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95 野外ランチ?

屋台の並ぶ一画は、冒険者の人たちでとても賑わっていた。ガツンと胃袋を刺激する香りに、おなかが空腹警報発令中だ。


「おーどれも旨そうだな!とりあえずそこの串焼きにするか!」

ずんずん歩いていくカロルス様に、逞しい冒険者たちが思わず道を開けていく。やっぱりAランク、オーラが違うよ・・どう見てもカロルス様が一番強そうだもん、ガラの悪そうな連中が「あぁん?!」と言いたげにじろりとこちらを見てはすいっと目をそらしてるからね。


ここの串焼きは、でっかいお肉にぶっとい枝をぶっ刺して、たれを絡めて焼いたものだ。串焼きの店はたくさんあるので、前にニースたちと行ったお店とは違うね。とりあえず肉だ!食え!!って感じの大胆さがいい!

「おぅ、オヤジ5本くれ!」

「はいよ!」

・・・えっ?5本とな?

「ご、5本?!」

「うん?間違ったか?5人分だろ?」

「それ1つで3人分ぐらいあるよ?!」

「あ、お前あんまり食わねぇもんな。残ったら俺が食うから大丈夫だ。」

いやいやオレだったら1つで6人分ぐらいあるからね?!あーあ、オヤジさん聞こえないふりして焼きはじめちゃってるし・・まぁいいか、カロルス様たちよく食べるもんね。

焼くのに時間がかかりそうだったので他のお店ものぞいてみる。なんだかなぁ・・ここの人たちは肉さえ食えたらいいみたいで、肉の店がほとんどで野菜なんてやっと見つけたスープのお店ぐらいだ。とりあえずお野菜たっぷりのスープを確保して・・・。

「あ、カロルス様これどうやって持っていくの?」

「あー全部持つの面倒だな!お前、収納に入れろ。できんだろ?かばんの中に入れるふりしてよ?」

できますけど・・あんなに怒られた割には気軽に魔法を使う許可が出る不思議。やっぱり便利なものは使わないとね!

汁ものなんて収納にピッタリのものだよね!別の空間だから揺れることもないし絶対こぼれないもの。

これだけで十分だと思ったけど、カロルス様はパンに挟んだお肉と小さく切られたお肉も買ってしまった。なんとか全部を人数分買うのだけは阻止できたけど・・一体何人でパーティーするつもりですか?!

あとはオレのたっての希望でお口直しの果物ジュース!これはカロルス様にお任せで選んでもらったよ。

「ま、昼だし屋台で買うならこんなもんでいいか。」

とりあえず納得したらしいカロルス様と連れだって戻ると、みんなで門をくぐる。

「あ、あの貴族様・・その、馬車は・・?」

「あら、ご心配ありがとう。すぐそこでランチをするだけだから大丈夫よ。」

「・・・・・・ら、ランチ??」

勇気ある門番さんの頭ははてなマークでいっぱいだ。ごめんね・・普通の貴族が外に出るなんて自殺行為だよね、そう言えば護衛さん置いてきちゃったし。


外には広大な草原が広がり、右手の方には森が見える。街道を逸れてしばらく歩いたら、やや小高くなった丘の反対側に陣取った。ここなら街道を通る人たちからの視線を遮ることができるし、日当たりもよくて気持ちいい。

さわわわ・・と草を揺らした風が、オレの前髪も揺らして通りすぎていく。森とは違って乾いた草の匂いがした。


「んー気持ちいいわね!さ、ここでお食事にしましょう。」

わーい!オレはいそいそとテーブルを準備する。下草が乾いていて気持ちいいから椅子はなくてもいいかな?低いテーブルにしよう!

「待て待て待て!ユータ!野外で食うときにテーブルは出さんでいい!」

「まあまあ!快適なテーブルが準備されちゃったわね!」

「もういいんじゃない・・なんかもう今さらだよ・・。」

野外でテーブルなかったら食べにくいと思うけどなぁ。みんなはあまりこういう風に魔法を使わないらしい。

テーブルにお皿を出して料理を置いていくと、じっとりした目をしながらセデス兄さんと執事さんが手伝ってくれた。

「わ、熱々だ!ユータの収納っていいね!」

ホントだ・・出来立て熱々のお肉にオレもビックリ。『維持』することを意識した収納だから、熱々もちゃんと維持してくれるのかな。

「あら、あなたが買ってきたら肉しかないと思ったけれど、ユータちゃんさすがね!ちゃんとお野菜と汁物があるわ。」

野菜+汁物になっちゃったけどね・・やっぱりカロルス様だけだとそうなるんだな。オレもお肉は大好きだけど・・ちゃんとお野菜も食べよう?

