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間話 美味しい物の必要性

こちらはアルファポリス様の方で投稿した『お気に入り4000突破感謝』の間話です。


人によっては蛇足になりますので、ストーリーから逸れたくない方は読まれないことをオススメします。




以前トトがゴブリンに攫われたとき、思ったんだ。この村に美味しいものがもっとあったら、あんなにホイホイ着いては行かなかったんじゃないかって。



* * * * *


「今日はお料理をします!オーブン担当!」

「きゅ!」

「鉄板担当!」

「きゅ!」

「ミキサー担当!」

「きゅ!」

「切断担当!」

「きゅ!」

「サポート担当!」

「「きゅ!」」

「でははじめます!!」


オレはお庭で管狐たちをお供に張り切っている。村の人でも作れる、おやつや美味しいものを開発するんだ!レシピとして使えそうなら広めてもらわないといけないので、この場には現場監督みたいに仁王立ちして腕組みするジフがいる。

まずはトトに大好評だったクッキー。だけど、オーブンがないここでは温度調整はプロの料理人じゃないと難しいし、そもそも焼くための釜がない家庭が多い。だから、フライパンで焼くクッキーの試作をするんだ。

このときのために、管狐たちは日々担当に分かれて調理場に貼り付き、その技術を学んできたのだ!

「オーブン担当、鉄板担当、腕の見せ所だよ!頼むね。」

「「きゅー!」」

2匹が慎重にフライパンの温度管理をする間、オレはクッキー生地を作る。練らずに切るように混ぜる、この混ぜ方はまだ管狐には難しいらしく、生地を作ってまとめるまでがオレの担当。生地をまとめる時は、サポート担当がほどよく冷やして作業しやすくしてくれる。これを円柱状にしたら、切断担当が等分にカット!すかさずサポートその2が熱したフライパンに並べていく。

どうやら弱火でじっくり、がコツみたいだ。


「きゅう……。」

ミキサー担当がしょんぼりしている。大丈夫!君の出番はこれからだ!

「次はパンケーキ!ミキサー担当、出番だよ!」

「きゅっ!」

張り切ったミキサー担当が、卵白をあっという間にふわふわのメレンゲにする。手で作ったらすごく大変なメレンゲ、管狐たちは本当に頼りになるよ!

ベーキングパウダーがないから、オレはこれしかパンケーキを膨らませる方法を知らない。もう少し楽な方法があればいいんだけど。メレンゲをつぶさないよう混ぜるのはオレの役目。

パンケーキの生地ができると、クッキーをオーブン担当に任せて、鉄板担当がやってくる。大きい鉄板を弱火で熱して生地を流し込んでいけば、ふんわりバターの香りが漂った。


「よし次!切断担当、腕の見せ所!」

洗うのが面倒なのでキャベツらしき野菜を丸ごと浄化したら、ほいっと投げる。

「きゅー!」

切断担当が大胆に空中で木っ端微塵……もといみじん切りにしたキャベツもどきを、サポート担当が見事にボウルに収める。ちなみに切断担当はラピス。

これから作るのはお好み焼き!簡単に作れてアレンジが効いて、そして一応お野菜も食べられる!オレとしては緑黄色野菜を食べる機会を作りたいけど、まずは野菜でもガッツリ食べられるんだぞって所を見せないとね!

ナギさんが入手してくれた昆布や鰹節もどきは、今やだしに大活躍だ。和風のだしの味がこっちの人に合うか心配だったけど、お好み焼きなら大丈夫だろう。ただ、ソースがないから、くし焼きに絡めるようなお肉用のタレで代用するしかないね。

こんな感じの屋台料理なら作りやすいと思うので、たこ焼きなんかもどうかなと思うのだけど、あれは丸い穴の鉄板がいるからなぁ…。だしが普及すれば、おでんなんかもいいかもしれない!

熱した鉄板に生地を落とすと、じゅうじゅうと野菜の甘い香りとお肉の香ばしい香りが漂った。


「きゅっ!!」

お、クッキーが出来たみたいだ。オーブン担当の渾身のドヤ顔を見る限り、いい出来になったに違いない。熱々のクッキーは、まだ柔らかくてつまめば崩れていきそうなほどホロホロしている。

「熱っ、はふっ!うん、これちゃんとクッキーだ!美味しい!やったね-!」

まずはフライパンクッキー、これはこのレシピで確立だ!管狐たちとハイタッチしていると、パンケーキも全て焼き終わったようだ。

「お…おおー!これすごい!」

つつくと崩れそうなくらいふわふわと柔らかいパンケーキ…これ、オシャレなカフェとかで出てくるやつだよ!すごく贅沢なパンケーキ……!!これにはやっぱり生クリームもいるでしょう!さっそくミキサー担当が甘さ控えめで生クリームを用意してくれる。

「きゅう!」

おお、お好み焼きもいい具合に焼けたようだ。

「……素晴らしい。」

ジフがいつもの荒くれ顔を潜めて、料理長の顔でしきりとメモをとっている。どうやらお眼鏡にかなったようだ。


「できたか?」

テーブルを出してせっせと完成品を並べていると、いつの間にかカロルス様が座っていた。

「いい香りね~!楽しみ!」

「お腹空いてきちゃった!」

さらにエリーシャ様とセデス兄さんまで……。でもせっかく作ったんだから食べて貰いたいし、ちょうどよかったかな。たくさんあるから大丈夫!


「いいにおいー!」「これなあに?」「あまいかおりー!」

「ほっほ、これは美味そうじゃの。」

あれ、妖精さんたちも来たんだね!どうやらお目当てはパンケーキのようだ。

「ふふっ!みんなで食べようか。メイドさん達もどうぞ!」

あちこちから覗いていたメイドさんたちにも声をかける。執事さんも呼んで、みんなで試食パーティーだ。


「うまっ?!」

「美味しい…。」

あちこちで感嘆の声が漏れる。よかった、みんな気に入ってくれたみたいだ。

美味しいって感じる時って、一番自然な幸せだよね。食べ物が美味しい、それってとても大切で貴重なこと。知らず笑顔になるみんなの顔に、オレもにっこりした。




―美味い物はロクサレンにあり―

まことしやかに囁かれるその噂が各地に浸透するのに、さほど年月はかからなかったという。




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