間話 妖精達の見せたいもの
「ブックマーク1000突破感謝」の際のお礼間話です。間話が追いつかなくて随分と後追いになってしまいましたが、楽しんで頂けると幸いです。
本編ストーリーと直接の関係が無い間話です。ストーリーから逸れたくない方は読まれないことをオススメします。
「ユータ、ユータ!」「ねえ、おきて?」「おきておきて?」
「……ううーーん……もう朝…?」
「ちがうよ!」「ちがうよちがうよ!」「まだよるのはじめだよ?」
賑やかな声に起こされて目を開けると、暗闇にぼんやり光る3つの光。妖精トリオ、こんな時間にどうしたんだろう?
「どうしたの?何かあった?」
「あのねあのね!」「こんやはとくべつなひ!」「ユータにもみせてあげるの!」
うん?さっぱりわからないけど、とりあえず何か悪いことが起こったわけではなさそうだ。
「いこう、いこう!」「こっちにきて!」「あんないしてあげる。」
「えっ?こんな時間にどこ行くの?ちょ、ちょっと待って!」
ぐいぐいと服の裾を引っ張る3人は、意外と力が強い。こんな時間に窓からも玄関からも出るのは無理だよ……。
―ラピスが連れて行ってあげる!
言うが早いかふわっとフェアリーサークルが発動し、オレは寝間着のままで村の外に立っていた。妖精たち、置いてきちゃったよ…待ってたら分かるかな?
「ラピスさま、はやいの!」「まってー!」「いっしょにいこうよ!」
しばらく待っていると、ふわふわ飛んできた妖精たちが小さな石を差し出した。何やらびっしりと文字が刻まれている。
「おばーさんからあずかったの。」「てんいするよ!」「チル爺のおばーさんなの!」
石を受け取ったものの、これどうするの?
「まりょく、とおして!」「いっしょにてんいする!」「ぎゅっとしてる!」
妖精トリオがオレにしがみついた。てんいって、転移かぁ……チル爺がふわっと消えるあれかな?そっと魔力を流すと、刻まれた文字がうっすらと光って……フェアリーサークルと同じ感覚がする。ふわりと光に包まれたあと、再び暗闇に戻る。
「ここはどこ?」
夜目の利くオレの視界には、一面の木々が見える。森の中だろうか?魔物は…大丈夫そうだ。
「ここはみずうみのちかく!」「ようせいのもり!」「せいいきのちかく!」
えーと、前に聞いた聖域の近くにあるっていう妖精の住む森で、湖の近くなんだね?だから魔物の反応が少ないんだ。オレが来ちゃっていい場所なのかな?
「ラピス、オレの気配をなるべく消しておいてくれる?」
―いいよ!でも気にすることないの、ラピスがいるの!
ありがとう!でも、妖精たちに嫌な思いさせたくないしね。ところで、どうして真夜中にこんな所へ?
「もうすぐ、もうすぐ!」「はやく!」「こっちこっち!」
妖精たちに急かされて歩くと、すぐに湖のある拓けた場所に出た。静かな湖面が月を写して輝き、静謐なそれは、いつもルーと遊ぶ湖のような雰囲気だ。
「わあ……妖精がいっぱいいる……。」
そこかしこに舞う光は、妖精のものだ。どうしてみんな集まって来ているんだろう?
ポ……ポ、ポ…
「わ……。」
湖の周囲に生えた花から、色とりどりの蛍のような光が次々と生み出され、周囲に漂った。
種みたいなものだろうか……小さな光に彩られた湖は、とても神秘的だ。
「綺麗……。」
ふわ…ふわと漂う光は、やがて拡散するように広がって消えていく。
ああ…残念だな。段々と暗闇に戻っていく景色が名残惜しい。
「みててね、みててね!」「ちゃんとみてね?」「すごいの!」
見るべきものは終わったのだとばかり思っていたけど、まだ見せたいものがあるらしい。
漂う光がついに消え去ろうかとする時、再び視界に光が戻ってきた。
「湖が……!」
鏡のようだった湖面がわずかに波立ち、水中から光を帯び始めた……!
中に何かあるのだろうか?七色に輝く湖は、きらきらと輝いて宝石のように光を放っている。
「……すごい…。」
その光景に、オレは息を呑んだ。周囲にはきらめく七色の光のかけらがちりばめられ、湖はまるで巨大なサンキャッチャーのようだ。
「ほら、ユータみたい!」「みせたかったの!」「ユータのひかりとにてるの!」
「えっ?」
「ほっほ、来たの。すばらしいじゃろ?今日は年に一度の神事じゃ。」
チル爺がおめかしした姿で現われた。
「神事?」
「そうじゃ、この湖はの、妖精が生まれる場所じゃと言われておるよ。」
「湖から、うまれるの?」
「うむ、ヒト風に言うと……妖精の魂が眠る場所、かの?この輝きは、次に生まれるたくさんの妖精達の魂なんじゃと。先に花が光っておったろう?あの花から妖精が生まれるのじゃ。」
「そうなんだ……。不思議…。」
オレは周囲に満ちる優しいきらめきに、うっとりと目を細めた。妖精の魂のきらめき……だからこんなに生命力に溢れて美しいのかな。
「ユータもね、こうなの!」「こんなふうなの!」「きれいでしょ!」
「そうじゃ、こやつらがの、どうしてもユータに見せたいと言うから……。」
「オレみたいってどういうこと?」
「お主の輝きはこれと似ておる。どうじゃ、美しいじゃろう?お主はこんな風に輝いておるよ。」
「えっ……!?こんなに、きれいなの…?」
「そうじゃ!すごいもんじゃろ?」
どこか自慢げに言うチル爺が可笑しくてくすくす笑うと、妖精たちも笑った。
オレの魂はこんなに綺麗に輝いているんだろうか?
もしそうなら、この光を大切にしていきたいな……。
「ありがとう……こんなにすごいものを見せてくれて。見られて、良かった……。」
連れてきてくれた妖精たちに感謝を込めて、にっこり微笑むと、妖精達を肩に乗せ、オレたちは再び湖を見つめた。
本日更新する予定はなかったのですが、お礼間話を書いて投稿していなかったのでこの機会に投稿致しました!
いつになるか分かりませんが、またぼちぼちとお礼間話書いていきますね!






https://books.tugikuru.jp/20190709-03342/