか?何か珍しいものを持ってきてやるから!の!」
こっちはチル爺。随分お気に召したらしい。ちなみに吸収できたかは微妙だけど、あれだけ本体から離れると、漏れでた魔力と同じ扱いになるらしく、オレの体を通しさえすればある程度は吸収できるみたいだ。
散々騒いだあと、チル爺から話を聞く。
「お主が一体何をどうしておるのかは、この際考えんことにして、これは・・すごいものじゃ・・そうとしか言えん。妖精涙滴の魔力を通すことで、世界樹に抱かれているような心地じゃ。我ら妖精族にとって、何物にも代えがたい繋がりが、強化されているようじゃ。」
「どうしてせかいじゅ なの?ふぇりてぃあ なのに?」
とりあえず世界樹が何かは置いておこう。多分、妖精の崇める樹とか、そんなとこだろう。
「む?知らんと置いてあるのか?全く・・。これは世界樹の一部じゃぞ?」
「ええっ?!これ、大きな 樹になるの?!」
「これが世界樹にはならんわい。世界樹の一部と言ったじゃろ?世界樹が次の世代を育てる場所を、選定するための『目』じゃと言われておるの。」
「これ・・とってきて大丈夫だったの?」
オレ、世界樹の目を取ってきちゃったの??
「問題ないわい。珍しくはあるが、そこまで数が少ない訳でもないからのぅ・・酒に使っておると言ったじゃろ?必要なら世界樹がまた自分で生やすからの。」
お酒に使うって・・なんか罰当たりだな。
「じゃあまほうしよー!」「おはなしはおわりー!」「げんきいっぱいなの!」
ウズウズした妖精たちに急かされて、オレは魔法自主練の成果を見せる。
全身イルミネーションを披露したら、ちびっこ妖精に大ウケだった。・・・チル爺はどこか遠い目をしていた。
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