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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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101 ブラッシング

うーん……お日様がまぶしい……まだ寝かせて……寝ぼけまなこのオレは夢うつつで窓を閉めた。愛しの暗闇が広がると再びベッドに潜り込む。

昨日は酷い目に合った……あれから深夜までマリーさんを慰める羽目になったんだから。最終的にオレを思う存分すりすりしてご機嫌がなおったみたいで、それは良かったけど……オレは大変疲れました……おやすみなさい。



コンコン!

「……ユータ?まだ寝てるの?」

コンコン!

「おーい、開けるよ?」

んー今何時だろう?ちょっとスッキリした頭で見回したけど、あたりは真っ暗。あれ?朝じゃない?

ガチャ……

「おはよう、ユー……何コレ?!真っ暗だ!ユータ、どこにいるの!?」

「セデス兄さん、今、朝?どうして暗いの?」

セデス兄さんのために、ふわっと魔法で明かりを灯す。

「いやいや!暗いのはこの部屋だけだから!うわっ何コレ!何したの?!」

「えっ?なにもして……」

―ユータが窓閉めたの。開けたらいいの。

ごめんなさい、オレでした。窓があった場所にドカンと埋め込まれた土壁を見て頭を掻いた。


「ホントに……寝ぼけて家を破壊したりしないでよ?!」

窓を塞いだ土壁を取り除いたら、お外はちゃんと明るかった。今はもう昼前らしく、オレがあまりに眠そうだったので朝ご飯も起こさずに寝かせてくれていたみたい。まぁ、眠かったのはみんながオレ一人置いていったせいだけどね!

「ユータお腹すいてるだろうから早めのお昼にしようかって言ってたんだよ。」

それを聞いてお腹がぐぅと鳴る。

「うん!おなかすいた!」

にこにこしながら階段を下りていく。今日のごはんは何だろう?街で色んな食材を買ったから、それでまた何か作ってみるのもいいな。そうだ、ハイカリクの屋台は肉ばっかりだったから、今度地球の屋台料理を披露するのもいいかもしれないね!


* * *


今日はオレのお寝坊により訓練がお休みになったので、お昼ご飯を終えたら取り急ぎ行かなくてはいけない……そう!ルーの所へ!!



「ルー!!ただいまー!」

一足飛びにまふっと抱きつけば、しっかりとした厚みのあるふかふか毛並み。以前よりさらに獣臭の強くなった大きな体をなで回す。

「ルー、お風呂入らないと臭くなっちゃうよ?洗ってあげようか?」

「……風呂は入ってもいいが洗うのはいらねー。」

「どうして?気持ちいいよ?」

「めんどくせぇ。泡は嫌いだ……。」

「……ルー、洗うの苦手なんだ?」

ぴくりとした左耳。

「……別に。めんどくせぇだけだ!」

嘘ばっかり~!なんかそわそわしてるもの。なんでお風呂は好きなのに泡が嫌いなんだろうね?

よーしオレがきれいにしてあげる!

「ラピス!お風呂の石けん持ってきて!」

「きゅっ!」

「まっ、待て!洗うとは言ってない!」

「もう、いつまでも汚れたままではいられないでしょ!今日はね、特別なブラシをもって来たんだから!きれいにしてからブラッシングしてあげるね!」

「なに……。」

あ、揺れてる揺れてる。ぐらつく気持ちと共に、ふさふさしっぽもそわそわと揺れている。


「きゅっ!」

「ラピスありがと!よーしじゃあ洗っちゃおうか!」

「待てっ!ちょっと待て!!」

「何を待つの……ちゃちゃっとやっちゃおう!さあ、あったかいお湯~ざばー!」

オレは水を出してからお湯にしなくても、直接お湯を出すことができるようになったんだよ!あまりに高温になると、ちょっと難しいんだけどお風呂の温度はよく使うから、もう楽勝!だって館のお風呂はシャワーがないでしょ?だから……ね?

「いきなり湯をかけるな!目に入るだろうが!」

さて、じゃあ洗うよ!熱めのお湯に石けんを溶いてまんべんなくルーの体にかける。

「あっ!バカ、やめろ!」

ルーがぎゅうっと目をつむった。

「……もしかして、ルー、目に石けん入るのがイヤなの?」

「…………めんどくせぇだけだっつってるだろ!」

そうですか、はいはい!じゃあしっかり目をつむっててね?

