猫の二又
「阿紺よ、暫く留守にする」
猫さんは自分がこの家の主でもあるような言い草をして窓からぴょーんと出て行った
あの日公園であって以来何故か住み着いていた。何故か。本当に何故か。会ったあの日、帰宅してお風呂から出たらそこに元から居たかのようにソファーにビール片手に深夜ドラマを見ながら犯人はあやつだと抜かしていた
あたしも、犯人はアイツではないかと睨んでる。だけど、着ぐるみを着ていたアルバイトの若林もあやしいと思う。給料が煮干しってあたしでもキレる。鬼のごとくストライキする。煮干しより、いくらにしてくれと
「帰ったぞ」
「あ、お帰りなさい」
「うぬ。町は平和だ」
お前の頭もねって言いたい所だけど、どうやら、本当に巡回をして困っている人を助けて回っているらしい
新聞にお助け猫として載っていた。どうやら、勢い余ってエレベーターのボタンを押して指を骨折した人を助けたらしい。エレベーターで骨折、って激しくどうかと思う。しかも荷物を持ってて助けを呼べなかったって、荷物置けよ。まず、荷物置けよ。骨折した痛みにびくともせず荷物をてばさなかったのは凄いけど、荷物置けよ
「阿紺よ、ビールを所望する。あと・・・」
「はいはい。柿の種もだろどうせ」
今日も平和でした