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花火の下で

作者: TITAN

 お久しぶりです。セカイで連載小説は難しいと思い知らされたので短編で練習することにしました。なので、わけわからないところがあるかもしれません。


 冬彦視点ではなく、詞織視点でも時間があれば書きます。後日談も。

 『あーあ。夏休みももう終わりだねー』

 『......うん』

 『あ、でも8月最後の日! お祭り行くよね?!』

 『え? ......うん。家族と......だけど』

 『はぁ!? ......あんたさ、せっかく高校生最初の夏休みの最後なんだから、誘っちゃいなよ』

 『だ、誰を!?』

 『もちろん~。......く、ん』

 『なぁっ......。......』


 ブツッという音と共に電話が切れる。うーん、怒らせちゃったかな。電話をもう一度掛けるけど出ない。やっぱり怒ってるなぁ詞織(しおり)......。


 

  ◆  ◆  ◆



 

 「うぁーーーーーーやばい!! 宿題が、終わんねえ!」


 ――俺、諸星(もろぼし) 冬彦(ふゆひこ)は英語と数Aと現国の宿題を全力で同時進行させていた。人間ってやればなんでも出来るんだなあ。左手にシャーペンを二本、右手に一本。と、奇怪な持ち方で字を書いていく。小学生のときは何でも出来たのでこの持ち方は、そのときの名残だ。


 本当にあのときは何でも出来た。勉強はもちろん、体育だってそれなりに出来たし、いじめられている女の子を助けることだって。まあ、今思い返すとあれは、反動形成だったんだろう。可愛かったし。名前は確か......井田......?


 と、手が止まっていることに気がつき、慌てて動かす。しかし動いたのは手だけではなかった。


 「ん? 携帯......電話か?」

 「はい、もしもし」

 『こんばんはー! 諸星くーん!』

 「......!? 浜松(はままつ)?!」

 『ぴんぽーん、大正解!』


 電話を掛けてきたのは同じクラスの浜松だ。

 "夜+電話=告白"その考えにものの数秒で至った俺は自分で自分を戒める。浜松には好きな人――もちろん俺ではない――が、いたはずだ。ではなぜ?

 

 「お、おう。どうした?」

 『あー、ごめんごめん。いきなりで悪いけどさ夏祭り行く?』


 夏祭り? ......ああ。あったなそんなの。


 「行かないが」

 『えー!? なんで?』

 「宿題が終わらない」

 『はぁ......。宿題なら私が見せてあげるよ』

 「本当か!?」

 『うん。それなら行くよね?』


 宿題を見せてもらえるのは嬉しい。けれどわざわざリア充共に正面突破する俺ではない。つまり、


 「行かない」


 ということだ。しかし浜松はなんでだのどうしてだのを繰り返す。少し話を聞いてやるか。


 「どうした? 何かあったのか?」

 『......うーん。それは言えないというか言いにくいというか......。とにかく来てほしいんだけど、ダメかな?』

 

 宿題と自分のプライドを秤にかけて考えてみる。宿題をせずに学校で恥さらしになるか、夏祭りでリア充共に恥をさらすか。宿題が勝った。それも圧勝。知り合いがいるわけじゃない。それなら夏祭りに行って、なにもおきないまま終了すれば勝ちなんだから。なんの勝負だかは知らないけど。


 「まあ、いいか。その代わり宿題な」

 『ホント? やったー! 宿題ね。明日渡すわ』

 「おう、さんきゅ」


 

  ◆  ◆  ◆ 



 俺は浜松と会う約束をし、駅に向かった。宿題を受けとるだけだが。それなのに、待っていたのは浜松ではなく浜松の親友、市姫(いちひめ)だった。目があってしまった俺は挨拶せざるをえない状況に陥る。


 「え、あ......よう。市姫。浜松みてないか?」

 「......」


 市姫は下を向いて何か言っている。こいつ苦手なんだよなー。目あうと睨まれるわ授業中も俺のこと睨んでいるし。確かに美人でスタイルもいいけど......、性格的にちょっとっていう感じだ。


 「あのー、市姫ー?」

 「あっ。......これ」

 「うん?」


 市姫は紙袋を俺に突きつけた。俺は受け取って中身を見る。中には浜松 向日葵と書かれた紙が入っている。もしかして市姫は浜松の代わりに......?