うん、しっかりと目を閉じて棒立ちになったルーはとても洗いやすい。お湯に濡れた毛皮がぺったりして、随分とスリムになった姿は、ますますクロヒョウっぽくなった。ふんわりした毛皮がない分、盛り上がる筋肉がよく分かる。随分ガッチリした体をしてるなぁ……ザ・肉食獣!だね。

背中の方は全然届かないのでよじ登って洗う。ガチガチに体をこわばらせていて、ちょっとかわいそうなので、なるべく手早く済ませていった。


「ふう。こんなもんかな?」

目も口も耳もしっかり閉じてされるがままになっているルーに、ザバーっとお湯をかけて泡を洗い流していく。大きいから大変だったよ……体力つけといて良かった!

「……終わったな?この野郎!」

「ぶわーっ!?」

泡が完全に流れると、間髪入れずにちらりと目を開けてこちらを確認し、一気にブルブルーッとされた……これ痛い!もはや水滴が痛いよ!!

「もうっ!向こうでやってよ!」

「フン、待てというのに勝手に洗うからだ!」

「待ってたらいつまでたってもできなかったよ!大体、なにを待つの?」

「……心の準備?いや、気合いだ!気合いを入れる時間がいるからな。」

ルー、澄まして言い直しても、どっちもカッコ悪いからね?なんで洗うのに気合いがいるんだよ……。

「もう……毎日洗うようにしたらもう少し慣れるんじゃない?はい、乾かすよ~!」

水分をあらかた飛ばしてから『ドライヤー』する。これは気持ちいいんだ……目を細めて満足げな表情をしている。こういう時魔法は便利だね。手持ちの小さいドライヤーじゃいつまでかかるか分からないけど、魔法なら広範囲にすればいいだけだ。


「はい、出来上がり!」

「……俺は食い物じゃねぇ。」

まだちょっとふて腐れてるルーのために、取りいだしたるものは!高級ブラシー!

「さ、約束のブラシだよ~!ブラッシングしよう!」

ルーは興味ないですよ、って表情でごろりと無言で横になる。でも、耳としっぽが興味津々だ。

洗い立てのさらふわ毛皮……ああ!最高の触り心地!!ブラシをあてて、地肌をマッサージするように滑らせると、漆黒の毛並みがさらに艶めいて輝いた。

なんて楽しい……これぞwin-winの関係だね!オレはもふもふを堪能できるしルーは心地いいし。さらに艶ぴか毛皮になれるおまけ付き!

鼻歌を歌いながら大きな体をブラッシングする。まだまだブラッシングするスペースがあるからね!これはやりがいがあるよ。


金の目を細めて満足そうに、ぱたり、ぱたりと揺れていた尻尾が、だんだんと動かなくなって沈黙する。寝ちゃったね……眠っていても時々ぴくぴく動くしっぽが楽しい。

全身仕上がったルーは、本当に美しい……オレは大満足だ。神獣の名にふさわしい輝きがそこにあった。

眠ったルーに背中を預けて座ると、両手を差し出した。

「さあ、二人もブラッシングしようか。おいで?」

「きゅう!」

「ピピッ!」

ぽん、と手のひらにのっかるラピスとティア。うずうずそわそわしているのがなんともかわいいな。

「ふふ、じゃあ一緒にやろうか?」

順番にしたら後になった方が切ない顔をしそうだったので、同時進行でブラッシングする。左手に一緒にのせて、柔らかく軽く撫でるようにブラッシング。うっとりとするお顔がなんとも愛おしい。小さな体はあっという間に終わってしまうから、丁寧に丁寧に仕上げていく。

「いつも一緒にいてくれて、ありがとうね。」

うとうとする2匹を、ルーのふかふか毛皮に乗せてあげると、空中へ目をやった。

「ふふ、忘れてないよ?おいで!」

「「「「「きゅ……きゅきゅー!」」」」」

ぽんっと現われてオレの胸元に飛び込んできた5匹。忘れられていると思ったのか、目をうるうるさせている。ひとしきり撫でて、アリスから順番に並んでもらったらブラッシングだ。もふもふのしっぽを丁寧に()いてあげると、とても嬉しそうだ。


「またね!いつもありがとう!」

管狐たちがぽんっと消えると、今度は森に視線をやった。

「ふふ、いいよ!おいで?」






ルー、やっとブラッシングできたね!

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