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10 黒い影

投稿は何時頃がいいんでしょうね・・とりあえずは昼頃に投稿できるようにしようと思っています。


そっと・・そうっと・・・

しのび足で這いずる影に近づくと、目を凝らした。窓からの月明かりが、黒い影をほんのり照らしている。・・ふわっとした体毛、大きめの耳、ちょっととがった鼻。


一見して黒いねずみかと思ったけど・・これ・・・・・・コウモリ?腕の部分には小さく畳まれた翼膜が見えた。どうやら妖精涙滴(フェリティア)に向かって一生懸命這いずっているようだ。飛べないほどに弱っているようで、休み休みなんとか這っている状態だ。

と、コウモリがオレに気付いたようで、ビクリと小さな身体を震わせてこちらを見た。飛べたらすぐさま逃げていたのだろう・・見るからに焦った様子で、視線がオレと妖精涙滴(フェリティア)の間をせわしなく行き来する。


「だいじょうぶだよ、それがほしいの?あげるよ?」


思わずコウモリに話しかけて、驚かさないようゆっくりと近づく。お目当てらしい妖精涙滴(フェリティア)をそっと目の前に置いてやると、身をすくめて油断なくこちらを伺っているが、目線はチラチラと妖精涙滴(フェリティア)に向いている。


「どうぞ」

言葉は分からなくても、雰囲気が伝わらないかと声をかける。それでも逡巡していたらしきコウモリだが、サッと素早く花を口に入れた。すると、ほわっと花のいい香りと共に、微かな光がコウモリを包んだ。光が消えた頃には、先ほどまでうずくまっていたコウモリが、ちゃんと身体を起こしている。わさわさと試すように翼を動かすと、いざ飛び立たん!と机の上からジャンプしたものの、ちっとも高度が上がらず敢えなく墜落した。


「だ、だいじょうぶ?!」

思わず両手ですくいあげると、小動物特有の柔らかく温かい感触と、わずかな重み。どことなく気落ちした様子のコウモリは、オレが危害を加えないのが分かったのか大人しくしている。


見た目にケガはないけど、まだ弱っている様子だ。妖精涙滴(フェリティア)の花を差し出してみるが、もういらないとばかりに顔を背けてしまう・・

どうしたものかと考えて、マリーさんがかけてくれた回復魔法と、この間の魔法教室を思い出す。オレは生命魔法が得意らしいから、魔力で元気にしてあげられないかな?妖精さんに魔力を流してもらった時も、ドレイン発動しちゃった時も、魔力を身体に入れるのって心地よかったから、それをしてあげるだけでも違うんじゃないかな?


手のひらで大人しくしているコウモリを、両手でそっと包むようにして目を閉じた。

イメージ、イメージが大切、だね。小さなコウモリにたくさん魔力を流して害があったら困るので、少しずつ、かつ身体の内部の不調を治すイメージは・・


オレの明確なイメージに沿って魔法が発動する。穏やかな光がコウモリを包み、光の滴がぽたり・・ぽたりと頭上から滴る。


ほんの数滴のしずくを受けただけで、コウモリは見違えるほど元気になった。体毛はつやつやと、瞳はきらきらと輝いてオレを見つめている。

オレがイメージしたのは『点滴』だ。随分効果抜群の点滴だな・・


「よかった、とべそうだね。」

窓を開け放ち、外へ手を伸ばすと、微かな振動をオレの手に残して飛び立った。よろよろしていた様子はもう微塵も感じられず、目で追えないほどの速度で闇の中を飛び回っている。ほんのりと、コウモリの体温を残す手が、ちょっと寂しかった。

バイバイ、と手を振ると、スッと戻ってきて窓に貼り付き、何か口からはき出した。コロコロと転がったものは、カタンと椅子の足に当たって止まる。オレがそれに気付いたのを確認すると、コウモリは今度こそ闇の中に飛び去っていった。


・・なんだろう?コウモリがはき出したモノを拾い上げてみると、ガーネットのような深い紅の、飾り気のない小さなリングのようだった。今のオレの小指にはまるくらいの、本当に小さなリング。お礼のつもりだったのかな?右手の小指にリングをはめると、くすっと微笑んだ。ファンタジーのコウモリはなかなか義理堅いらしい。



ーーーーーー


翌朝目覚めて、すぐに右手を確認すると・・・あった。小指に小さな紅いリング。深い深い紅が、朝の光を透かしてきらめく。昨夜のことは夢じゃなかったみたいだ・・コウモリに会って、回復魔法モドキを使えた・・・・やっぱり窓は開けておくに限るね!




魔法らしきものを使えたことで、オレは朝から上機嫌だ。自主練にもさらに身が入る!魔素を色んな場所に集める練習、明かりの練習、そして日課になってる妖精涙滴(フェリティア)の魔力吸収。ドレインは危ないって言ってたけど、花の魔力を吸収するくらいなら大丈夫だと思うんだ。それに、これやると体調良くなる気がするし・・・毎朝青汁1杯飲むような感じで。


そうだ!コウモリにはできたし、いつも貰うばっかりだから、オレも妖精涙滴(フェリティア)に魔力渡せないかな?そう思って両手を翳すと、そうっとオレから魔力を注ぎ込むイメージをする。

-ふわわわわ・・

おっと!注いだらその分妖精涙滴(フェリティア)からも溢れてくる・・勿体ないな。ちょっと考えて、妖精涙滴(フェリティア)を包むように両手で触れると、右手から注ぎ、左手から回収するような・・オレと妖精涙滴(フェリティア)が回路のように繋がったイメージをする。


「おおお・・!」


なにこれ、すごい。心地よさ倍増、なんかキラキラと体が清められていくような気さえする。しばらくオレと妖精涙滴(フェリティア)の間でぐるぐると魔力をまわした。心なしか花の色ツヤもよくなった気がする。

これは、新しい日課に決定だな!




読んでいただきありがとうございます!

今日もいいことがありますように!


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