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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた【Web版】  作者: ひつじのはね


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1017 ユータの発想

夕食を終えたオレは、寝るまでの間に色々作業がある。

タクトにも手伝わせて、牛のガラスープを取りつつ、せっせと骨に残っている身をこそげたり、固い部分をミンチにしたり。ほら、こうするとまだまだ食べられるところがあるでしょう。

『お肉が余って仕方ないんじゃなかったかしら……そんなだから減らないんじゃ』

『主、貧乏くさいんだぜ!』

大量の牛ミンチを前に、満足感に浸っているというのに……。

貧乏くさいんじゃない! 生命への感謝と何も無駄にはしない精神なの!!

だって、美味しくいただけるのに捨ててしまうって、なんだか違う気がする。


ちなみに昨日はステーキを堪能しすぎたので、今夜の夕食は煮込み料理。

コッテリよりもアッサリ目が食べたかったので、じっくりコトコト煮込んだ牛肉のトマト煮にしてみた。

もちろん、コトコトしている間にも、この作業は続けていたのだけど。

この魔物は珍しくも強くもないから、使いやすいかもしれない。ほら、何かと他人に料理を振舞う機会のあるオレたちなので。

あんまり強い系統の魔物だったり、魔族国のウーバルセットなんかだとね……ちょっと問題があるし。

『そういう美味しいものは、あげちゃダメなんだぜ!』

『そうなんらぜ! あうじ、あえははおいしいの食べたいんらぜ!』

最近食いしん坊になってきたアゲハが、そんな主張をするもんだから、くすりと笑った。

心配しなくても、アゲハなら一生かかっても食べられないような量がありそうだよ。


「疲れた! もういいか?」

「そんなことで、タクトが疲れるわけないじゃない。もうちょっと頑張って!」

今にも作業を放り出しそうなタクトに、にっこり笑う。

シロと追いかけっこできる体力があるのに、この程度で疲れるなんてないよね?

「フツーに疲れるけど?! なんていうかさ、こう……ぐったりする」

「座って作業してるんだから、ほとんど動いてないじゃない。気のせいだよ」

「確かに……? いや、でも何か疲れんだけど……」

首を傾げるタクトに、もう一度『気のせい』だとにっこり笑う。ここで貴重な作業員を失うわけにはいかない。ラキは大体加工作業をしているから、タクトしか手伝える人間はいないのだから。


「なんかさ、料理って結構忙しいよな」

「今さら? 並行作業だし、こういう地味作業もあるし、オレは忙しいと思うよ」

「ユータは料理してる時、バタバタだもんな」


ええ……それはそれで、なんかカッコ悪いな。ジフやプレリィさんは、決して『バタバタ』はしてないもの。どっちかと言うと、キビキビ、だろうか。

まあ、そこがプロと素人の違いなのかもしれないけれど。

「でも、この調子なら明日はゆっくりできそうだよ」

「だから、そういうこと言うなって」

どうして?! のんびりだって、計画的にすべきだよ!

そう言いかけて、ふと思いついた。

「そっか、それなら……こういうのはどう?!」

「うん、聞く前からろくでもねえ気がする」

全然興味なさそうなタクトに頬を膨らませ、オレは明日の予定案を提示したのだった。



「――じゃあ、行くよ?! 準備はいい?!」

「ピッ!」

頭の羽毛をふわっと膨らませ、ティアがやる気十分に尾羽を上下させた。

「ラキはモモン草、タクトはドートルの花、オレはミロロの実!」

真剣な瞳で聞いていたティアが、心得た、と、もう一度鳴く。

頷きを返し、オレはやる気の感じられない二人を見上げた。

「いい? 効率重視だからね! 依頼書の魔物は覚えた?」

「おう……もっとデカい討伐行きてえけど」

いやいやどちらかというと、誰よりもタクトにメリットがあるんだよ?!

討伐しかしないんだから、他の依頼をこの機会にこなしておいた方が良い。


「もっと僕の素材向きの魔物がいいな~」

「ラキの素材向き魔物にしちゃったら、依頼をこなせないじゃない?!」

知ってる? 依頼の素材はね、懐に入れてはいけないんだよ……??