「うわ~美味しそう!屋台の食べ物ってすごく美味しそうに見えるんだよね~!!早く食べようよ!」

「うん!おいしそう~!」

「よっし、じゃあ食うかー!ユータしっかり食えよ!」

オレは3歳児なのでそんなに肉ばっかり食べられませんー!とりあえず一人1本くし焼きが皿に載ってるのですごい光景だ・・片手で持てないほど重いお肉の塊がでーんと。もうちょっとさあ、日本の焼き鳥的な食べやすく小さな一口サイズのものもあっていいと思うんだ。いや、あるかもしれないけどカロルス様が物足りないんだろうな。うーむと悩んでみたけど正しい食べ方なんてないだろう、ここはがぶっといっちゃえ!両手で持ってあむっとかぶりついてみたら、んんっ外側のたれが香ばしくて美味しい!お肉らしいしっかりした弾力は、幼児の顎にはなかなか手強いけれど、オレの胃袋は今これを求めている!顎を伝う肉汁を拭いつつ、獣になった気分でお肉に食らいつく。

気付けば顔も手も油でぎとぎとだ。

ああ・・満ち足りたー!そう思ったのに手元のお肉はいくらも減ってない気がする。いや、やっぱり大きすぎるから!

「ユータ様、お顔を拭きましょう。お手をどうぞ。」

あったかいおしぼりを渡され、お顔は念入りに拭かれる。うん、さっぱりした!

「これ、やっぱり大きすぎるよ!みんなこんなに食べられるの?」

「そうですねぇ。ユータ様には大きすぎますが・・。」

ちらりと他の皿に目をやる執事さんにつられて見ると、うわ・・カロルス様とセデス兄さんは既に違うお肉をがつがつ食べてるし、エリーシャ様はあくまで上品なのにほとんど食べてる。・・一体どうやって?!

「おう、ユータもういらねぇか?ほれ、俺にくれ。」

貴族様なのに食べ残しを食べるとかいいんだろうか・・。何のためらいもなくオレの食べ残しを頬ばるカロルス様・・すっかり冒険者の風貌になっちゃってるよ。

「あっ僕だって欲しかったのにー!」

「お前にはこれをやろう、これも美味かったぞ!」

「あら、じゃあ私もそれもらおうかしら。」

「エリー、食い過ぎるとまた・・・・・何でもないです。」

一瞬ほとばしった殺気は知らなかったことにして、オレはシメのスープに取りかかる。にんじんらしきものと、緑色の・・タケノコとブロッコリーを足して2で割ったような野菜、キャベツやコーンっぽいもの、がたっぷり入ってるスープなので、滋味豊かで美味しいけれどこれまたお腹いっぱいになってしまう。

もう無理ー!ジュースの入る余地がないのでしばらく休憩だ・・・。

「ごちそうさま!オレ、ちょっとおなかいっぱいで苦しい・・ごろんとしてるね!」

「おう!そのへんで寝とけ!守っててやるから心配すんな。」

うん、心配はこれっぽっちもしてないよ。魔物、全然いないしやっぱり強い人がいるって分かるのかな?・・・もしかして管狐部隊が暗躍していないとも限らないけど・・・。

みんながまだ食べてるのに、席を離れて横になるなんてすごくお行儀悪いけど、ここは野外だ。自由に大らかにやろう。


ぽかぽかしたお日様をしっかり吸い込んだ草原は土まで温かくて、ふかふかの草はしっかりオレの体を受け止めて上等なベッドになる。視界いっぱいに広がる空、耳元で聞こえる草の擦れ合う音。背中からほんのりと伝わる草と土のぬくもりに、ついウトウトしてしまう。


あまりの心地よさに微睡んでいたら、レーダーに街道以外での人の反応・・森の中だから冒険者だろうね。いち、に・・4人かな?結構なスピードで走っているなぁ・・後ろからは魔物がついてきてるねぇ。おっと立ち止まって応戦してるのかな?魔物は2匹、結構大きくて森の方で見たことない種類かな?

「ねえラピス、あっちにいる魔物ってなに?冒険者の邪魔にならないようにこそっと見てこれる?」

ちょっとぼんやりしながらラピスにお願いしておく。


―あそこにいるのは、ゴブリンイーターだったの!

「そう・・見たことないねぇ。大きそうだね。」

―大きいよ!ゴブリンをぱくっとひとのみしちゃうの。

「そっかぁ。ありがとう・・。」

ウトウトするオレの胸に着地したラピスが小さなお口で大きなあくびをする。

―今回は助けなくていい?ラピスもお昼寝する!









お外で寝転がると、なんであんなに気持ちいいんでしょうね!

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