1052 裏情報
「ねえっ! 何か討伐依頼でも受けに行こう!!」
2人の部屋へ飛び込みざま、鼻息も荒くそう宣言した。
「え~珍しいね~? 何かストレスになることでも~?」
「よっしゃ行くか!!」
くすっと笑うラキと、元気に跳ね起きたタクト。
今日ばかりは、ばっちりノッてくれるタクトがありがたい。
だってさ……おかしいよね?! よくよく考えたら、別に何も悪いことしてないのに。それなのに、どうしてこう何かをやらかしたかのように言われるんだろうか。
『よくよく考えて、やっとそこに気が付いたのね』
さっさとベッドへ飛び乗ったモモがぽんと弾み、チュー助が肩を竦めた。
『でもさあ、俺様やらかしには入ると思うんだぜ!』
不都合なセリフは聞かなかったことにして、むすっとむくれたままベッドに飛び込んだ。
「何か、こう……大規模討伐でもやりたい気分だよ!」
せっかく王都に来たっていうのに、オレはガウロ様のところへ行って怒られ溜息を吐かれ、ロクサレン家の面々には嘆かれ、そして今日またガウロ様の所へ……。
よく考えて?! 功績だよ、功績! いいことをしたの!! ……たぶん。
まあ、少なくともチル爺たちにはとてもいいことだったはず。
そして、その諸々を追加で乗せられたガウロ様にとっては……うん、まあ。
大変だよね、通貨とか違うし。一体何でやりとりするんだろとか。やり取りの窓口は王都にも作るのかとか。
オレは、チル爺たちとやり取りするだけだから、何ら大変じゃないけど。
……なんとなく、ガウロ様に同情心が芽生えてしまったけれど、そんなはずはない。一番理不尽な目に遭っているのは、きっとオレのはずだ。
とにかく、何度も肩身の狭い思いをすることになって、オレは大層フラストレーションが溜まっている。
カロルス様じゃないけど、こういう時は思い切り体を動かすのが吉だろう。
「でも、魔物が多かった森は、この間結構狩っちゃったもんね」
オレが、というよりはラピスたちが。
「Cランクの討伐じゃつまんねえよな! どうする? なんか探すか?」
「また聞いてみる~? 『情報屋』に~」
ぽんと膝を打った。なるほど! こう言う時こそ使うべきだ。
「――というわけで、来たよ!」
「……いいけどよぉ。お前ら、アレどうやったんだよ……前回の森。多かったはずの魔物、どこ行ったんだ」
胡散臭そうな顔で、胡散臭いシュランさんが鼻づらにしわを寄せた。
「討伐したよ?」
「だからどうやったっつってんだろが! カロルス様がいたわけでもねえのによ」
そこは企業秘密だ。ラピスがバレてはよろしくない。ロクサレン家が実に国家規模で最強であるということが、バレバレになってしまう。別にラピスがいなくても、最強だとは思うけど。
「でさ、何かねえの? 楽しくガッツリ討伐できるようなアイディア!」
「そして、ちゃんと素材が採れるやつ~」
ちゃっかりラキが条件を付け加えている。
「ンーー。お前ら、どこまで派手にやる? 今、王都の外れで騎士らが対応予定の大規模討伐案件がひとつ、一般冒険者が請け負いやがった、ヤバそうなのがひとつ」
「一般冒険者一択なんだけど?!」
「まあそうなるよなー。騎士から横取りしたら、さすがに怒られそうだし」
「大規模討伐を横取りできるかよ! まあいい、一般のヤツだな? こっちならまあ、対価もほどほどだな」
「請け負い『やがった』ってことは、実力が不足気味~?」
首を傾げるラキに、シュランさんがにやりと頷いた。
「分かってんじゃねえか。王都の方はよぉ、冒険者が溢れてるからな。ギルドも田舎ほど親身じゃねえっつうか、そこまで手ぇ回んねえっつうか。自己責任論が強ぇんだ」
ああ……だから、ハイカリクのように止めてもらえないんだ。
「けどさ、それってそいつらがちゃんと討伐できんなら、俺ら行ってもしょうがなくね?」
「あっ……それはそう」
だって彼ら自身は可能だと踏んでいくわけだし。
「なんでてめえらにこの話をしたと思うんだ」
ふん、と鼻で笑ったシュランさんが、手のひらを差し出した。
なに? とにぎったら『違うわ!!』と叩き返される。
「こっからは金!」
「あ、今回はお金なんだ~」
「フツーは金だからな?! これなら銀貨3枚でいい!」
安……。オレの感覚では、情報って結構高いものだと思ってたんだけど、そうでもないらしい。
それとも、たまたまお安い情報なんだろうか。これだと、ディナー代金より安いくらいだ。
「それで?! 早く話聞かせろよ!」
身を乗り出したタクトに、シュランさんがまあまあ、ともったいぶって咳払いなどしている。
「これは、ただの情報っつうか、俺への依頼のうちだな」
「依頼? そういうのもあるんだ!」
「依頼の斡旋っつうかな。まあ、成約するかどうかは賭けだけどな。てめえらがコレを受けりゃ、俺としてもめでたく成約でありがてえ」
へえ、そういうシステムもあるんだ。本当にグレー領域のギルドって感じだね。
「どういう依頼~? どうしてギルドに出さなかったの~?」
「そこだ、何で俺を利用するかってえとな、他人にバレないようにっつうやつだ。依頼者は、冒険者の……まあ、知人って言っておくか」
なるほど……。ギルドでも公になるわけではないけれど。でも、依頼内容から察することはできるもんね。
「――へ~、つまり見守っているだけでもお金になるってことか~おいしいね~」
「全然おいしくねえよ?! それ、退屈なだけじゃねえか!」
「オレのストレス発散は?!」
どうやら、冒険者を心配する人からの見守り依頼だそうで……。うん、それはちょっと公にはできないね。本人たちにバレそう。
満足そうなラキとは裏腹に、話が違うとむくれるオレたち。
「馬鹿言ってんじゃねえよ、お前らが行く場所、分かってんのか? 俺は、Bランクパーティのお守りを、Cランクに依頼してるわけだが? つまり、てめえらは余裕つうわけか?」
「そんなわけないよね~? ユータたちが考えなしなだけで~」
にっこり笑うラキに、しゅっと姿勢を正す。
わあ危ない。どこから情報が洩れるか分からない。
「へえ、結構危ねえんだな! じゃあいいぜ! お守りは交代ですりゃあ――いてぇ!」
軽い音と共に、タクトが後頭部をさする。痛いですむんだ、それ。
若干身を引いたシュランさんに、ラキが爽やかな笑みで頷いた。
「じゃあ、それを受けようかな~? 僕らにも報酬が入るってことだよね~?」
「あ、ああ。ただし、ギルドの『ランクアップ』向けのポイントは入んねえぞ」
「それはそうだよね~」
「その代わり……報酬は、割りがいいぜ?」
にやり、笑うシュランさんに、オレたちは少し視線を交わして肩を竦めた。
そこは、まあ、どっちでも。
「……てめえら、何をエサにすりゃ食いつくんだよ?! 難しいんだよお前らは!!」
髪をかき回してのけ反るシュランさんは、まだまだオレたちの情報が不足しているらしい。
「素材かな~」
「強い魔物だろ!!」
「そりゃあもちろん、目立たず危なくない、面白そうなもの、だよね」
「最後! そんなもんがあるかよぉお!!」
カウンターを叩いて怒るシュランさんに笑って、オレたちは詳細な情報を急かしたのだった。
昨日の夜投稿するはずだった分~






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