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4.マディスト・メル・ネーベリアの焦燥

「なぜすぐ報告しなかった!」


私はそうニーフィアスを怒鳴りつけると、執務机に拳を叩きつけた。

執務中の雑談に紛れてポロっともたらされた情報に、思わず激昂していた。


「ノーマが王宮に来ているだなんて……!!」


せっかくノーマの素晴らしい蹴りを王宮でも味わえるかもしれないのに、そのチャンスが失われるところだった!


そんな理由で怒っている訳では、勿論ない。

そんなこと、ほんの少ししか思っていない。


なぜならば、ノーマは王妃――我が母上殿のお茶会に招かれている、ということだからだ。

母上は悪人でも、無体を強いる人でもない。

しかし、油断ならない人なのだ。


ノーマが私の”運命の女性(ひと)”であることを理解しているし、歓迎もしていた。

そして、私がノーマに受け入れられていないことも、既に耳に入っている様子だった。

果たして、この状況で母上がノーマに対して、何をするつもりなのか……。


「ニーフィアス、少し出てくる」


椅子から立ち上がり軽く身形を整えると、直ぐに執務室から出ようと扉へと向かう。

しかし、その前にニーフィアスが立ち塞がり、じっとこちらを伺うように見つめてくる。


「どちらに行かれますか、殿下」

「勿論、ノーマの元へ」

「その必要はありますか? 王妃殿下は、ノーマ嬢に対して、悪い感情は持っていらっしゃらない様子ですから、心配する必要はないかと思いますが」

「母上が何かなさるとは思っていないさ。しかし、ノーマの心情を考えてみろ」

「ノーマ嬢の心情、ですか?」

「そうだ。ノーマは、母上がどのように考えていらっしゃるか知らないはずだ。それなのに、一国の王妃に呼び出されるのだ。それが、どれ程恐ろしいものか、考えはしなかったのか!?」

「……っ!?」

「分かったのならば、さっさと退け。嫌な予感がする」

「はい、申し訳ありません。……ノーマ嬢は、王妃殿下の中庭に招かれています」


事の重大さにやっと気づいたらしいニーフィアスと共に、急いでノーマの元へと向かう。


どうか、ノーマが不要な気苦労をしていなければいいが……。


   § § § § §


「ノーマ!」

「マディスト王子……?」

「あら、マディスト。どうしたの?」


焦りをなるべく表に出さないようにしつつも、早足で駆け付けた母上の中庭には、思いがけず平和的な光景が広がっていた。


かなり近い位置で隣り合って座り、お茶を飲む母上とノーマ。

その表情は両者ともに非常に穏やか。むしろ、和やかに微笑合っていた。


そして二人の手元には、なぜが広げられている私の幼少期の絵姿の数々。


「……なぜ、そのようなモノを?」

「あら、貴方の良いところを知ってもらうためよ。昔はこ~んなに、可愛かったのに……」


わざとらしく目元にハンカチを当て、俯く母上。

明らかに、顔は笑っている。


「えっと……、とても色々な、お話を伺っておりました」


微妙に引きつった笑いを浮かべるノーマ。

一体、どんな話を聞いていたのか!?

背後では、ニーフィアスが笑いを堪えている気配がする。ああ、本当に腹立たしい。


これだから母上は油断ならないのだ。


「……はぁ。母上、ノーマをお借りしても?」

「あら、それはわたくしに聞くことでなくってよ」

「そうですね。ノーマ、少し付き合ってもらっても良いかい?」

「えっ。……はい、私でよろしければ」


少し目が泳いでいるが、言質は取った。

ノーマの手を取り、立ち上がらせる。


「では母上、失礼致します。ニーフィアス、母上のことを頼む」

「はい、かしこまりました殿下」

「マディスト、ノーマちゃんに迷惑かけてはダメよ。ノーマちゃん、今日は来てくれてありがとう。楽しかったわ。また、お話しましょう?」

「はい。本日はお招き頂きまして、ありがとうございます王妃様。またご招待頂けますと、嬉しく思います。では、御前を失礼致します」


淑女の礼をするノーマをエスコートし、母上の中庭を後にする。



にこやかに見送ってくれる、母上の無言の圧力が、恐ろしかった……。

王子の変態さが減り、不憫さが増したような……?

見切り発車で書きはじめてしまったため、着地点が見つからないです。キャラもブレてきてる気がして仕方がない……。

一応次で終わらせる予定です。

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