 「ヒマ、体調崩したって......。だから、私が」

 「そうか、ありがとな。浜松大丈夫なのか?」

 「っ......。別にあんたに心配されるほどじゃない。宿題写すとか......馬鹿じゃん?」


 そういって、市姫は歩いて行った。やっぱり苦手だな。そういえば浜松の下の名前......向日葵(ひまわり)か。なんかすごい名前だな。

 

 市姫が角を曲がった時に女子の声が聞こえてきた。大方友達でも待たせていたんだろう。その声は知っている声のような気がしたが、深く追求する意味もないので、真っ直ぐ家に帰ることにした。

 

 家についた俺は急いで宿題を写す。提出日は9月1日ではなく登校日の8月30日なのだ。これは31日にある夏祭りにみんな参加してもらいたい、ということからこうなったそうだ。参加してるのはリア充だけだが。


 俺は数時間かけて宿題を写し終えた。これでなんとか間に合った......! けれどそこで思い返されたのは市姫の最後の言葉。


 『宿題写すとか、馬鹿じゃん?』


 ......。いや、あいつの言葉をきいても意味はないな。

 俺は携帯の電源をつけると着信履歴に浜松と書いてあった。電話を掛けるとすぐに出てくれた。


 『もしもし?』

 「諸星だ。なんか用か?」

 『あー、夏祭りの日さ、友だちも来るんだけどいいかな?』


 友達か......。男友達の場合、そいつといい雰囲気になりたいからちょっとだけ居て。ということになり途中で帰れる。女友達の場合、途中で邪魔になり帰れる。......どっちでも大丈夫だな。


 「ああ、いいぞ」

 『その子――諸星君と仲良くなりたいみたいだから。じゃねーまた明日!』

 「え? おい――。あ、切れた......」


 浜松はなんて言った? 俺と仲良くなりたい? 女か? いや、俺と仲良くなりたい女子なんているはずがない。今の俺はダメ人間なんだから。じゃあ男か? っておい、浜松は友だちが多いと思っていたがホ×までいるのか?

 その日は寝れそうになかった。俺の人生は一体どうなってしまうんだろう。


 

  ◆  ◆  ◆



 登校日といっても宿題の提出日なので一時間程で帰ることは出来る。裏を返せば一時間しか学校にいられないのだ。どういうことか。それは夏祭りに人を誘うチャンスだ。

 俺には関係の無いことなので辺りを観察することにした。人気なのは守川(もりかわ)か。俺の前の席だが女子が群がっている。顔がいいだけでそんなにモテるのか。そんなんだから少子化対策なんてもんが起きるんだ。それも全て男が悪いとされる。頼りないからだのカッコ悪いからだの。知らねえよバーカ。

 女子で人気なのは......市姫だな。列を作っている。どう考えても他クラスの連中もいる。それを市姫は一人ずつ振っていく。振ったあとに哀しそうな顔になるのはなぜだろうか。守川が来ないからか、それとも......。


 結局その日は、誰からも誘われず、誘わず終わった。いい判断だ。



  ◆  ◆  ◆



 夏祭りの日。俺の人生が決まる日だ。待ち合わせ場所に行くとそこには誰もいなかった。約束した時間の五分前だからだろう。待つこと数分。後ろから足音が聞こえたので振り返るとそこには浴衣(ゆかた)を着た市姫がいた。


 !? おい待て。市姫がここにきた理由はいくつかある。

 一、他の人との待ち合わせ場所。

 二、通りかかっただけ

 三、......浜松の言っていた友だち。


 三は無いな。俺と仲良くなりたいとは思っていないだろうし。けれど一応聞いておくか。


 「よ、よう市姫どうしたんだ?」

 「......ぇ、ぉ。......」

 「あの......」

 「っ! こん、ばんゎ......」

 「え? ......ああ。こんばんわ......?」


 もうなにいってるのか分からない。一か二か三かハッキリしてくれ。


 「詞織ー! 諸星くーん!」

 「っと。浜松」

 「ごめんね諸星君。ホントは詞織とは別のこが来るはずだったんだけど、体調崩しちゃったみたいでさあ」

 「そうか......」


 つまり、市姫はその別の子の代わりというわけか? ならいいか。――帰っても。


 「帰ってもいいか?」

 「なんで!?」

 「? だって友だちと二人でいた方が楽しいだろう?」

 「......うーん。せっかくだから行こうよ! それで楽しくなかったら......その、帰ってもいいから」

 「......分かった」


 歩いているときにうっかり聞いてしまったことでさらに帰りたくなった。俺はなんとか盛り上げようとしただけなのに。その一部始終がこれだ。


 「な、なあ市姫ってさ兄弟とかいるのか?」

 「......別に」

 「じゃあ家族は? 仲いいのか?」

 「......私、父親がいないの。小学生のとき離婚したから」

 「......そうですか」

 