ひとまず、こうしている時間がもったいない。

「さあ、各自……用意スタート!!」

オレの一声で、全員がさっと屈み込んだ。


「こんな場所で探すとか~。僕、命がいくつあっても足りない~」

「大丈夫、モモと蘇芳がいるから!」

そして、きっと誰より狙われるのはオレだし。

結構人里離れた森近く、オレたちはティアの助けを借りながら薬草や野草採りに励んでいる。こんな場所で無防備に採取する人はいないので、思った通り採取対象が豊富だ。

次々採取する手の先に、ふいに真っ赤な口腔と牙。

「釣れたっ! ええと、これは……グリンヴァイパー!」

思ったより大きいな、と思いながら、一気に短剣を抜いて――同時に討伐をすませた。


「お、こっちはグラスロップが出た!」

「上~。タクト、キャッチして~」

さすが、まだまだ小さい組。採取に夢中になったふりをすれば、面白いように魔物がやってくる。

『ふりじゃないわよね?』

モモのツッコミに笑いつつ、討伐対象じゃないデカネズミを遠くへ蹴り飛ばした。

オレたちは、現在依頼を受けている。

数件の採取依頼、素材目的の小~中型魔物討伐依頼、あと……


『こっちだよー! お散歩、楽しいね!』

にこにこで走っているシロは、5本の縄を咥えている。

「ぴぃ、ぴぃ……」

縄の先で子犬みたいな鳴き声をあげているのは、見るも猛々しい犬型魔物。

あの、シロ……ほどほどにしてあげてね?

これは、従魔の運動不足解消依頼。たまには外を思い切り走らせてあげたい、なんて優しい従魔術師からの依頼だ。ここに、素晴らしい適任がいるよ!

ついついスピードを上げるシロに、ついていけるはずもない従魔たちが哀れな声をあげている。

……あとで、回復魔法をかけてあげよう。


そして、他に料理の下ごしらえは管狐部隊が遂行中だし――

『ええと……『陽光まばゆきこの折、貴家ますますご繁栄のことと拝察いたします。

つきましては――』みたいな感じかしら……というか、ダメじゃないかしら……スライムに書かせた手紙は』

大丈夫! 書くのは筆跡があるから、先方がするらしいし! モモはただ、文面を考えてくれたらいいよ。

「ねえ、あと何が残ってる?!」

『えー、現在ヌルヌル球根依頼まで達成、討伐残りモックロック、アトツキ草……』

「モックロック捕ったよ~!」

うむ、素晴らしい効率。

これは――いわば、挑戦。

そう、フラグの先を行く、大いなる挑戦だ。


暇だとか、のんびりするとか、そういうキーワードがフラグになるんだという。じゃあ、もうそんなワードが挿入されないよう、大忙しにしてしまえばいいのでは? そういう発想から導き出された作戦だ。

つまり……町へ寄ったオレたちは、ギルドで残っている依頼を片っ端から受けて来た。

もちろん、今日中に済ませられるかどうかは見ているけれど。

効率をマックスまで上げて、なおかつ隙間なく依頼を詰め込む。

そうすれば、フラグはへし折れるしかない。余計な『巻き込まれ』や『事件』が割り込む隙をなくすのだ。


作戦は、今のところ大成功を収めている。

「なんで僕たちまでこんなことを~」

「お前だって、素材がたくさん採れるかもっつうから……」

ちょっとそこ! ダメだよ、余裕を感じたら途端にフラグが立つかもしれないんだから!

『これはそもそも、自らフラグ回収してるんじゃないのか』

『スオー、本末転倒だと思う』

ぼそぼそツッコむ声は聞こえないふりをして、オレはそっと額の汗を拭ったのだった。


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― 新着の感想 ―
ご機嫌シロの散歩について行けるのか⋯いや、無理だろ 頑張れ、犬魔物たち!
文才もあるなんて、さすがモモ姉さん!
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