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華やかバンドの裏事情。  作者: 椎名杏里
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俺と福田でファーストフード その2



「致命傷じゃねえか!!!!」


口から言葉が飛び出るとは正にこのことなのだなと心の片隅で思った。そして、大声を出したことに対して周りの目を気にしながらさらに言葉を重ねた。


「音痴でボーカルが出来ると思っているのか!?少なくとも俺は聞きたくないぞ!そもそもなんで音痴なのにボーカルなんだよ!そこは普通ギターとかだろ!むしろ福田、お前が歌えよ!まずなんでボーカルに採用したんだよ!」

「ちょ、高橋ストップストップ!声デカイって!」


周りをキョロキョロと見渡し声を抑えろという動作をしている福田の手を今すぐに叩きたい。誰のせいだまったく。


とりあえず大声を出してしまったので周りの客に会釈で謝りつつ、机の上のトレイを纏めてしまう。食べ終わったものをそのまま置いておくとちゃぶ台返しのように福田に投げつけてしまいそうだ。


「………お前ら、文化祭でやる曲、どんな曲だったっけ。」

「練習してたのは、よく流れてる日焼け止めのCMのアップテンポなやつと、月9の主題歌だったバラード、あと有名なアニソンとかに自作曲で4曲。」


4曲も練習してたのには驚いた。それに自作した曲が入っていたのにも。

言い方は悪いが、飽き性で練習と言う言葉が何よりも嫌いな福田を知っているからだ。三日坊主という言葉はこいつの為にあると言っても過言ではないくらいだ。それ程ドラムは福田に合っていたのだろう。


しかし不安になったことがある。練習している曲の内のアップテンポとバラードの2曲は高音が高く、リズムも単調ではない。そして、何と言っても実力派シンガーやバンド達が歌っている曲なのだ。

前のボーカルならば楽々と歌いこなすだろうと予想は出来たが…音痴であるらしい今のボーカルはどこまで歌えるのか。文化祭まであと二週間。今から曲を変えて練習しても満足のいく演奏にはならないように思う。しかし今の曲を歌えるボーカルが居ないのならばしょうがないのか。


「…なあ、ボーカルが音痴なら歌う曲とかを変えるのか?音気にしないシャウトとかなら歌えるだろう」

「いや、そのままの曲だ。」

思わず頭を机に打ち付けてしまった。鈍い音がし、数秒遅れてジワリとした痛みが額を襲った。


「音痴にアップテンポもバラードも歌わせる気かよ…福田お前馬鹿じゃねえの??そんなボーカル、どこが良いんだよ…」


激しく嫌な予感がする為に額を机につけたまま聞く。頭の真横にある緑色のトレイが凄く邪魔だが、今は頭を上げる気にはならなかった。


「どこって…そりゃ決まってるだろ…」


きっと世の中で言うドヤ顔とやらをしているであろう福田は得意気な声色で言い放った。


「顔、だ。」



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