 終わり。その後も浜松が盛り上げてくれたが俺がたまに応答。市姫は携帯を弄っていた。もう帰ってもいいのかな? そんな気持ちにさせてくれました。......本当に帰っていい?


 

  ◆  ◆  ◆


 

 祭り会場に着いたところで浜松がいきなり急用を思い出したと言い出して俺らを置いて帰ってしまった。俺も帰りたいんですけど。市姫は携帯見ながらぶつぶつ言ってるし......。ふいに、市姫が口を開いた。


 「......あっち行ってくる」

 「え? ああ......。......気を付けろよ」

 「っ! な、なに言ってんの?」


 蔑むような目を向けられる。心配しただけなんですが。俺に話しかけられるのも嫌なんでしょうか。

 戻ってくるのが遅いので近くを捜索すると案外簡単に見つかった。恐そうな人たちと話しているのを。市姫は困った表情をしていた。それは決して知り合いではないということだ。

 助ける義理はない。けれど小学生のときの口癖が(よみがえ)る。


 『人を助けてメリットは無いかもしれないけど、デメリットも無いんだぜ!』


 子どものときの自分に教えられるとは......。俺は覚悟を決めて話しかける。


 「あのー、なにしてるんですか?」

 「あ"あ"?」


 ヒィッ! いやまて。怯むな。


 「警備員呼んでもいいんですよ?」

 「ちっ......。こいつが、俺の服汚したんだよ!」

 「......なるほど。それで、あなた方はなにを要求してるんですか?」

 「服のクリーニング代だよ」

 「じゃあ、僕が払います。いくらですか?」


 冷静に対処する。焦ってもいいことはない。それに金なら一応持ってる。


 「......二万」

 「はい、どうぞ」

 「ああ。気ぃつけろよ! 次やったら金じゃ済まねえぞ!?」

 「はい、すいませんでした」


 恐い人たちが見えなくなるのを確認した俺はその場に座り込んだ。はぁ......。恐かった......。


 「そ、その、あり、がと......」


 市姫は、顔を赤くしながら言った。美人だと思っていたがこのときは可愛いと思った。けれど、


 「ん? もういいよ......疲れた......」


 としか言えなかった。


 「......諸星! ごめん!」

 「どうして?」

 「......その。お金」

 「あー。別に、気にしなくていいよ。元々いっぱい持ってきてたしな」

 「そういうことじゃなくて......」

 「......じゃあさ、質問に答えて欲しいんだけど」

 「......うん。いいよ」


 疲れていたせいか、それとも市姫がすこし心を開いてくれたのかは分からないがそれでも、話せるようにはなっていた。


 「――俺のこと嫌いだよな?」

 「ふぇっ!? ちちち違うよ! 嫌ってないよ!」

 「じゃあ、なんで授業中俺のこと睨んでるんだよ?」

 「~~~~ッ! 睨んでるわけじゃ......」

 「諸星、あ、あっち行こう!」

 「え? おいちょっ......」


 いきなり手を引かれた。いろんな屋台がある場所まで来たが......。


 「なあ市姫。手」

 「? !? ごめん!!」

 

 なんだ、この状況は? なんで俺は苦手な奴と祭りにきて助けて今手を繋いでいたんだ? 展開が速すぎて追い付くことが出来ない。


 そのあとは、市姫と屋台を回り夏祭りを楽しんだ。......ようだ。よく覚えていない。


 「えへへ、ここ! すっごい綺麗に花火が見えるんだよ! 私とヒマだけの秘密の場所!」

 「そんなところ、俺に教えてもいいのか?」

 「う、うん。諸星はその、特別......だから」


 特別? マジで? 俺たちは花火の時間まで遊び倒し、時間が近くなってきたとき彼女が言ったのだ。おすすめの場所があるから行こ? と。そのときの笑顔と着いたときの笑顔は脳の中の永久保存フォルダに保存された。


 ふと、市姫に目を向けると携帯を真剣な表情で見ていた。どうしたと言う前に市姫は俺の名前を呼んだ。


 「冬くん」


 反応が遅れた。


 「え!?」

 「ぁぅ......。その、大事な話......していい?」


 ......市姫の顔は今まで俺に向けてきた恐い顔でも今日見た可愛い顔でも友だちと笑いあっている顔でもない、真剣な顔だった。だから、それに応えるべく、短く答えた。


 「ああ」

 「......何から話そう......。えっーと、私、小学校で親が離婚した......って言ったよね? それで私お母さんの方についていったから名字が変わったの」

 「そう、か......」

 「やっぱり、覚えてないか」


 市姫が悲しそうに呟く。覚えてない......?


 「それで、その......前の名字は井田っていうんだ」


 いだ......イダ? 井田!? あのよくいじめられてた?

 

 「......うん。いっつも助けてくれて......。遅くなっちゃったけど。ありがとう」

 「ッ! い、いや。あれくらい別に。はは」


 おいバカやめろ。その笑顔を俺に向けるな。眩しすぎる。


 「うん? じゃあ、なんで授業中睨んでんだ?」

 「えっと、それは、その、みつめてただけ......」

 「......そ、そう」


 なんだこの雰囲気は。甘ったるい。なんというか、カップルだけがだせる独特の空気みたいな。おお!? それってつまり!? ......ん? それなら


 「なあ。宿題渡したときにさバカみたいって言ってたよな」

 「......う、ん。怒ってる?」


 そんな上目遣いで言われたら全部許しそうだが、別に怒っているわけではない。


 「そうじゃなくて、なんであんなこと言ったのかなって」

 「えっと。嫉妬......? みたいな」

 「......」


 なんだかもう告白されたみたいにむず痒い。


 「......それならさ。祭りに誘ってきた男子たちを振ったあと、すごい哀しそうな顔してたけど......」

 「あ......あれは。せっかく勇気を出したのに報われない人もいるんだなって思ったら......。ほら、私も片想い中だし。だからかな。応援してあげたいけど私以外の人となら良いのにって」

 「優しいんだな」

 「ありがと......」


 そのあとは少しの静寂があった。それを壊したのは市姫ではなく、俺――でもなく、花火だった。ドーン......! という音が鳴り響く。


 「諸星、私さ。夢があるんだ」

 「夢?」

 「うん。子どもの時からの夢。告白するときは、花火の下でっていう子どもっぽい」

 「そうか。いい夢だな。子どもっぽくなんかないぞ。ずっと願ってるんだろ?」

 「......。うん、もうすぐ叶うけどね」


 そういって市姫は微笑んだ。そうか、叶うのか。......もうすぐって、まさか今!?


 「......よし! 諸星 冬彦君、ずっと前からあなたのことが好きでした!」


 彼女は顔を真っ赤にしながらも言った。彼女は夢を叶えたのだ。小さい頃からの夢を。


 『花火の下で告白する』という素敵な夢を。

 一応、キャラクター紹介。


 諸星 冬彦 <もろぼし ふゆひこ> 男

 小学生の頃はなんでも出来た。詞織をよく助けていた。

 今は自分で自分のことをダメ人間だと思っている。


 市姫 詞織 <いちひめ しおり>  女

 小学生の頃はよくいじめられてた。冬彦によく助けてもらっていたため恋心が芽生えたと思われる。昔は冬彦のことを冬くんと呼び、慕っていた。今の性格はツンデレ。


 浜松 向日葵 <はままつ ひまわり>女

 友だちも多く、明るく元気な女の子。友だちが多いが、ホ×はいない。レズ? いるんじゃない?


 ☆反動形成☆

 ある心理学者が提唱したもの。本心を抑圧して逆の言動をしてしまうこと。

 ここでは、好きな相手に冷たい態度をとってしまうこと。

 ......ツンデレの基本です! Kawaii!

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― 新着の感想 ―
[一言] 二人のこの後が気になりますな~ 結構面白いですよ~
[良い点] 起承転結がちゃんとしてて良かったです。 [一言] 僕から言えることはただ一つ末長く爆発しろ!
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